見出し画像

東京都ホームレス自立支援計画へのパブコメ(3/1締切)

東京都は「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第5次)(案)」に関する意見募集を行なっています(2024年3月1日締め切り)。いわゆるパブコメです。
まだギリギリ締切に間に合うのでせひみなさん提出しましょう。私が提出した意見を掲載するので、参考になれば幸いです。なお、無料低額診療と外国人への支援に関する意見は稲葉剛さんのご意見を参考にさせていただきました。

▼意見の提出はこちらから(東京都のウェブサイト)
「ホームレスの自立支援等に関する東京都実施計画(第5次)(案)」について御意見を募集します

以下が北畠が提出した意見です。便宜上、意見番号をつけます。色々と進歩している点もあると思いますが、個人的には(意見8)に書いたような部分はゲンナリします。(意見1)は、ここで書いても仕方ない話ではありますが、結構大事なことだと思うのであえて書きました。

(意見1)P1 「ホームレス」という語について
本計画では「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」による定義に則り、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」を表す語として「ホームレス」を用いているものと思われる。しかしながら路上生活ないし野宿状態は不安定居住状態と連続的に移行しうるものであり、自立支援を考える上で「ホームレス」状態を路上生活・野宿状態に限定することは合理性に欠ける。本計画の趣旨に照らせば、「ホームレス」は広義のホームレス、すなわち不安定居住状態までを一体的に捉えた語として用いるべきだろう。さらに、「ホームレス」の由来である「homeless」は、「住まいがない状態」を表す形容詞であり、人そのものを指す語ではない。「ホームレス」が路上生活者・野宿者そのものを指すことにより、固定化されたイメージを増長し、その実態の捕捉範囲も限定してしまうおそれがある。「ホームレス」という語は不安定居住状態までを含む概念として、形容詞的に用いられるべきであり、人を指す際には「ホームレス状態の人」などと表現するのが妥当である。

(意見2)P3 夜間の概数調査について
「2 東京都におけるホームレスの現状」においては、P30で触れる夜間概数調査(「令和3年度から国河川を除く23区において」実施し、「確認された路上生活者は日中と比べて多い」)の結果も記し、既存の調査との違いやその要因について分析すべきである。

(意見3)P3 不安定居住状態の実態把握について
「2 東京都におけるホームレスの現状」では、ホームレス(路上生活者)の概数調査及び生活実態調査に基づいて記述されている。一方で、P17の本計画の「基本目標」では、住居喪失不安定就労者等への取り組みについても明記されており、本計画はいわゆる広義のホームレスをも対象としている。よって、「2 東京都におけるホームレスの現状」においても広義のホームレスの現状について示すことが望ましい。以前ネットカフェ等の商業施設を対象におこなわれた「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査」を継続的に実施するとともに、派遣社員寮等、これまで実態把握が十分でなかった不安定居住の形態も視野に入れた調査を行なうなど、積極的に実態把握を図ることを期待する。

(意見4)P20 自立センターのあり方について
自立支援センターのあり方について、個室化を進める点は大いに評価できる一方で、規模縮小や今後担うべき機能については再考の余地があると考える。近年「ホームレス(路上生活者)」の減少・高齢化・長期化が顕著であるが、施策評価書によれば自立支援システムの利用者は若年層や路上期間が短い者の占める割合が高い。自立支援センター利用者の生活状況は、従来の「ホームレス」よりもむしろ「TOKYOチャレンジネット」が対象とする住居喪失不安定就労者の生活状況と連続的であると考える必要があるだろう。派遣登録アプリを利用して短期的な仕事を得ながらネットカフェで生活するなど、不安定居住状態にある者は相当数存在するものと推測され、実際にTOKYOチャレンジネットの利用者数も非常に多い。民間支援団体には何らかの原因で仕事が途絶えてその日に宿泊する場所がないという相談も数多く見られ、依然として緊急一時保護用の個室シェルターの需要がある。自立支援センターは個室化により緊急一時保護シェルターとしての質を高め、利用ハードルを下げることでより多くの需要が顕在化される可能性があり、規模については縮小ありきで進めるべきではない。また、「ホームレス」から不安定居住状態にある者までを連続的に捉えることで、改めて自立支援システムと他制度との機能分担について検討・整理を図るべきだろう。その上で、前述のように緊急一時保護用の個室シェルターは一定程度維持しつつも、早期に(期限付きでない)居宅を確保した上で支援が提供される、ハウジング・ファースト型の支援体制に再編していくことが望ましいと考える。

