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テス

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僕は初めから虚構していた。どんなときも、どんな場所でも。数えきれないフィクションを生み出し、そこに僕の現身をつくった。僕はそこで歩けるし、何かを為すことができる。僕は潜水していく… もっと読む
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記事一覧

⑮TES?/YES

 私はダリの前でコギトの思考をトレースし、園原とあの男をモニターしていた。しかし途中から…

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⑭あんたが眠るまでそばにいるよ/sequence

「俺たちここでおわりなんすかねぇ」  そう言った黒星の横を黒いナイフが駆け抜ける。私はぐ…

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⑬溶けているんだよ?/less

 君、といってもこの言葉は誰に宛てている訳でもないと言う事を、他でもないこの僕にまず断っ…

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⑫いしはおもいから、うちがわに、しずむ/inside

 フォガティは家出をすることにした、から始まる小説のようなものを僕は書いたことがある。そ…

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⑪潜水的病/inside

「もういいぞ」  ぷつんと切られる。 「よくやった」  以遠さんの声が上からする。僕はしば…

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⑩僕が落下してもヘアピンは浮上しない/outside

 フォガティは、フォガティだよと言った。意味が分からない。そして隠し持っていた拳銃で僕を…

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⑨観測されるあちら側/inside

 白い部屋だった。ホワイトホールがあるのだとしたらこんな感じだろう、という白さ。僕はそこにぽつんといる。そして同じようにヘッドホンのようなものがある。シンプルな造りで、丸が二つと放物線が一つ。機能美は、ある。それは認める。認めると、我慢していた吐き気が一気にこみ上げる。のどもとまでせり上がる。このとってつけたような、白いことしか取り柄の無い白さ。  だからこの空間が僕は嫌いなんだ。 「セット完了」  僕はヘッドホンのようなものをつける。これは正確に言えばヘッドホンではな

⑧紹介する自己/line

 僕は嘘をつくりだすことを生業としている。職業名はない。よく間違えられるのは小説家だけど…

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⑦海に潜られる/outside

 翌日、僕の身体からはすっかり興奮剤の余韻は抜けていて、すっきりとした気持ちのよい朝を迎…

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⑥独白される空想/inside

 何もしなくていい自由と、何かしていい自由がある。僕達はいつもだいたいそこら辺で迷ってい…

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⑤潜水問答/outside

 内臓が砕けそうだ。  痛む腹を押さえ、ぼくは園原の後に続く。 「おなか減ったの?」 「…

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④襲われる所為/inside

 それまでにジャン・ジュネの花のノートルダムを読んでいたのはなんとなく覚えている。それで…

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③潜水誘引/outside

 稚拙。。。。排泄。。。。夭折。。。。  この記号郡をぼくは妖艶だと思った。それらは僕ら…

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②される発狂/inside

 エイミーが発狂したので、川に捨てた。汚い川だった。ごみが溢れていて、彼女は何度もそれらに引っかかった。その度に衣服が削られてエイミーはぼろぼろになった。その時初めて裸のエイミーを見たと思う。のっぺりとしていた。ごみに引っかかって不安だったけど、ちゃんと流れてくれた。戻ろうとしたとき、ポケットから紙くずが落ちた。僕はそれを拾って帰る。 エイミーを捨てた帰り、僕はバスを待ちながら及ばずとも風に転ばされる。夕暮れの景色が辺りを赤く染める。風と戯れながら僕は空を見上げる。 「おにい