見出し画像

読書感想:「こじらせ美術館」

ゴッホに代表されるような「こじらせ」た人生を送った画家を取り上げ、「人はなぜ絵画を描くのか」「人はなぜ絵画を愛するのか」に迫ろうとする真面目な本です。

本文ではカラヴァッジョ、クリムト、モディリアーニなど12人の作品と、そのこじらせた人生を紹介しています。 簡潔に22人の画家のこじらせ具合を紹介したコラムや、奇妙なエピソードを持った 6作の絵画とその作者を紹介した「こじらせ名画館」というコーナーが掲載されていて、それぞれに読みごたえがありました。

ただ、タイトルを見て、もっとぶっとんだ本と想像していたので、意外とおとなしい内容だったのにちょっとがっかりしたのも正直なところ。

ルネサンス期、印象派、エコール・ド・パリそれぞれでの、恋人、仲間、影響を受けた与えたなどの関係が図示された「こじらせ人物相関図」というコーナーもあるのですが、それぞれの詳しい説明はなくてそこも少し残念。 相関図自体が無ければきっと残念に感じることもなかったと思うので、なんだかもったいない話です。

挿絵は画家の姿や作品をイラストで描いたものが掲載されています。 オリジナルの作品の掲載はありませんが、この点には特に不満は感じませんでした。

コラムで紹介されていた贋作者メーヘレンの、画家を目指すも挫折し、誰にも認められない恨みを贋作作りにぶつけ、最終的には贋作として描いたものが、今では正式に「メーヘレンの作品」として美術館に展示されているという話が痛快で、これぞこじらせ美術!こういう話をもっと読みたいなと感じました。

Wikipedia に載っている、ピカソ風の絵を「たとえ贋作を描くとしても劣った奴の贋作は描かない」と言って破り捨てたというエピソードのこじらせ具合も素敵です。

Wikipedia ハン・ファン・メーヘレン:20世紀で最も独創的・巧妙な贋作者の一人

様々な作家の「こじらせ人生」の他、いままで知らなかったエゴン・シーレという作家のこと、ゴーギャンのルーツがインカであることなどの知識を得られたのが、今回の読書の収穫でした。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が面白かったらサポートしていただけませんか? ぜんざい好きな私に、ぜんざいをお腹いっぱい食べさせてほしい。あなたのことを想いながら食べるから、ぜんざいサポートお願いね 💕