(意見5)P26 公営住宅の割当について
「①公営住宅の入居斡旋」について、自立支援センター退所者向けの都営住宅の割当戸数が20にとどまっているが、増加すべきである。また、住居喪失不安定就労者が利用する一時住宅の退居者に対しても都営住宅の割当があると良い。

(意見6)P26 低家賃住宅の確保について
「②低家賃住宅の確保」については積極的に取り組んでいただきたい。特に、居住支援が必要な者に対しては住宅確保についてのアドバイスにとどまらず、物件探しや契約に至るまでの具体的なサポートが必要となる。また、住居確保給付金よりも柔軟に活用できる東京都独自の家賃補助制度の創設や、住宅部局や居住支援協議会、居住支援法人と連携し利用可能な物件を確保するなど、さらに積極的かつ先進的な取り組みを期待する。

(意見7)P29 無料低額診療について
東京都内で無料低額診療事業を行なう医療機関は60弱にとどまり、また各機関に財政負担を強いる仕組みになっている。東京都自ら実施機関を開拓し、資金的な補助を行なうなど、効果的な活用を図るための具体的な施策を実施していただきたい。

(意見8)P32 ホームレスに至る要因への偏見について
「④ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者への対応」という項目の中に、「学校教育では、社会の一員として自覚を促すとともに望ましい勤労観や職業観を育成できるよう、体系的な『キャリア教育』を推進します」とあるが、本項目の内容としてはそぐわない。キャリア教育実施の是非はともかく、実際のキャリア形成には個人の勤労観や職業観のみならず、生育環境や社会環境による影響を大いに受けると考えられる。本計画に記された表現では、キャリア形成の“成否”を勤労観や職業観といった個人の意識の問題に矮小化しかねないばかりか、あたかも「社会の一員としての自覚」の有無がホームレス状態にいたる要因であるかのような誤解を生じさせうるため、東京都自ら「ホームレス」への偏見を助長させかねないことが懸念される。本項目ではむしろ、直前に記載されているようにホームレス状態にいたる前の段階で利用できる支援施策を充実させるとともに、現にホームレスになることを余儀なくされるおそれのある者がそうした支援施策に容易にアクセスできるような広報周知活動や対社会人教育を推進すべきである。学校教育について言及するのであれば、困窮した際に利用できる社会福祉制度をはじめとするセーフティネットへの理解を深めることや、支援施策を利用することをためらうことがないようにスティグマを軽減させるような教育をすべきである。

(意見9)P34 ホームレス状態の外国人への支援について
仮放免中や難民認定申請中の外国人がホームレス状態にいたる事例が報告されており、中には健康状態が著しく悪化していることも少なくない。既存の支援制度ではカバーできない場合も多いため、緊急的な人道上の措置として国籍によらず「ホームレス」状態にある者に対しては緊急援助を行なっていただきたい。

(意見10)P36 「貧困ビジネス」対策について
「2. ホームレスの状態に即した生活保護の適用」では、「宿泊所も保護の適用の場として活用」するとしているが、P37に「宿泊所においては〜、その取組内容には事業者によって大きな差が見られます」とあるように、適切な居住環境を提供していない事例も報告されている。劣悪な居住環境の施設や、設備面では一定水準以上であっても利用者の貧困状態を固定し抑圧・搾取する施設が散見されるとともに、近年では郊外のアパートに生活保護利用者を住まわせ、地域の相場より高額な家賃を徴収するほか、物件自体を転売して利益を得るなど、巧妙化した「貧困ビジネス」が横行している。「貧困ビジネス」に対しては規制や行政指導の強化が必要だが、同時に優良な居住環境を得るためのハードルを下げることで、劣悪な居住環境で搾取される必要がない構造を構築することが必要である。こうした「貧困ビジネス」に繋がらないための対策を記すべきだと考える。

(意見11)P44 計画策定プロセスへの民間団体の参加について
「②民間団体との連携」では、地域の実情を把握している民間団体との連携や協力の重要性が強調されている。そのためには、本計画の策定会議委員として民間のホームレス支援団体にも参加を仰ぐべきである。地域による実情の違いや、団体それぞれの支援対象のターゲット層の違いにより蓄積されている知見も異なることから、複数の民間団体が策定過程に参加することが望ましい。

(意見12)P47 計画策定委員の名簿掲載について
公表されている本計画の策定会議委員の名簿(https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/rojo/sakuteikaigi5.files/5thplan_member2312.pdf)は、本計画の「参考資料」にも付すことが望ましい。


よろしければサポートお願いします!現在フリーランスの研究者の卵ですので、いただいたご支援は調査研究活動に使わせていただきます。