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共同代表クロストーク【後編】デスフェスで提案したい"新たな社会モデル"

高齢化社会の次に訪れるとされる多死社会において、「死」をタブー視することなく、年代や状況によらず多くの人が死と向き合い自分ごと化して捉え、そこから「今」をどうよりよく生きるかを考える「生と死のウェルビーイング」をテーマにした「DEATHフェス」を2024年4月に開催予定の私たち。
本プロジェクトの共同代表である市川望美と小野梨奈のクロストーク後編は、デスフェスを通して世の中に与えたいインパクトや「渋谷」へのこだわり、DEATHフェスに対する二人の意気込みをお送りします。(聞き手・執筆:DEATHフェスメンバー・川西真理子)

クロストーク前編はこちらから


多様な選択肢はカジュアルな対話から広がる


—— お二人のお話から、DEATHフェスのキーワードのひとつに「多様な選択肢」があると感じました。

のぞみ:私がメインで活動しているPolarisという会社では、未来における当たり前の働き方を作るっていうことを掲げています。私も出産を機に仕事を離れて、「ママさんでもできる簡単な仕事がありますよ」っていうニュアンスで仕事をくれるような人たちに出会って、すごく嫌だったんです。私たちだってキャリアを積み重ねてきたのに、「ママさん”でも”」ってなんだよと。キャリアロスとかキャリアブランクというのも、市場がそう言うだけで、私はロスでもブランクでもなく、毎日生きている。その時間を勝手にそんな風に言わないで欲しいってずっと思ってきました。当事者としても、それをただ「そうか、私たちはそうなんだ」って受け入れちゃいけないと思ったんですよね。

いろんなことに「それって本当に当たり前なの?」って問いかけながら、「そうだよね」とか「私は違うな」とかやりながら、オルタナティブな人生の選択肢を増やしたいっていうのはずっと思っています。

エンディングに目が向いたのは、さっきの母の「エンディングドレスの事業をやりたい」という話も大きなきっかけではあるんだけど、私がずっとやってきた「選択肢を増やす」とか「当たり前だと思って思考停止しない」とか、本当に自分にフィットする選択肢についてはエンディングについても言える。そこももっと自由に考えていいんだよって。りなちゃんもそういう新しい選択肢を作ることに関して、私と重なる部分もあるだろうしね。だから、単純に既存の市場における終活ビジネスをしたいわけでなく、まずはみんなと話したい、ってことなんですよね。

りな:もっとみんなで「死」についてカジュアルに話せるような空気を作っていくのがまず第一歩ですね。

—— 生きている間のことはみんな一生懸命考えるのに、死の話になると別次元になっちゃう気がしますね。

のぞみ:うんうん。結構前に、旦那さんを亡くした女性が、籍を抜いてお墓を分ける人が結構多いって聞いたんだけど、生きているうちに離婚して何か別の人生を送れなかったのかな、最後の仕返しがそれか〜みたいに思って(笑)。そういう終わり方は嫌だなとか思ったりして。生きているうちにちゃんとお互いの納得のいく関係性に移行すべきだと思ったんですよね。

—— やっぱり、死を考えることは生きている間のことを考えることとイコールなのかなっていう気がしますね。だから余計にみんなちゃんと考えてみない?って思います。

のぞみ:そうね。私がやっているライフストーリー研究では、「語りが語りを呼ぶ」っていう話があるの。誰かの生きた体験って人の心を動かす力があるし、今まで考えてもなかったことであっても、その語りの力によってみんながぎゅっとテーマに向き合ったりできる、対話の場をすごく大事にしたいって思ったんだよね。誰かが勇気を持って話すと、それに対して「実は私もそう思ってた!」とか言えたりもするし。それまで一度も考えたことがなかったことなのに、誰かから聞いた瞬間に「わかる!」とか「そうだ!」と共感できたりとか。そういう経験ってたくさんあると思っていて、そんな瞬間がDEATHフェスで生まれたらいいなって思います。

DEATHフェスが提案する新たな社会モデル


—— このプロジェクトもお二人の話に共感した人々が集まり、輪がどんどん広がっています。現時点でこういうフェスにしたいとか、こういうことを考えているとかはありますか?

