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【ヤクルト】トレードから1年が経って

こんにちは。でぃーだ(@Dee_bbyS)です。

今回は前置きもなく早速本題。

昨年3月1日に行われた田口麗斗廣岡大志のトレードから1年が経ちました。あまりトレードの多くないNPBというリーグにおいて、過去のトレードの中でもかなりインパクトが強いものであったため、私自身も何度かnoteに記してきました。

(特に取り上げている過去2作はこちらから)

今回はその3作目として、
様々な観点からトレードからの1年間を振り返っていこうと思います。

※本noteはちょうど3月1日に出そうとしていたのにこの時期になってしまったため、書き出しの文が若干おかしい事には触れないでいただけると…。

田口麗斗

まずは読売ジャイアンツから東京ヤクルトスワローズに移籍した田口麗斗について書いていきます。

当時の状況を改めて簡単に振り返ると、キャンプ終盤の実戦にて先発候補であった原樹理,金久保優斗,高橋奎二,高梨裕稔,木澤尚文といった面々が軒並み結果を残せず、オフから言われていた投手陣の不安が改めて露呈した中で発表されたトレードでした。

田口麗斗も近年は一時期ほどの目立った成績は残していなかった上に、この年のキャンプを途中離脱していた…といった懸念材料は少なからずあったものの、若くして実績十分な投手が加わることはチームにとってはとても大きかったです。

また、このトレードに関しては「取材をしていくと持ちかけたのは巨人の方だったことが分かった。」という言葉もあり、この話は持ちかけられたヤクルト側にとっても(投手状況だけを鑑みれば)まさに渡りに船といったような提案だったのではないでしょうか。

2月23日に沖縄・浦添で行われたヤクルトと巨人の練習試合。試合が始まる直前から終了前まで一塁側のスタンド上段でヤクルト・小川淳司GMと巨人・大塚淳弘副代表がずっと何かを話しているのを目撃した。

「そこで副代表とGMが話したんじゃないの? そうでしょう? それで色々と両者が考えたんじゃないですか? で合意に至ったのが2日前(2月28日)。トレードなんて短いスパンで決まるものは決まる」(原監督)

https://number.bunshun.jp/articles/-/847251


移籍発表後、3/6の地元・広島戦でヤクルトでの初実戦をこなすと、
順調に調整も進んで開幕ローテ入り。シーズン中盤までは小川泰弘とともにローテーションの柱として登板を重ねました。

シーズン終盤になるとチーム事情も重なり、リリーフ転向して主に対左火消しとしてフル回転。ブルペンでは持ち前の明るさからムードメーカーにもなり、2年連続最下位のチームを日本一まで導きました。


そんな田口麗斗の2021年シーズン成績はこちら。

33試合(17先発,16中継ぎ) 5勝9敗 100.2回 防御率4.02
奪三振81 与四死球30 QS率47.1% WHIP1.53 WAR2.3

WAR2.3はチーム投手内3位(1位奥川恭伸3.7, 2位小川泰弘2.9)と、日本一を掴み取ったチームにおいて、その価値は十二分にあったといえるでしょう。
その一方でWHIP1.53被打率.310は共に12球団の投手(※90イニング以上)で最下位と、チームへの貢献とは別として田口麗斗という個人の成績としては低調と言っても過言ではない成績でした。

結果的に日本一になったため、WARを鑑みても(少なくとも)ヤクルト側にはプラスのトレードとなったわけですが、ここで改めて田口麗斗の1年間を先発期とリリーフ期に分けて、少し詳しく見ていこうと思います。


先発期(~9/5)

9/5まで務めていた先発での成績はこのような感じに。

17先発 87.2回 4勝8敗 防御率4.11
被安打114 奪三振65 与四死球25 QS率47.1% WHIP1.56

チーム3位の17先発をこなし、6月中旬まではQS率も7割近くと高く安定したピッチングを続けながらも援護が噛み合わない試合も多くありました。
しかし、6/29以降は5試合連続でQSを達成できないなど、序盤から打ち込まれる試合が増えたこともあってか、先述の通りリリーフ転換となりました。


この配置転換については、2軍調整をしていた原樹理高橋奎二高梨裕稔といった投手たちが、問題なく1軍で先発できるような状況になったということもその判断に至った大きな要因だったことでしょう。

