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北欧家具と最近のこと。vol.38

5月3日、お店をオープンして3年を迎えました。
まさか2年続けて周年記念を緊急事態宣言直下で迎えることになるとは思ってもいませんでしたが、なんとか今年も無事この日を迎えることが出来ました。これまで支えて下さった皆様方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。本当に有難うございます。
小さなお店。駅からも結構歩きます。決して話が上手とも言えない店主は、至らぬことも多く反省の多い毎日です。そんなお店でも3年を迎え、これまで支えて下さったお客様方の顔がたくさん頭に浮かんでいます。直に応援の言葉をかけて頂いたことはたぶん一生忘れることは出来ないだろうなと思っています。立派な家具屋に成長できるようこれからも精進してまいりますので、今後とも皆様からのご支援、お力添えを頂けましたら幸いです。これからもどうぞよろしくお願い致します。

最近の家具のこと。

4月はご依頼頂いたお預かり品の修理作業をメインに進めていたため、在庫商品のメンテナンスにあまり時間を掛けられなかったのですが、それでも良い雰囲気の家具が幾つか並びました。

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デンマーク製のヴィンテージチェア。こちらは全部で5脚ございま、したがつい先ほど残り3脚となりました。
とても素朴なデザインですが、でもそれが良いんですよね。背伸びをしていない安心感と空間を選ばない懐の深さ、そして長く付き合っていけるような落ち着いた雰囲気がすごく気に入っています。

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もともとは本革で張られていたのですが破れや痛みも激しく、再生は断念。今回は合成皮革にて新たに張替を行いました。
なるべく柔らかな質感の素材を選びましたが、背凭れのこの厚みでカーブにステッチを入れていく作業はなかなか大変ですね。慎重に慎重に縫い合わせていきました。まずまず、上出来です◎

その他、なんとか4月中にウェブサイトへアップした商品。本当に駆け込みました、、

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ウェグナーのソファ『GE40』
一通りのメンテナンスは終えていますがまだ張替前のため現タイミングではお好みの生地をお選び頂けるようご案内しています。

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デンマーク製ビューロー付きのブックケース。こちらもつい先ほど嫁ぎ先が決まってしまいましたが、
デスクとしても使用出来る機能的な構造。広々とした天板スペースに充実した収納も備えた、なかなか使い勝手の良い素敵な一台です。

今回試験的にメンテナンス後にそのまま工房で商品の写真撮影を行ってみたのですが 、背景は改善余地あり。壁塗るのは許可が必要なので、とりあえず撮影用にカーテンを用意しようかな。

お預かり家具の修理

座面ペーパーコードの張り替え

まずは3月終わりから進めていたペーパーコードの張り替え作業。
予定通り週1脚ペースで持ち込んで頂き入れ替えながらの作業は無事4月中旬には4脚全て終えることが出来ました。右がビフォーの左がアフター。

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アンティークスツールの張り替え

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随分前に購入したというアンティークのスツール。オリジナルのファブリックだったためその頃から多少は痛んでいたが気に入って使っていたのだそうです。ただお子様が座面を掘ってしまうので、、と暫く押し入れに仕舞われていたところ、この度修理をしようと決心し張替のご相談を頂きました。

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お客様にセレクト頂いた生地にて張り替えました。円の縫製はだいぶ上手くなってきたけどパイピングがまだまだ苦手です。今回は無事整いましたが、うーん。もっと練習しよう。

ヴィンテージチェアの再塗装&張り替え

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こちらは以前お店で椅子を購入頂いたお客様より。その椅子をご納品した際に既に修理のご相談を頂いていました。
ご両親がお知り合いから譲り受けご実家で長く使用してきていた。それを気に入っていたのでまた譲り受けてこれまで使ってきたのだそうです。

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塗装がだいぶ痛んでいたので、私が納品させて頂いた椅子のようなしっとりとした木の質感を楽しめるオイル仕上げにしたい。
また座面の板が割れてしまっていたのでそちらの交換(これは板ではなくベルトに交換させて頂きました)そしてクッション材と生地の張り替え、とほぼフルでメンテナンスを担当させて頂きました。

