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軍や警察が男を裸にする理由

イスラエル軍がハマスを裸にして物議に

CNNは、12月4日に「イスラエル軍がガザ地区で拘束したハマスの兵士たちを裸にした。」と、非難する口調で報じた。
人道的な観点から、衣服を脱がすのはルールに反しているというわけだ。

エルサルバドルの刑務所は基本裸

これはイスラエル・ガザだけではない。
エルサルバドルの刑務所に行くと、一部の箇所にいる囚人は、基本的に上半身裸になって収監されていることが多い。

これに対して、人権団体は非難の声を挙げている。
たとえば、アムネスティ・インターナショナルでは、エルサルバドルの刑務所の扱いは、人権無視の行為だと非難しているのだ。

孫のズボンから見えた拳銃

もちろん、人の服を無理やり脱がせて裸にするというのは、人権無視と言われても当然だと思う。
一方で、正直に言ってしまうと、治安の悪い中南米に住んでいるボクは、「良くないけど・・・」という気持ちが生まれる部分もある。
特に、悪人を相手にする警察や、殺されるリスクしかない軍の人などが、そう思ってしまうのは避けられないことだと感じる。

こんなことがあった。
中米のある国の首都に行って、スターバックスでコーヒーを飲んでいた時のことだ。
窓際に座って、店の駐車場や前の道路の様子を眺めていた。
70代くらいのおじいちゃんが、孫であろう、若い男に肩を支えられながら店を出て、車に乗せてもらっていた。
孫は優しく話しかけていて、とても幸せな人たちだと思った。
その時、横風が吹いてきた。
孫が着ていた白いTシャツが少しめくれた。
その後ろ姿に見えたのは、ズボンに挿していた拳銃だった。
白い肌の腰にある黒光りする拳銃は、ホンワカ気分を一瞬で吹き飛ばすのに十分な禍々しさを見せていた。

これはまさに日常の風景、ごくごく普通の人が拳銃を持ち歩いているのである。
そんな世界で、犯罪者に出会ったらどうなのだろう?

警察が男を裸にする理由

エルサルバドルは、ギャングの本場だ。
ギャングは暴力と誘拐で一般人や企業を脅し、金をゆすり取るのが商売だ。
もちろん、強盗も本業である。
面倒であれば、いきなり殺してスマホや時計を取っていくこともある。

警察がそんなギャングに対峙した時、ナイフや銃を持っている、相手が殺しにかかってくると考えるのが当然だ。
手に銃を持っているから、それを叩き落とせば大丈夫なんて思わない。
別の銃を腰に挿し、肩から吊り下げ、太ももに着けているのを予想できない警官は、早々に死のリスクを負う。
犯罪者が丸腰であることを確かめるのに、一番安全な方法は、服を脱がせるということになるのだ。

次の画像をご覧いただきたい。
これも、衣服を脱がす理由の一つであると警察は考えている。

男を捕まえてみると、エルサルバドルでも、残虐なことで知られる「18」という勢力の大きいギャンググループの刺青を入れていたのだ。
グループによるが、多くのギャングは自分が所属するグループの「ロゴ」をタトゥーにしている。
脱がせてみたら、凶悪で名高いグループのメンバーで、厳重な警備体制で警察署まで連行しないとヤバいと分かることもある。
裸にしてタトゥーを確認するというのも、警察の大事な仕事の一つなのである。

看守が囚人を裸にするワケ

刑務所も同じである。
中南米の刑務所は、すごい。


何回か、支援活動の一環で現地の刑務所を訪問したことがある。
まさに、一つの街が刑務所の中にできている。
お菓子やジュースを売ってる囚人がいる。
違法コピーDVDの売人、フライドチキン屋、酒屋もいた。
スマホも部屋の中で、結構使っていると言っていた。
その流れで、麻薬もナイフも銃も手に入る、らしい。
犯罪者の濃縮果汁のような場所をコントロールする看守の苦労、恐怖はどれだけのものか。
裸にさせて、とりあえず銃やナイフを身に帯びていないのを確認したいのも分からないではない。

裸についての感覚

無論、強制的に裸にされることは暴力と変わらない。
ただ、こちらの男性たちは、日本人より、少なくても上半身裸になることに抵抗が少ない気がする。
暑くてジメジメしたエリアが多いからだ。
Tシャツ一枚で一年中過ごすという場所も多い。

そして、街中を歩いていると、おじちゃん、お兄ちゃんが家や店の前にプラスチックのイスを出して、そこに座っているのをよく見かける。
Tシャツをめくって、腹を出してだ。
こちらでは肥満の男性が大半だから、Tシャツの下にきれいな曲線を描いたぽっこりお腹が見えるわけである。
お腹を出すと、結構涼しく感じるらしい。

ちなみに、中米の新聞が、日本の伝統的な裸祭り「蘇民祭」が後継者不足でなくなることをわざわざ報道していた。
「伝統がなくなる・・・」と悲しんでいた。
裸の男が荒ぶる祭りに敬意を持っていたらしい。

犯罪が普通と思ってほしくない

そんなこともあり、他の国よりも、中南米では安全のためという名目があれば、服を脱がせて裸にするということについて、意識が低くなってしまうのだろう。

とはいえ、そもそも、こうした問題の根本にあるのは、治安がひたすら悪いということだ。
普通の人も、自分の国は強盗、殺人、脅迫があるのは日常のことという気持ちでいる。
少しでも、安心できる国になってほしい、それがボクの願いだ。
犯罪者を裸にするしかない、こんな国から変わってほしいのだ。

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