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母さんがどんなに僕を嫌いでも

あらすじ

幼い頃から、美しい母・光子(吉田羊)のことが大好きだったタイジ(太賀)。
しかし、家の中にいるときの光子はいつも情緒不安定で、タイジの行動にイラつき、容赦なく手を上げるのだった。
そんななか、夫との離婚問題が浮上し、タイジの存在が不利になると考えた光子は、9歳のタイジを児童保護施設へ入れてしまう。
1年後。良い条件で離婚した光子は、タイジとその姉・貴子を連れ、新しい家で暮らし始めるが、そこでもまた不安定な生活を送ることになる。
17歳になったタイジは、ある日、光子から酷い言葉と暴力を受けたことをきっかけに、家を出ることを決意。
ただ日々を生きていくだけのなか、タイジは幼い頃に唯一自分の味方をしてくれた工場の婆ちゃん(木野花)と再会、自分への強く優しい想いに心を動かされるのだった。
努力を重ね、やがて一流企業の営業職に就いたタイジは、社会人劇団にも入り、金持ちで華やかだが毒舌家のキミツ(森崎ウィン)と出会う。
そんな彼に戸惑いながらも、次第に打ち解けていくタイジは、会社の同僚・カナ(秋月三佳)やその恋人・大将(白石隼也)とも距離を縮めていくのであった。
大人になって初めて人と心を通わせる幸せを感じたタイジは、友人たちの言葉から、自分が今も母を好きでいることに気付き、再び母と向き合うことを考え始める。
そんなある日、長らく絶縁状態だった光子から連絡を受けたタイジは、光子の再婚相手の葬儀に出席するが、光子から冷たくあしらわれてしまう。
だが自分から変わることを決めたタイジは、食事を作るため光子の家へ通い、もっと母のことを知ろうと叔母のもとを訪ねる。
そこで、母の幼い頃の苦労を聞かされたタイジだったが、母が亡き夫の残した莫大な借金を背負っていることを知る。
その借金を巡り、光子とタイジは口論。
そしてまたも光子はタイジを拒絶するが、タイジが脳梗塞になった光子の世話を献身的にする中で頑な光子の態度が和らぎ始める。
タイジは、光子との親子の絆を結び直せるか?
歌川たいじの同名コミックエッセイの映画化。

感想

母の光子から受けた暴言や暴力のせいで、「自分は醜い愛される資格がない」と呪いをかけられて心を閉ざして生きてきたタイジが、毒舌家のキミツや包容力のある大将とカナと心を通わせる中で頑な鎧がタイジの心から剥がれ落ち、キミツや大将たちが自分の過去を受け入れてくれた時に愛される実感を得て、光子と向き合い自分を変えようと決心するまでのタイジの心の変遷が丁寧に描かれていて、タイジと光子との親子の確執はシリアスタッチ、タイジと大将たちとの交流は青春コメディと演出のタッチを変えることでメリハリのあるヒューマン青春コメディとして、「親子の確執」という身構えがちなテーマでも共感しやすい映画として楽しめる。
母光子への愛憎を抱えながら自分を変えようと足掻くタイジを正面から演じた太賀の熱演が光っているが、吉田羊や森崎ウィンや白石隼也の脇をしっかり固める演技も良い。
タイジが、光子から受けたものが呪いだけでなく大好きな混ぜご飯の味など良いものもあると知って、光子のことを知り寄り添う後半の展開に心を揺さぶられた。
ただ原作で大きな役割を果たしているタイジの恋人ツレのパートや劇団で大役を頑張るタイジの奮闘が、カットされていたのが残念だった。
親子の確執を描いた傑作映画に、また一つ傑作映画が加わったと言える傑作ヒューマンコメディ映画。

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