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とあるブースターの視点からの横浜ビー・コルセアーズ航海記:Bリーグ3年目(2018-19)

前回↓はBリーグ2年目のビーコルを語ってみました。今回はBリーグ3年目(2018-19)を。

SEA CHANGE

前シーズンまたしても残留プレイオフ(残プレ)に回ってしまったビーコルは大きな変革に乗り出します。
2018.05.27、Bリーグ初年度に栃木ブレックス(現宇都宮ブレックス)を優勝に導いたHCであり、前シーズンはビーコルのアドバイザーを務めたトーマス・ウィスマン(トム)がHCに就任することが、ブースター感謝祭である帰港式の場で公表されます。
その際、代表取締役CEOの岡本尚博(岡本さん)からは"3年以内の優勝を目指す"との大胆宣言がありました。

Bリーグ初年度以来、毎年HCがシーズン前と途中で交代してきたビーコル。トムHCを軸に長い目でチームを根底から強くしていこうという気構えを感じました。

そして06.25、チームから一つのキーワードが発表されます。
"SEA CHANGE"

SEA CHANGEの意味は「大転換」。ここからビーコルは大きく変わるという誓いです。
そして06.27、オンライン上でこのシーズンのスタッフ・契約選手が発表されます。

旅立っていった海賊

  • 満田丈太郎(ジョー)→ 名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 

    • 横浜出身のジョーは将来のフランチャイズビルダーであり、長きにわたってビーコルを支えてくれると思っていただけに、ブースターたちの嘆きは大変なものでした。。

  • 山田謙治(ケンジ)→ 広島ドラゴンフライズ

    • 前シーズン途中から指揮を執った尺野将太HCが地元広島のHCに就任したのに伴ってビーコルのレジェンドも広島へ。

  • 蒲谷正之(カバさん)→ 信州ブレイブウォリアーズ

  • 佐藤託矢(サトタク)→ 信州ブレイブウォリアーズ

    • もう一人のレジェンドであるカバさんは、bj時代にビーコルを率いた勝久マイケルがHCを務める信州へ。カバさんと仲の良いサトタクも勝久HCのラブコールを受けて2人一緒に移籍。

  • ハシーム・サビート・マンカ(サビちゃん)→ 無所属

  • ジェフリー・パーマー(JP)→ バンビシャス奈良

  • ウィリアム・マクドナルド(ウィル)→ 三遠ネオフェニックス

継続海賊

  • 細谷将司(マーシー)*キャプテン

  • 川村卓也(タク)

  • 高島一貴(キング)

  • 湊谷安玲久司朱(アレク)*キャプテン

  • 田渡凌(リョウ)

  • 竹田謙(タケさん)

やってきた海賊

  • 中村太地:通称"タイチ"。背番号6。190cmのPG/SG。特別指定選手として前シーズンは富山で、その前は三河でプレイ。法政大学バスケ部と並行しながらの特別指定も3シーズン目。U24日本代表、ウィリアム・ジョーンズ カップの日本代表候補にも選出され、ビーコル加入直前には日本代表としてアジア競技大会に出場。NBAのジョーダン・クラークソンとのマッチアップもありました。

  • 橋本尚明:通称"ナオ"。背番号7。184cmの左利きSG。前シーズンの残プレで激戦を繰り広げた富山から加入。残プレでのナオは体調不良のため出場時間はわずかでしたが、レギュラーシーズンでは気魄あふれるディフェンスでやっかいな存在でした。ディフェンスに課題を抱えていたビーコルにとって彼の加入は大きなものになる予感がしました。

  • ハンター・コート:通称"ハンター"。背番号10。188cmのPG/SG。B2広島より加入。高校時代にはU19日本代表候補、広島時代にはタイチと一緒にウィリアム・ジョーンズ カップの日本代表候補にも選出されました。日米のハーフで国籍は日本。サイズがあって視野が広く、プライベートではモデルもこなす華やかな海賊の誕生です。

  • エドワード・モリス:通称"エド"。背番号32。203cmのPF。USAカンザス州出身。B3八王子から加入。このシーズンより帰化選手として登録。現在ではビーコルの生き字引とも呼ばれるエドがついに海賊デビュー。このシーズンからBリーグの帰化・外国籍のレギュレーションが変更され(後述)、帰化選手の価値はより増していきます。エドの盆踊りデビューはこちら。