りな:「よい死(414)の日」という日付は既に決まっているんですけど、このフェスをきっかけに、誰もがいつか経験するだろう死を、もっと自分ごととして捉えたり、多様な選択肢が増えたりするとよいなと思っています。と言いつつ、私もまだまだしっかり考えられているわけではないんですけどね。

ちょっと話は変わるんですが、先日プロジェクトメンバーの美月ちゃんが主催している「デススナック」に参加してきたのですが、私、結構圧倒されちゃって(笑)。

りな:15人ぐらいかな、若い方も結構いて。みんな各々の死生観を持っていて、いろんな想いや考えがあってあの場にいたと思う。最初のウェルカムクエスチョンで、「あなたは何歳で死にたいですか」っていう問いに対する答えを書くんだけど、そんなの考えたこともないし、キリがいいから100かな、とか(笑)。自己紹介のときになぜその数字なのかを説明するんだけど、中には「17歳」とか書いてる人もいて。つまり、いまはもう死後を生きている、みたいな感じ? なんだろうこの場所は⁉ ととにかく衝撃でした。

生について語るテーブル、死について語るテーブル、愛について語るテーブルに分かれていて、問いかけが書いてあるカードが3枚置かれている。それを順番にめくって、そのテーブルにいるメンバーで話すってことをしました。

のぞみ:私たちは死のテーブルにいて、「幽霊っていると思いますか?」みたいな話から、反出生主義の人の話を聞いたり、いろんな話をしたね。死に対して玄人っぽい人が多かったかも(笑)。

—— そういう場所に能動的に行く人は、きっと日頃からいろいろ調べたり考えたりしているんでしょうね。DEATHフェスはそうじゃない人にも考えてもらえるきっかけになるといいですよね。

りな:私自身は日本で堆肥葬を実現したくて、それに繋がるイベントにしたいなっていう気持ちがあるし、生と死を考えるムーブメントをこのイベントきっかけで作っていけるといいなと思っています。従来の葬送スタイルに新しい選択肢を提案して、違うインパクトを与えられたらなって思いますね。

のぞみ:まさに。葬儀会社主体な現状や、旧来型の家制度に対して新たな社会モデルの提案ができるといいなと思います。

DEATHフェスをやるなら「渋谷」しかない!


のぞみ:先日フューネラルビジネスフェア(葬祭サービス産業の総合展示会)に行ったんだけど、「素人さんがなぜ?」みたいな空気感出してる人も結構いた気がする。「なぜエンドユーザーがノコノコここに?」みたいな感じで(笑)。いかにも、業界の人たちって感じだったの。最初は「DEATHフェスにお誘いできればいいなー」と思って行きましたが、そんなこと口にできる気配でもなく。でもその中にも、「自分たちの業界はもっと開いていかないといけない」とか「業界の人が自分の声に耳を傾けてくれないなら、俺は直接エンドユーザーに話しかけますよ!」という方もいて、そういう方はお名刺をくださるし、思い切って「DEATHフェス」の話もできました。この業界、「葬儀」「遺族」以外のタイミングで接する機会って、本当にないんだなあと感じました。

また、地方の市議会議員やお寺の人とも喋ったりししてるときに、地方におけるお寺の後継者不足だったり檀家が減っていくことによる経営難だったり、日々暮らしてはない空き家だけど仏壇が置いてあるから誰かに貸したくない、という空き家問題にもなにか接続できるかもとか、成年後見制度が進んでいないけどそこに何かつながっていけそうみたいな話がでたり。
死って個人の話でもあるけれど、家族の話でもあるし、地域社会の話でもあるなと感じたんだよね。

とは言え最初は一人ひとりの人生の選択から始まる話。まずはそこから始まって、やがて社会全体の文脈が変わっていくようなものにしたいなって思ったんです。ムーブメントが大事だと。そうなると、なるべく多様な選択肢を受け入れる土壌がある場所で、いろんなことを面白がってくれる人たちと一緒にできる場所でやりたくて、だとしたら渋谷だろう!と思ったのがBeyondersに参加した経緯です。

—— 渋谷という場所先行だったんですね!

