見出し画像

「Spotify広告」の考察



1. なぜアイデアとして優れているか?

人を使って音の線に見立てている


Spotifyは、スマホがあれば、いつでもどこでも音楽やラジオなどをアプリで聞くことができるサービス。
このイメージを、様々なシチュエーション展開のあるグラフィックと、スペクトラムアナライザ(コンポの画面などについている音楽に合わせて波打つ棒)をかけ合わせたビジュアルで演出しており、人をアナライザに見立てることが、興味を引く1つのポイントとして機能している。


2. ビジュアル表現のよさは何か

複製されたモデルをあえて使い、音の線の機械的な表情を演出している

このビジュアルの面白さを引き立たせている要因は、見立てていることもあるが、表現としてモデルをあえて「複製して配置している」ことに意味があると思う。

通常、たくさんの同じ人物を「複製」することは、「コピペしている=手を抜いている」雰囲気が出てしまい、チープな印象を与えてしまうことも多い。

サブカルの文脈にあるグラフィックではよくある手法ではある。例えば、水曜日のダウンタウンやジョイマンのモスバーガーキャンペーンサイトなどは複製が一種のグラフィック手法として起用されている。

今回は、スペクトラムアナライザのイメージを人を使って表現する上で、複製がそのイメージの1つの演出となっているのではないかと思われる。

例えば、複製でなく、1つとして同じ表情のないモデル写真を使ってしまうと、モデルの様々な表情を切り取っただけのビジュアルに見えかねない。

寸分狂わず複製されるというのは、機械が得意な部分なので、あえて人を複製することが、機械的に見せることに繋がり、=スペクトラムアナライザを直感的に想起させたのではないかと思う。人を波状にするという構図も特徴を捉えている。

さらに、複製感を出すために、様々な角度や表情にすることで、同一のものとそうでないものを区別できる造りとなっている。

カラーは、ベースカラーと補色をバランスよく配置することでポップさが際立っている。
また、「音を、グラフィックを使って楽しそうに表現する」という広告表現は、Spotifyのブランドイメージをポジティブなものにしている。かつシリーズ化したときに、違うカラーを使いながら統一感のあるトンマナを感じられる。


3.批判的視点

左上と左下のヘッドフォンとイヤホンをしている人は、間接的に音を想像させる要素を取り入れた方がクリエイティビティがもう1段階上がったのではないかと考える。
例えば、右上のベッドから起きるものは「目覚まし時計」を想像させ、右下の傘は「雨音」を想像させるので音の連想ができるが、左上と左下は「音楽を聞いている」という直接的な表現であるため、面白さに欠ける。
例えば料理や掃除などの日常風景に溶け込む音を想像させるクリエイティブにすると、間接的に音を表現するという一貫したクリエイティブになったかもしれないと思う。


4.個人的な感想


見立てにも色々とあるが、その中でも音という目に見えないものをどう形にするかが難しいところを、音=音の波 という形に変換し、
それを人を使って表現するというところにアイデアがあり、オリジナリティのある表情のクリエイティブとなった要因でもあると思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?