  • 小原翼:通称"マッスル翼"。背番号81。198cmのPF。神奈川生まれで地元横浜高校出身。富山より加入。高校~筑波大学時代から筋肉に並外れた関心を持ち、趣味は筋トレ。直近2シーズンでは残プレでビーコルと戦い、16-17シーズンでは富山のスターターとしてビーコルを敗退に追い込んだ男が一転して海賊の仲間入り。背番号の由来「9×9=81」は「苦しんでも苦しんでもはいあがる」気持ちを大事にしていることから。鍛え上げられた肉体に優しく繊細な心を宿しています。

このシーズンからのレギュレーション変更で外国籍を3名登録することが可能になりました。
06.27の契約選手発表会見では公表されませんでしたが、ビーコルにも3名の外国籍選手が加わります(後述)。

トムHCを戦略・戦術的に支えるスタッフとしては、昨シーズン途中の尺野将太HCへの交代の際に加入した加藤翔鷹が引き続きAC(アシスタントコーチ)を務めます。
そしてスキルトレーナー兼ACとして加入したのがフェス・アービン。NBAダラス・マーベリックスでのAC経験があり、トムHCがかつてカタール代表を率いていたときに一緒に仕事をした縁で横浜にやってきました。スキルトレーナーとして多くの選手を指導してきた手腕を買われ、外国籍選手のチョイスでも彼のコネクションが大きく関わってきます。
さらに開幕間近の09.07、かつてbjリーグのコミッショナーを務めた日本バスケ界の大物、河内敏光がスーパーバイザー兼GM(ゼネラルマネージャー)として加入します。既に開幕までのチーム編成はほぼ終了していたため、彼がGMとして力を発揮するのはシーズン開幕後となります。

このように選手・スタッフともに大きく陣容を変えた"SEA CHANGE"のシーズンが始まります。
大掴みに言ってしまうと、bj時代からビーコルを支えたレジェンドと期待のホープがチームを去り、ポテンシャルを秘めてはいるものの実績は少ない若手が加入し、ブースターの多くは不安を抱えていた記憶があります。
そんな中、注目を集めていたのはトムが直々に招聘した"伝道師"フェス・アービン。彼が連れてくる海賊たちに期待が高まりました。

始まりの海賊3戦士

このシーズンから帰化・外国籍のレギュレーションが変更され、外国籍選手3名以内、帰化選手1名以内でのリーグ登録が可能となります。
外国籍選手のベンチ入りは2名までとなり(外国籍3名体制の場合は1名がベンチ外)、試合中は外国籍選手2名と帰化選手1名の同時起用が可能となりました。
開幕前にエドの帰化申請が認められたため、新たに3名の外国籍選手が加入します。

アマンゼ・エゲケゼ

通称"エゲちゃん"。背番号8。203cmのSF/PF。USAイリノイ州出身。ベルモント大学を卒業し初のプロチームがビーコル。大学4年次には16.8点、FG% .507、3P% .425、FT% .802の50-40-80を達成し、オハイオ・バレー・カンファレンスの1stチームに選出されました。トムHCは新卒選手は通常獲得しないらしいですが、エゲちゃんには特別な期待を抱いたとのこと。線は細いのでインサイドよりもストレッチ4としてアウトサイドからの攻撃に期待がかけられていました。ナイジェリア出身の両親の下に生まれ、USA/ナイジェリアの国籍を持ち、後にナイジェリア代表としてもプレイしました。

チャールズ・ガルシア

通称"チャック"。背番号36。208cmのPF。USAカリフォルニア州出身。シアトル大を卒業後Dリーグ(現在のGリーグの前身)や各国を渡り歩きビーコル加入前はフィリピンでプレイ。ビッグマンながら柔らかな身のこなしと器用なハンドリングを持ち、スピンムーブも滑らか。新生ビーコルの主砲として期待されました。