のぞみ:そう。DEATHフェスをやるなら渋谷からでしょう!みたいな。渋谷っていったらパートナーシップ証明制度の先駆けであり、多様性を軸にした政策をしている、象徴的な街だという印象が強くて。ソーシャルイノベーションとか、官民連携のオープンイノベーションなど、社会課題を官民連携で取り組んでいる、新規性や可能性に理解が強い印象もあって。都会でやるなら渋谷だろうって気持ちが前々からあった。テック系の人もたくさんいるし、DEATHテックとして巻き込めたら面白そうですよね。

渋谷で実現するいい方法がないかなと思ってるときに、元々繋がりのあったETIC.がBeyondersという面白そうなプロジェクトをやっているのを見つけてたので、まずはここで旗を立て、そこに集まってきてくれる人たちと一緒に動かしていこうと思ったんです。「生煮えのアイデア歓迎」にも背中を押されました。



—— 業界の旧体質みたいなものを壊せるのも若者だったりしそうですし、そういう意味でも渋谷は私達がやりたいことが叶えられそうな街ですね。

りな:100BANCH(パナソニックが開設した若者のプロジェクトを支援する渋谷の実験区)にもDEATH系のプロジェクトが結構あると聞いたので、なにかつながることができたら嬉しいですよね。

—— 盛り上がりそうでワクワクします!最後に、DEATHフェスに向けた意気込みをお願いします!

のぞみ:みんなのいろんな想いを持ち寄って対話することで、新しい発見が生まれてワクワクする場になればいいなとも思っています。
いろいろエンディング周りを調べていて思ったのは、解消できなかった気持ちや、グリーフケア(遺族への寄り添い)もすごく大事だっていうこと。古代から亡くなった人に対する悲しみや弔う気持、喪失感を抱えながら人類は生きてきているということも大切にしたい。楽しいことばかりじゃなくて、モヤモヤと口にできなかったことや痛みも持ち寄れたらいいなって。カジュアルな場にはしたいんだけど、ただ楽しいことをチャラチャラとやるようなフェスにはしないということは伝えたいです。それこそ、自分もつい先日父親を見送ったばかりでもありますし、真面目に考えたりもしているので、そういう温かい場になるといいよねと思っています。

りな:そうですね。変に受け取られたくないなあとは私も思っています。今は「死」というテーマはちょっと受け入れたくないもいると思うし。私も、のぞみさんと同じく「選択肢を増やす」というテーマにとても思い入れがあるので、このフェスをきっかけに、「こんな選択肢もあるんだ!」とか、「考えたこともなかったけど、考えてみようかな?」とか、きっかけになるような心温かいイベントにしたいです。
今回集まってくれたメンバー1人ひとりも、想いを持って自分のサービスや仕事をもちながら関わってくれていると思うので、みんなにとっても良い機会になるプロジェクトにしていきたいなと思っています。

のぞみ:そうだね。どさくさに紛れてサービス開発ができたりしても面白いかもしれないしね。このプロジェクトをきっかけとして、新しい発想が湧いてきたり、いろんなアイディアが浮かんじゃってワクワクしたり、みたいなことも大切にしていきたいなって思っています。いろんな人が興味を持ってくれているし、幅広いイベントにしたいね!

聞き手・執筆:川西真理子
プロフィール/1985年生まれ。小学生の頃からパソコンに触れ続け、趣味で様々な個人サイトを制作。新卒から10年間のITエンジニア経験を経て、大手プログラミングスクールの運営に携わる。2022年フリーランスとして独立し、パソコン講師やWeb制作代行を行う。出産を機にママ向けIT教育事業に力を入れ始め、2023年スタンスドット合同会社を設立。

ママ向けオンラインITスクール MOMIT(マミット):https://momit.jp/



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