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読書感想文:最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―

先日、1枚の絵をきっかけに芸大を目指すようになった高校生を描くアニメ「ブルー・ピリオド」を観ました。アニメの中では東京藝大美術学部への入学試験の様子が詳しく描かれ、全く知らなかったその世界、「東京藝大」がとても印象に残りました。

そんな時、目にしたのがこの本です。タイトルに惹かれて読んでみました。

面白いけどそれだけじゃない

本の内容は、主に藝大生へのインタビューで構成されています。文章はとても読みやすく、語り口も親しみやすくて、どんどん読んでいけました。

東京藝大の美術学部と音楽学部のことが、それぞれほぼ均等に書かれています。東京藝大に音楽学部があることさえ知らなかった私は、隅から隅まで興味津々で読みました。

いくつか印象に残った点を引用します。

  • 『やりたいからやっているのではなく、例えば呼吸することを避けては通れないように、気がつけばモノを作ってしまう』

  • 『音楽の楽譜は芝居の台本のようなもの。書いてあるセリフをただ棒読みしても芝居にはならない』

  • 『アートとは、知覚できる幅を広げること…』『アートはひとつのツール、人が人であるための』

インタビューの内容そのものも面白いのですが、著者の感想や考察に説得力があり、とても読み応えがあります。

物づくりや芸術に人が惹かれるのはなぜなのか?、アートとは何か?について生の声を聞くことが出来、実に興味深い読書となりました。

「ははー、変なのー」で終わらない、ただ面白おかしく書かれたものではなく、真面目な探究心で真摯に取り組まれた著作です。この本を読んで、東京藝大は秘境ではあるけれど、遠い別世界ではなく、地続きでそこにあるリアルな世界であると感じることができました。

この本を元にしたコミカライズ版も出ています。


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