ジャボン・マックレア

通称"ジャボン"。背番号12。開幕戦の前日10.05に正式発表された3人目の外国籍。206cmのPF/C。USAニューヨーク州出身。ニューヨーク州立大学バッファロー校でミッド・アメリカン・カンファレンスの1stチームに3年連続で選出され、4年次にはカンファレンスのPlayer of the yearを獲得。通算得点記録は同大歴代1位。大学卒業後はドイツやフランスなどでプレイし、プエルト・リコのクラブを経てビーコルに加入。3人の外国籍の中では最もパワーと身体能力に優れた選手で、ビッグショットを決めた後の上げ上げポーズやOKを作るジャボンポーズでチームを盛り上げる存在でもありました。

新レギュレーションではベンチ入り外国籍は2人まで。対戦相手と連戦を考慮し誰と誰を組み合わせるのか。采配の妙が問われるシーズンでした。

シーズン開幕前に都筑公会堂で行われた出港式。気持ちも新たにシーズンに臨む海賊たちの笑顔がありました。

出港を祝うフィナーレの紙テープ。航海の安全を祈願しましたが。。

暴風雨

暗雲

当時はシーズン開幕前に地域ごとのカップ戦をやっていまして、「EARLY CUP 2018 KANTO」に出場したビーコルは初戦の千葉戦で59点差をつけられて敗北。翌日の川崎戦でも敗れるなど不安が立ち込める状態で開幕のアウェイ富山戦を迎えます。
個人的には初めてのアウェイ遠征にドキドキしながら出かけて行き、富山の食と街と自然を満喫し、Bリーグ・ツーリズムは最高だと大満足でした。そう、試合内容以外は。
開幕戦Game1、富山94-横浜82と大差ではなかったですが、期待のチャックが17点とオフェンス面ではある程度活躍したものの、このシーズンに京都から加入したジョシュア・スミスをチャックがまったく止められず39点を許して敗北します。

開幕戦Game2、エゲちゃんに変わりジャボンをベンチ入りさせますが、能力の片鱗は見せるものの、合流直後ということもありコンディションが万全ではありませんでした。また、チャックが21点とスタッツ的には活躍するもディフェンス面でスミスを抑えられず連日のファウルアウト。富山101-横浜77の24点差で惨敗を喫します。
ガード陣もディフェンスでのプレッシャーが弱く、相手ガード陣にルックアップされて簡単にスミスのインサイドにパスが出る状態でした。

続く京都でも2連敗の後ホームで再び富山に敗れ、5連敗で今季初の国プ(横浜国際プール)で滋賀を迎え撃ちます。

雲間からタクのきらめき

今節からチャックがベンチを外れ、エゲちゃんとジャボンで迎える2連戦。
Game1ではエゲちゃんが21点、マーシーが3Pを6本の22点の活躍で今季初勝利を飾ります。

続くGame2、滋賀に押されっぱなしのビーコルは最大24点差をつけられ、16点差で4Qに突入します。
この状況で試合を支配する男がタク(川村卓也)です。4Q残り5:35から10点を叩き込んで猛追し、残り19秒、クラッチタイムで放つ見たこともないようなフローター!拳を叩きつけながら1回転してガッツポーズ!ついにこの試合で初めてリードします!!
最後はプロレスのような肉弾戦のボールの奪い合いで揉みくちゃになりながらマイボールに。

このシーズンで一番と言っていい劇的勝利に国プは興奮の嵐に包まれます!

後日、この試合のことを語ったタクのインタビュー。

旅立ち1

10.26、シーズン5戦目のホーム富山戦を最後にベンチ外が続いていたチャックの契約解除が発表されます。
期待された得点力ではある程度貢献したものの、単発での攻撃が多く、チームメイトとの連動性に欠けていました。またディフェンスではインサイドを守る強さがなく、5試合中4試合でファウルアウトとなっていました。

海賊戦士4:伝説巨人イベ

チャックとの契約解除が発表された翌日の10.27、プリンス・イベの海賊入りが発表されます。通称"イベ"(そのまま)。背番号11。208cmのC。イギリス出身。大学はケビン・デュラントの母校で知られる名門テキサス大で、3年次は後にNBAのブロック王に2回輝くマイルズ・ターナーとブロック祭りを開催。4年次には平均2.0ブロックを炸裂させ、ビッグ12カンファレンスのDefensive Player of the Yearに選出。
大学卒業後はGリーグでプレイし、初の海外プロリーグ挑戦がビーコル。イギリス/ルワンダの国籍を持ち、後にルワンダ代表としてAfroBasket 2021にも出場しました。
強みはなんといってもブロック!イベの導きにより叩き落されたボールは数知れず。。その反面FT(フリースロー)の確率は極端に悪いという長所短所がはっきりした選手でした。

