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はりぼて ある保守自治体市議の政務活動費不正 ドキュメンタリー

富山県は、有権者に占める自民党員の割合が10年連続で日本一である。
そんな保守王国の富山県の若いローカル局チューリップテレビのニュース番組は、2016年8月、自民党会派の富山市議が政務活動費事実と異なる報告をしていることをスクープ報道した。
その市議とは、富山市議会のドンといわれていた自民党の重鎮である中川勇市議。その後、自らの不正を認め議員辞職。
これを皮切りにして架空請求やカラ出張など議員たちの不正が次々と発覚し、半年の間に14人の議員が辞職した。
このことを踏まえ、富山市議会は全国一厳しいといわれる政務活動費の使い方についての条例を制定したものの、報道から3年半が過ぎた2020年には議員たちは不正が発覚しても辞職せず居座るようになっている。
議員たちを取材するにつれ、政治家の非常識な姿や人間味のある滑稽さを目の当たりにしていく記者たち。
日本の政治の縮図ともいえるこの問題。追及する記者をはじめ私たちは腐敗した議会や議員を笑うことしかできないのだろうか。
富山県のテレビ局チューリップテレビが地方政治の不正に立ち向かった政治ドキュメンタリー映画。

始まりは、富山市議会のドンと呼ばれる中川勇市議が、議員報酬の引き上げを市議会に提案したことから始まる。
選挙により身分が、左右される不安定な状態では、資産を持っている人などしか議員として活動出来ないからというのが、理由。
この提案を受けて、審議会は市議の報酬引き上げを議会で審議するかを討議したが、審議会は2回しか開かれず、委員の内の4人が自民党に関係する市議だった。
市議報酬引き上げは、市議会でろくな論議をされずに可決される、まさに「お手盛り」の条例決定だった。
では、政務活動費はきちんと使われているのかをチェックするため、富山県のテレビ局の記者である五百旗頭幸男は、富山県市議会に情報開示請求した。
ところが、中川勇市議が市政報告会を開催した時に配布した資料の印刷費が白紙の領収書を使って請求されていることが発覚し、別の懇親会の費用に流用されていることが確認されたことをきっかけに、同様の政務活動費不正が次々に発覚し、14人の市議が退職し起訴された。
その後、政務活動費不正を防止するための報告基準などを定めたが、また政務活動費不正が次々に発覚し、市議が起訴されたけど、判決が出るまでは活動するなどと言い訳して退職しない市議が増えたり、政務活動費不正発覚後の選挙の投票率が低いままだったり、政務活動費不正のニュースが報道される時間が少なくなるなど風化していく現状がある。
根本にあるのは、自分たちは高額な報酬を得ることが当たり前と思っている市会議員の特権意識、疑惑に対して様々な言い訳をして言いくるめようとする市議会議員の厚顔無恥さ、市議会の多数派の保守会派議員に忖度して言いなりになる役人の無責任さ、市議会のドンの息が掛かる保守会派の議員から白紙の領収書を出せと言われれば仕事欲しさに目をつぶり白紙の領収書を出してしまう無責任体質、保守会派の議員の圧力に負けて無難な報道に走るマスコミの怠慢、市議会をチェックするために不正に対する怒りを投票行動に示さない国民の諦め、権力の不正をチェックすべき三権分立の機能不全、民主主義を健全に執行すべきこれらの要素が「はりぼて」になってしまった現代日本のありようを厳しく糾弾した傑作政治ドキュメンタリー映画。

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