うん。すごく美しい椅子でした。これは本当に楽しかったです。
最初デンマークの家具メーカーJL.Mollerの製品?と思うほど細部まで造りが良くて、でも座面構造なんかがどうやらデンマーク製ではなさそうで。でもでも英国とか米国って感じも全然ないんですよね~何となくですけどね。もしかして国産?だったらすごく誇らしいな~僕も欲しいな~とか思って製造を調べてみたのですが、結局さっぱり何も判りませんでした。お客様にも尋ねてみたところ、ご実家が家具屋さんだったそうで、外務省関係の知人から譲り受けたとか?だったらやっぱり海外製なのかな?どうなんだろう。まとまらないので次に行きます。

ヴィンテージチェアの張り替え

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デンマーク製のチェアの座面張替作業。ご依頼頂いた時になんか見たことあるな(まぁデンマーク製だしね~)と思っていたらなんと以前私が勤めていた会社で購入頂いたものだそうで、、私が販売したわけではもちろんなかったのですが話をしているうちに「もしかしてあそこのマンションですか?」と。なんと私が配達に行っていたことが判明。もう6年くらい前。そんなちょっとしたご縁が、なんだかんだ嬉しいものです。

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ということでお客様にセレクト頂いた生地にて張り替え。ついでに今回も木部のワックスメンテナンスまで行って無事お引き渡しも済ませました。

その他、お持ち込みでは椅子の高さ調整をご依頼頂いたり、また以前お客様に購入頂いたイージーチェアのフレームが外れてしまったという連絡を受け急遽対応するなど、ばたばたと修理作業に明け暮れておりました。

暮らしに寄り添う

もう10年以上、家具に携わりながらいつも目の前にあるようで、でも実体の不確かな言葉。暮らしに寄り添う。とても聞こえが良くてつい使ってみたくなるし、家具屋である以上、暮らしに寄り添いたいとはいつも願っている。
けど暮らしに寄り添うとは果たして何なのか。何をすれば寄り添えるのか。分からないまま分かった風に過ごしてきてしまったようにも感じています。

私たちの仕事は、古い家具だけれども、この先も気持ちよく安心して使ってもらえるように、手を掛け次の使い手へと受け渡すこと。
この先にある暮らしを想像もするし、また様々な痕跡からこれまでの暮らしを想像することもある。もちろん家具を販売する際に、お店でお客様と話しをしている際に、暮らしの中にある悩み事を伺いながらその解決のために家具を提案することもある。そこに、暮らしに寄り添う糸口を見つけることも出来るのかもしれない。でも様々にある暮らしの全てを知る事なんて出来ないわけで、結局その家具が自分の手を離れてしまった後は、自分が手を掛けた家具たちがその先の暮らしに寄り添えているであろうことを祈る事しか出来ない。

そんな中にあって、最近お持ち込み家具の修理を請けていると皆様々なエピソードを語ってくれることに興味を覚えました。もちろん修理をするに当たり、壊れてしまった原因を知るためこちらからヒアリングをすることも多いのですが、お客様の方からその家具がどんな由来であって、どんなところが気に入っていて、と様々にお話をしてくれるんですね。
すると自分の仕事が、分かり易くその暮らしの真ん中に入り込んだ気がするんです。暮らしに寄り添う、とは違うのかもしれないですけれど。お客様の大切な家具を預かるわけですからとても責任重大なわけなのですが、でもそんなところが結構楽しくて、これからも出来る範囲で請けさせて頂ければと考えています。

家具屋として、暮らしに寄り添う=商品のアフターメンテナンス、ということだけでは決してないんだろうなと、気付いています。その一部分ではあるのかもしれないし、ニアリーイコールかもしれない。けど、暮らしに寄り添うということを100%実感出来ることはそうそうないんだろうな、となんとなく感じています。実感する必要もないのかもしれない。それにこちらからわざわざ、その暮らしの中に介入する必要はないわけで。寄り添うということはたぶん、せめて家具屋であり続けることがまずその一歩なんだろうな。と最近ようやく思うようになりました。相変わらず話を上手くまとめられないのでニュアンスだけでも伝わってくれればと思います。そんな話です。

4年目も変わらず、家具屋として楽しく続けさせて頂ければと考えています。これからもお付き合いのほど、どうぞ宜しくお願い致します。