イベ加入あたりのオフィシャルブーストソング「We are B-Corsairs」はこちら。

旅立ち2

10.27の渋谷戦の勝利を最後に7連敗を喫していたビーコル。11.18の福岡戦で連敗をストップしますが、この試合からエゲちゃんのベンチ外が続きます。
そして11.30エゲちゃんの契約解除が発表されました。。
チャックが振るわない中、カモシカのように軽やかにコートを駆け、変則的なフォームながら確率よく3Pをきめるエゲちゃんはシーズン当初はチームの中心の一人でした。しかしフィジカルの弱さを突かれるようになり、イベの加入以降は攻撃面でもインパクトを出せずにいました。
知的で性格も非常に真面目だったエゲちゃんとの別れはつらいものでした。。
その後エゲちゃんはこのシーズン中に琉球、次いで新潟でもプレイしました。

苦い天皇杯

12.01からビーコルは天皇杯を戦います。
天皇杯とは日本全国のチーム(Bリーグのチームの出場レギュレーションは大会ごとに変更)が予選を戦い、一発勝負の日本一を決めるカップ戦です。
天皇杯はビーコルにとって縁遠いものでした。
Bリーグ初年度は、BリーグからはB1の3地区上位4チームの出場のみだったため、ビーコルは選外でした。
Bリーグ2年目の17-18シーズンは、3次ラウンドからB1全チームが出場し、ビーコルは仙台に勝利したものの、次の千葉相手に19点差で敗退します。
この18-19シーズンもB1チームは3次ラウンドから登場。私自身としては天皇杯でビーコルを応援するのはこの18-19シーズンからになります。
しかし、この時点で3勝16敗と不振にあえぐビーコルにとっては降格回避が優先事項。天皇杯にフォーカスしている余裕はまったくありません。
トムHCが家族の事情から天皇杯は不在となり、代わってACの加藤翔鷹(翔鷹AC)が指揮を執ります。
天皇杯3次ラウンド神奈川会場の舞台はビーコルのホームの一つでもある平塚(トッケイセキュリティ平塚総合体育館)。相手は兵庫県代表の信和建設です。
ビーコルはエースのタクがDNP(不出場)でジャボンとイベもほぼプレイせず。一方リーグ戦で出場時間の少なかった組のナオが3P7本、翼が25点15リバウンド、ハンターが15点7アシスト、そして前シーズンの大怪我から復帰したものの、ここまで出番に恵まれなかったアレクが12点の活躍で勝利。翌日の千葉戦を迎えます。

千葉戦の試合前にベンチで翔鷹ACはこう声をかけました。「とにかく怪我のないように!」と。
タクはこの試合もDNP。スタートはアレク、ナオ、ハンター、イベ、翼。
開始早々千葉の猛攻を受ける中、ジャボンが左肘を負傷しプレイ続行不能に。
そして3Qに悲劇が。。ドリブルでアタックしたハンターが転倒し悲鳴を上げます。「脚!脚!あああ!!」という耳を塞ぎたくなるような絶叫が静まり返った平塚総合体育館に響き渡ります。。結果は左膝の前十字靭帯断裂と内側側副靭帯損傷の大怪我でした。。
翔鷹ACが絶対に避けたかった事態に陥ったビーコルは60-120のダブルスコアで敗北します。
天皇杯敗退よりも大きなものをここで失ってしまいました。

海賊戦士5:ビッグ・アレックス

天皇杯をつらい記憶と共に終え神奈川ダービーを迎える12.07、ビーコルに新しい海賊戦士がやってきます。
アーサー・スティーブンソン。通称"ビッグ・アレックス"。背番号33。203cm122kgのPF/C。USAカリフォルニア州出身。大学は名門UNC(ノースカロライナ大)に入学しますがぶ厚い選手層の中で実力を発揮できず。3年次からこちらも強豪PAC-10(現PAC-12)カンファレンスのUSC(サザン・カリフォルニア大)に転向します。USCでは、4年次には9.8点9.2リバウンドでインサイドの要として活躍します。同大で一緒にプレイしたのが後にNBAのオールスター・プレイヤーとなる二コラ・ブーチェビッチ。
大学卒業後はギリシャを始めとして欧州各国リーグ、2016年にはNBAでも一時期プレイし、直近のフィリピンを経てビーコルに加入。
筋骨隆々の体格を活かしたリバウンドが一番の武器で、つぶらな瞳の優しい性格からブースターに愛されるプレイヤーでもありました。

