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小説から学んだ人生の指針。仲間を悼む人間らしい文化を通じて、よりいっそう輝く生を — 宮崎さんのおはなし

DEATHフェス開催に向けて、それぞれに想いを持ったプロジェクトメンバーをご紹介していきます。死生観に影響を与えた経験や、死ぬ前にやりたいことなど、”生と死”を中心にインタビューしました。

宮崎 敦志さんプロフィール 長崎県生まれ。親友の死をきっかけに納棺師の仕事に興味を持ち、大手湯灌納棺会社に7年、葬儀社に6年在籍して経験を積む。その後、エンバーミング会社を経てフリーの納棺師となり「みやざきメイクLaBO」を創業、2021年「えんたま」事業をスタート。エンゼルケアを重視し、遺族が故人ときちんとお別れできる時間と空間づくりに努める。地元コミュニティラジオのパーソナリティを務めながらエンゼルケアや葬儀に関する情報をセミナー等通じて発信中。

今回は「納棺師」と呼ばれる仕事に携わっている宮崎 敦志さん。納棺師とは、死後変化が始まる亡くなられた方の体を火葬日まで保つようケアをしたり、顔色整えたり、好きな服や死装束を着せてお旅立ちの支度をする、また「納棺の儀」を通して家族と亡くなられた方が心ゆくまで気持ち触れあえる時間を演出する職業人のことです。宮崎さんは学生時代から、人間の存在意義や死生観について考え探求してきたといいます。


学生時代は小説家になりたかった

実は小説家になるのが夢でした。小説を通して「なぜ人は生まれてくるのか。なぜ人は死んでいくのか。どうしたら幸せになれるのか」という問いを、探求していきたかったのです。なので学生時代は死生学や精神哲学、心理学など沢山の本を読み漁りました。中でも精神科医ブライアン・L・ワイス著の「前世療法」、同じく精神科医のエリザベス・キューブラー=ロス著「死ぬ瞬間」「人生は廻る輪のように」は衝撃を受けました。

二人の精神科医の本に共通しているのは「輪廻転生」。これらの本から「人間は死んでもそこで終わりではない」ということを学びました。その後、親友の死をきっかけに納棺会社に就職。実は今までの僕はどんな仕事をやっても全く長続きせず、恥ずかしい話3ヶ月〜半年毎に転職を繰り返していました。この仕事が20年以上も続いているのはおそらく親友が見かねて「これならお前にもできるだろ」と導いてくれたのかもしれないと思っています。
この仕事は「死は日常」。毎日亡くなられた方とその家族に会います。それらの仕事を通してさらに「生きるとは何か」「死ぬとはどういうことなのか」「幸せとはどういうことなのか」の考えを深めていきました。

死生観を深める

「死」が怖いと思う人の理由のひとつに「死んだ後、自分がどうなるのか分からない」というのがあると思います。宗教では「死んだらこうなります」という教えがあります。その教えは、死ぬ怖さから不安を癒やし、慰め和らげてくれていると思います。「あなたが生きている世界は辛いこと悲しいこと沢山あるけれど、死後の世界はすごく良いところだよ、だから頑張ろ」と多くの宗教は説いています。多くの本と多くの宗教の教えを学び自分なりの死生観を深めていくようになりました。

僕らはワクワクするために生きている

死んだ後の世界は、肉体の束縛から解き放たれ行きたい所にパッと行けて、好きな人にパッと会えて、見たい時代にパッと見に行けると僕は考えています。肉体にいる楽しさもあると思うけれど、抜け出たら、時間や物体からフリーになって、色んなことができるようになると思います。そんな世界が待っていると思うとワクワクして今からすごく楽しみです。
僕らはワクワクするために生きています。ワクワクしながら長生きして、ワクワクしながら死にたいです。

最期に食べたい金萬

秋田県のソウルフードと言われている白餡のお饅頭「金萬(きんまん)」を最期に食べたいです。秋田県は僕の人格形成に深く関わった土地。金萬が大好き過ぎて一度に100個食べたこともあります。僕が死んだ時の棺には、花の代わりにめいっぱいの金萬を詰めもらいたい。きっと火葬中に饅頭の焼けた香ばしい甘い香りが建物中にぷ〜んとする、それを想像するだけでワクワクします。

葬儀は価値体験をする場

葬儀業界に入って20年以上経ちました。つくづく葬儀は文化なんだなって深く感じます。最古の弔いに5万年前のネアンデルタール人は亡くなった仲間に花や歌で弔ったと記録があります。葬儀には色々な意味合いがあります。遺族側にとっては「大事な人がいない日常を生きていくために新しく気持ちを切り替える時間」であるし、旅立つ側は「『死ぬとはこういうことだ』と人生の後輩たちに身をもって教える最後の時間」だったりします。また葬儀は人生の集大成だったりします。「人生の卒業式」と僕はよく言います。現代社会では人の死に接し経験する機会が減っています。そのため死や葬儀について考える機会が少なく、また教える人も減ってきています。葬儀に参列される人が全員、「生きるとは死ぬとはどういうことなのか」を考えるための価値体験の場であってほしいと願います。

正直にいうと1万名以上の別れの場面に立ち会っていながら実は未だに「なぜ人は生まれてくるのか。なぜ人は死んでいくのか。どうしたら幸せになれるのか」という問いの答えを出せていないのです。
このプロジェクトを通じて、色んな死生観や考え方に触れて、自分や葬儀業界にできることを探していくと同時に、問いの答えを皆さんと探していきたいです。そして仲間を悼む人間らしい文化としての葬儀を広め「死を知ることによって、有限の生がよりいっそう輝く」そういう社会を、この仕事に導いてくれた親友のためにも、必ず実現させたい。

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