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書物の帝国(購書日記2020.12.10)

丸善日本橋店にて
・江崎貴裕『分析者のためのデータ解釈学入門』(ソシム)
・マシュー・ハインドマン『デジタルエコノミーの罠』(NTT出版)
・藤原さと『探究』(平凡社)
・井上雅彦監修『蠱惑の本』(光文社文庫)
・勝田敏彦『でたらめの科学』(朝日新書)
・相馬直子+山下順子『ひとりでやらない育児・介護のダブルケア』(ポプラ新書)
・小島健輔『アパレルの終焉と再生』(朝日新書)

読了

十三不塔『ヴィンダウス・エンジン』(ハヤカワ文庫JA)

中国の成都という場を舞台にした超人SF小説。今の中国のAI技術のレベルを考えると、将来的にはあり得る内容ではある。だからSF小説を読むのは楽しい。幻魔大戦とか、様々なSFの要素がミックスされ、かつ攻殻機動隊的な要素のある内容。人によっては、好き嫌いが出てくるかもしれない。

主人公キム・テフンは、動かないものが見えなくなるというヴィンダウス症という難病に罹患。のち寛解し、とある依頼を受けることになる。その依頼とは、成都の四川生化学総合研究所からで、成都を制御する都市AI「八仙」と寛解者であるキムがコンタクトを行い、接続を試みる。主人公キムがAIの駒になって、代理戦争を行うというところまでは、おっあり得そうだな―という気持ちでわくわくして読んでいた。で、後半は割と失速する。

病によって特殊能力を得て超人化するというところは、SFでは割とみられるのだが、後半がなんとなく神林長平の<雪風>みたいな感じになっていたのと、寛解者たちの動機がいまいち理解しにくいところがあり、成都の設定が生かされていないところもあった(もっと大掛かりな仕掛けを期待していたのだが、幻魔大戦+雪風になっていたのはアレ?という感じ)。ヴィンダウス症の治療については、そう来るかという感じではあるのだが、やや肩透かしではある。

今後AIが人々を管理するであろう中国の近未来像を描いて、グレートゲームをやるというシンギュラリティしたAI神仙たちの戯れの息吹を感じられたのがよかった(その後ダン・シモンズの『殺戮のチェスゲーム』を読んで、なんとなく本作を思い出した)。次は役満な名前の作家さんがどんな壮大な設定のSFを書くのか、期待しています。

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