旅立ち3

12.15、天皇杯で負傷し以降の試合を欠場していたジャボンの一時帰国が発表され、12.25に契約解除となります。
平均19.8点9.4リバウンドとインサイドのエースとして活躍していたジャボンを失ったのは大きな痛手でした。

ジャボンは過去にメンタルヘルスの問題を抱えていて、日本でもトムHCの紹介でセラピストに通いながらプレイしていたことを海外メディアに告白していました。

心の問題と向き合いながらチームを盛り上げてくれたジャボンとの別れも本当につらいものでした。。

海賊戦士6:BC

天皇杯以降、ジャボンを欠いて外国籍選手2名体制となってしまったビーコルは荒波に揉みに揉まれます。12.08、川崎に39点差で敗北。12.12、富山に34点差で敗北。大阪戦ではからくも2勝しましたが、12.22、アルバルク東京に32点差、翌日も21点差で敗北。。
ブースターの心の火も消えかけていた12.26、新海賊がやってきます。
ブランドン・コストナー。通称"BC"。背番号34。206cmのPF。USAニュージャージー州出身。大学は名門ACCカンファレンスのノースカロライナ・ステイト大。1年次に大怪我を負いますが、2年次には復活し16.8点7.3リバウンドの活躍でAll-ACCの3rdチームに選出されます。
大学卒業後はベルギーを皮切りに、Dリーグやフランス、中国などでプレイし、プエルト・リコのリーグを経てビーコルに加入します。
左利きでアウトサイドショットを得意とするオフェンス特化型プレイヤーで、タクと並んでビーコルの主砲として活躍します。契約発表が公表された当日の新潟戦では強行出場にもかかわらずチームトップの24点を叩き出しました。

琉球での暗黒と光

年末12.30、今年の最後にいい夢を見たいと多くのビーコルブースターはバスケットLIVEで、また数少ないブースターがどアウェイの現地に乗り込み必死の抵抗を図ります。外国籍のベンチ入りはビッグ・アレックスと先日デビューしたばかりのBC。
しかしこのシーズンで2年連続の西地区王者となる琉球に序盤から封じ込められ、1Qは何が起きたかわずか2点のみ。外国籍がジェフ・エアーズだけの琉球に最終的には83-42の41点差で敗北。ナオの15点は光ったものの、タクはまさかの0点。BCもたったの1点。とあるブースターは現地で涙を流したほどの惨敗でした。。

翌大晦日12.31、他のB1の試合がなかったため、他チームのブースターもこの試合に注目していました。この状況で前日のような惨敗を喫するわけにはいかないビーコルが年の瀬に奇跡の勝利!タクが23点、BCが20点17リバウンド。マーシーの勝負どころの2本の3も光りました。

これで年内は7勝22敗。SEA CHANGEは未だならず、前シーズンを下回る戦績で年を越します。。

海賊救世主

明けて01.05、前シーズンまで横浜のホープとして活躍していたジョーを、名古屋Dの一員として初めてホーム国プで迎える一戦です。
このシーズン西地区2位となる名古屋Dにはこの時点でクラブとして未勝利。接戦にはなるものの結局は競り負けてしまう戦いが続いていました。
この試合も接戦となり最終的にはOTで敗れたものの、タクが22点8アシスト、イベが12点10リバウンド4ブロック、そしてBCが39点と爆発します。

翌01.06、ついにクラブとして名古屋Dに初勝利する日がやってきます。
タクが24点、リョウが10点9アシスト、そしてBCが28点9アシストの活躍。

このあたりからタクとの両輪で得点を量産するBCを"海賊救世主"と呼ぶ声も聞こえてきました。

旅立ち4

BCの加入以来の12月後半と2月にかけては5勝9敗。負けても接戦を演じられるようになったビーコルにまたも大波が。。
01.30のホーム三河戦、ティップオフに飛んだイベが着地で足首を捻ってしまい5秒で退場。。左足三角靭帯損傷と診断され復帰を願っていましたが、02.28、契約解除が発表されました。。
前シーズンに強烈なインパクトを残したサビちゃんに負けず劣らずのブロックを連発し、01.16の三遠戦では7ブロックを炸裂させます。一方FTは16.7%とその極端ぶりがブースターに愛された伝説巨人イベも忘れえぬ海賊です。

海賊戦士7:ホームズ先生

このシーズンの選手登録期間最終日の02.28、イベの契約解除に続き最後の海賊戦士の加入が発表されます。
ジョナサン・ホームズ。通称"ホームズ"(そのまま)。背番号12。204cm130kgのPF。USAテキサス州出身。奇しくも大学はイベと同じ(ホームズが一つ先輩)テキサス大。3年次には平均12.8点7.2リバウンドとブレイクし強豪Big 12カンファレンスの2ndチームに選出。
大学卒業後はサマーリーグでNBAに挑戦し、初海外クラブは名門バルセロナ。その後Gリーグやイスラエルを経てビーコルに加入。2017年にはFIBA AmericupのUSA代表(NBA選手以外から選出)としてプレイしています。
中/外をこなせるオールラウンダーとして期待されましたが、気になったのは130kgの体重。ビッグ・アレックスよりも重いんですけど。。コンディション部分が気がかりでした。

嵐の前

3月に入りビーコルに光明が見えてきます。03.03のアウェイ三河戦はマーシー19点3P5本、タク30点3P5本、ビッグ・アレックス15点19リバウンド、BC22点と役者が活躍し勝利!

03.16からはアウェイ北海道戦。このとき残プレ圏内のビリ4だったビーコルに対しビリ1だったのが北海道。残プレ回避のために何が何でも勝利が欲しいところ。
Game1ではリョウ20点、タク22点、ビッグ・アレックス10点14リバウンド、BC18点8アシストで勝利!

翌03.17のGame2はタク19点、シーズン途中ではベンチ外を経験するも3月からスタート起用が増えたナオが11点、リョウが12点6アシスト、ビッグ・アレックスが11点19リバウンド、BCが22点で2連勝!

残プレ回避に意気上がるビーコルは03.23、初代Bリーグ・チャンピオンでトムHCの古巣である栃木ブレックスをホーム国プで初めて迎え撃ちます。
Game1、両チームのブースターが国プを埋め尽くし当時の最多入場者数5009人を記録。味わったことのない景色と熱量に圧倒されました。

貴重な国プの暗転

試合はビッグ・アレックスが17点23リバウンド、BCが24点と活躍するも、他のプレイヤーで上積みを作れず敗戦。

翌03.24、前日を上回る最多入場者数5050人が詰めかけた国プでついにジョナサン・ホームズが登場!来日以来ベンチ外が続いていたホームズとBCのコンビでかつてのチャンピオンチームに挑み、ホームズは14点5リバウンドとデビュー戦としては合格点の活躍(約20分の出場でファウルアウトでしたが。。)。タク22点、BC22点13リバウンドと奮闘するも11点差で敗北でした。

旅立ち5

満員の国プでの栃木2連戦の熱狂以降、ビーコルは連敗街道を突き進みます。8連敗を喫した後の04.08、なんとホームズの契約解除が発表されます。出場したのは栃木戦のわずか1試合のみ。「様々なコンディションの問題」という発表も不穏なものを感じさせました。。

しかし、その後は海外リーグでプレイし、21-22シーズンはスロベニアのリーグで2桁得点の活躍をしていたようです。

天気大荒れにして波高し

ホームズの契約解除が発表された後の04.10ホーム平塚で三河に敗れたビーコルは、04.12からのホーム最終節を文体(横浜文化体育館)で迎えます。対戦相手は運命のライバル、前シーズン残プレで激闘を繰り広げた富山です。
残プレをなんとか回避したいビーコルにとって、この2戦は絶対に負けられない戦い。
福岡がB1ライセンスを失い降格。福岡を抜かしたビリ2チームが残プレ行きとなります。レギュラーシーズン残り4試合のこの時点で北海道が残プレ行き確定で、残り1チームを横浜(14勝)、秋田(15勝)、滋賀(17勝)の3チームで争います。
勝率を基にすれば滋賀はかなり優位な位置にいるため、ビーコルのターゲットはB初年度に残プレで下した因縁の秋田となります。
しかし今節、秋田が対戦するのは既に残プレ行きが決まっていた北海道。秋田が2連勝し、ビーコルが2連敗すればその時点で残プレ行き確定です。
このシーズンの富山はこの時点で28勝していて横浜には4戦全勝。ビーコルの2倍の勝ち星を挙げワイルドカードでのCS進出を狙う強豪チームでした。

Game1、タイチの活躍などもあり富山に食らいついていったビーコルは4Qで抜きつ抜かれつの攻防を続け残り23秒、セットプレイからタクが3を決めて1点差に。残り4秒、2点差で負けているビーコルはキャプテン・アレクが執念でFTをもぎ取ります。1本きめて1点差。しかし2本目を外すとリバウンドでエドがアンスポを取られ97-99で試合終了。
タイチが11点、タクが19点3スティール、ビッグ・アレックスが23点18リバウンド、BCが22点とオフェンスでは富山に負けていないもののこのシーズンはディフェンス面が大きな問題でした。
シーズン終盤、接戦をどうしても落としてしまうビーコル。エースのタクは試合終了後、指で頭に三角形を作って一人座り込むシーンが増えていきました。

Game2、ここで敗れればほぼ残プレ行き確定です。
1Qで富山を9点に抑えたビーコルは最大19点のリードをつけます。しかし以降リードを溶かし続け、4Q残り5:56ついに捕まります。そこからは前日同様一進一退の攻防を繰り広げ、残り44秒のタクのジャンパーで2点差に。しかし残り33秒、絶対に撃たれてはいけない3Pを阿部にきめられ、この試合で初めてリードを許します。逆転を狙ったアレクのショットは外れ、ファウルゲームでも阿部にFTをきめられ72-75で敗北。
主要スタッツはタクが15点、ビッグ・アレックスが25点19リバウンド、BCが12点10リバウンド8アシスト。

試合終了後にコートのレイアウトを変更してホーム最終戦セレモニーが行われました。プレイヤーとコーチが神妙な面持ちでブースターに声を届ける中、翼は自らの不甲斐なさに涙を流していました。

かたや秋田は北海道相手に2連勝し、ビーコルの残プレ行きが確定しました。
最終節の新潟にも2連敗したビーコルは、最終戦績14勝46敗の勝率.233でbj時代を含めたクラブワーストを記録。13連敗で3シーズン連続となる残プレへと挑みます。

決戦前夜

残プレを明日に控えた04.25の夜、ほんとに明日から一大決戦なんですか?と世界を疑ってしまうような、ブースターの緊張の斜め上を行く動画が公開されます。

この冒険心こそが横浜の海賊の真骨頂。ブースターの心は奮い立ちます。ぜひ最後までご覧ください。

3シーズン連続の残プレ:VS 北海道

B1残留最後の椅子を賭けて、成績上位チームであるビーコルはホーム平塚で北海道と戦います。
北海道は、ブラジル代表HC経験のあるジョゼ・ネトHCに指揮を委ねシーズンをスタートさせたものの、成績が振るわず12.05に契約解除となります。後任はかつて女子日本代表を率い、前シーズンから北海道のアドバイザリーコーチを務めていた内海知秀。
それでも成績はなかなか向上せず、エースのマーク・トラソリーニ、スペインからやってきたデイビッド・ドブラスに加え第3の外国籍として、かつてNBAで平均2桁得点を取っていたこともある212cmの大物バイロン・ミュレンズが12.20に加入します。
その後もチームは低迷を続け、02.03の滋賀戦での勝利を最後にシーズン終了まで実に22連敗を喫して残プレに突入します。
シーズン序盤から負傷者が出て、残プレ間際にはトラソリーニとミュレンズも怪我の影響があり、どちらが出場してくるかわからない状態でした。

04.26 残プレGame1

北海道は直近のアルバルク戦で怪我から戻ってきて39点を叩き出したミュレンズとドブラスを起用。
1Q、ビーコルは9点しかきめられず、2Qでは20点差をつけられます。しかしじわじわと追いすがり、2Qの終わりにはタクの3Pで10点差まで戻して後半へ。執拗についていったビーコルは4Q残り7:13、タクのジャンパーでついに同点に。互角の攻防を繰り広げ残り54秒、ビッグ・アレックスがインサイドでねじ込み3点リード。北海道は残り10秒、北海道の代表取締役社長を務めながら48歳の現役プレイヤーでもあるレジェンドシューターの折茂さんが、同点を狙ったコーナー3を放ちます。が、ボールはリングに弾かれ試合終了。ビーコルが初戦を奪い取ります!
タクが19点6アシスト、リョウが15点、ビッグ・アレックスが13点15リバウンド、BCが18点。

04.27 残プレGame2

運命のGame2。1Q、2Qとビーコルが優勢に進めるも、3Qで北海道の反撃に合い、3点ビハインドで4Qへ。一進一退の攻防が続く残り1:17、北海道4点リードの場面でナオが難しい3Pをきめて1点差に。しかし直後に桜井が3Pをきめ再び4点差。ビッグ・アレックスが入れ返して2点差に戻した残り29秒、関野が意を決したドライブでナオの逆を突きバスケット・カウント。5点差となり万事休すかと思われた残り16秒、タクとBCが徹底マークを受ける混乱の中でナオがもう一つのビッグ3Pをきめて2点差に!
残り13秒、エンドからのボール出しで桜井がミュレンズに出したパスにエドが執念で手を伸ばし、北海道のラストタッチの判定でビーコルにラストチャンスが!タク/BCどちらかに撃たせたいビーコルですが、両エースとも疲労困憊でうまいことボールをもらえません。BCがタフショット気味に3Pを放つもきめられず。。主要スタッツはタクが17点9アシスト、ナオが11点、リョウが15点、ビッグ・アレックスが15点19リバウンド、BCが16点。
決着は前/後半5分ずつのGame3に持ち越されます。

残プレGame3

インターバルを経て始まった最終決戦Game3。前半は一進一退で、後半残り3:38、タクのジャンパーで横浜14-北海道7としてビーコルが抜け出します。しかしここからミュレンズが連続得点。残り2分、ビーコル1点リードで北海道のドブラスがファウルアウト。バランスはビーコルに傾いたかと思われましたが、残り1:41でタクが痛恨のアンスポを取られます。正直、Game2の終盤からタクの脚に余力は残っていませんでした。エースとしてチームを支え、残プレの連戦もあり、かつて大怪我を負ったタクの脚はもう限界を越えていました。ビーコルの得点はタクのジャンパーが最後となり、北海道が15-0のランをきめビーコルは敗北します。
涙にくれるリョウとタク。がっくりとうなだれるナオ。試合終了後、代表取締役CEOの岡本さんがスピーチする際、観客席から岡本さんに心ない暴言が飛び、それに対しブースターが反論する騒動も起きました。
最終最後はB 1/B2入替戦での自力残留可能性もありましたが、果たしてこの状況で勝てるのか、プレイヤーもブースターも目の前にあるのは暗雲のみでした。

幸運な海賊

ビーコルのB1残留はB2プレイオフの結果に委ねられます。ビーコルが北海道に敗退した翌日の04.28、B1ライセンスを持たない信州がセミファイナルで島根に2連勝します。翌04.29、1勝1敗だった熊本と群馬のGame3は、これまたB1ライセンスを持たない群馬が1点差で勝利。
これによりビーコルのB1残留が決定します!

Bリーグ初年度、B1/B2入替戦勝利で残留。
Bリーグ2年目、B1残留プレイオフ2回戦勝利で残留。
Bリーグ3年目、B1残留プレイオフ敗退でも残留。

信州さん、群馬さんに感謝すると同時に、ビーコルに携わってくれた人たちの努力と奮闘に感謝しつつ、ちょっとだけ何かの力が幸運という風を送ってくれたようにも思えました。

数年後の優勝を目指してSEA CHANGEを図ったビーコルのBリーグ3年目は、目も開けられないような暴風雨の中での航海でした。
結果的にはクラブ創設以来、最も勝てなかったシーズンとなりました。
シーズンオフに、チームはついに大きな決断を下します。それは次回に。


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