結果的に原樹理(9試合 3勝1敗 防御率2.31)や高橋奎二(14試合 4勝1敗 防御率2.87)がシーズン終盤やポストシーズンの大事な試合での先発で大きな役割を果たすことになりましたが、
序盤は先発投手のコマ不足に悩まされていたため、1軍ローテーションを守る形で救ってくれた田口麗斗の存在があったことを忘れてはいけませんね。


また、昨年の先発での球種構成を見ると、ストレートとスライダーを中心に7球種を巧みに投げ分けている様子が伺え、まさに先発投手らしい構成と言えるでしょう。

データ・画像は悟@データと野球(@bb_satoru)さんより提供

一方で先発通算被打率.317,被OPS.787は気になる点。
また、(割合の少なかったツーシームを除き)どの球種でも.290以上の被打率は通年ローテーションを回すにはやはり厳しいものがありました。

データは悟@データと野球(@bb_satoru)さんより提供

巨人の守備(2021年 チームUZR22.3)とヤクルトの守備(同 -22.7)には正直なところ数字以上の大きな差がある影響もありますが、
先発投手として1年間ローテーションを守るためには、全体的に被打率を下げることで無駄なランナーを背負わない(≒WHIPを下げること)が大きな課題になってくるのではないでしょうか。

元々は2年連続で160回超えで規定投球回に達した実績もあるため、先発の際にはチームを支えるイニングイーターとしての役割も期待したいですね。


リリーフ期(9/11~)

9/11からはリリーフに転向し、成績はこのような形になりました。

16登板 13回 1勝1敗 防御率3.46
被安打12 奪三振16 与四死球5 WHIP1.31

これだけで判断すべきではないですが、リリーフ防御率3.46はお世辞にも優秀な成績とは言いがたいのは事実です。

一方で、10月にあった天下分け目のGT神宮6連戦においての糸井嘉男との因縁(?)になった火消しもありましたが、シーズン中盤までブルペンを支えた左の坂本光士郎を欠く中で3連投をこなすなど、見た目以上の負荷と成績以上の貢献があったこともまた事実でしょう。


リリーフでは先発の時のように多くの球種を使い分けるスタイルではなく、
ストレートとスライダーで投球の2/3以上を占め、それに加えて対右のツーシームと対左のカットボールに球種を集中させたのは、分かりやすく”リリーフ仕様”と言えるのではないでしょうか。

データ・画像は悟@データと野球(@bb_satoru)さんより提供


データを見ても、被打率.245,被OPS.704は先発時より優秀な数字です。
そもそものサンプルが少ないことは留意すべきでしょうが、各球種の球速が5km/h程度上がった影響か、各球種のWhiff率空振り率も10%程度伸びており、先発の時とはまた違った”田口麗斗像”が見えました。

データは悟@データと野球(@bb_satoru)さんより提供

特に、スライダーカットボールは高速化したこともあって、特に左打者にとっては捉えることが困難なボールとなっていたように感じます。


これほどまでに先発投手とリリーフ投手としての顔を上手く使い分けることが出来るとは正直思ってもいませんでしたし、
トレードで獲得する際にもフロントの想定にあったであろう、先発もリリーフもこなすことが出来る器用さが光ったと言えるのではないでしょうか。

日本一に輝いたチームにあって、見た目の成績以上の貢献があったといっても全く差支えがないな、と改めて感じました。


廣岡大志

一方でヤクルトから巨人へと移籍した廣岡大志
折角の機会ですのでこちらにも触れておこうと思います。

昨年は1軍と2軍を行き来しながらも、大野雄大(中日)や今永昇太(DeNA)からそれぞれ2本ずつホームランを放つなど”左エースキラー”として一定の爪痕を残しました。

また、古巣ヤクルトとのCSファイナルでは、主砲・岡本和真を欠くなどして低調な打線の中で1人気を吐く活躍をしていたのも印象的でした。

しかし、1年間を通じた成績面としてはこちらも正直物足りない成績であり、確固たるポジションを掴むまでには至りませんでした。

.189(106-20) 5本 15打点
出塁率.256 長打率.387 OPS.643 WAR-0.7

ヤクルト時代の過去2年ではWARでもプラス(2020年:0.6,2021年:0.8)を計上していたものの、2021年は一転マイナスとなるなど、こうやって見ても大きくチームに貢献することは出来なかったと言えるでしょう。

そんな中で迎えた今年はオープン戦からアピールを続けるも、オープン戦途中で離脱…。


オープン戦終盤で離脱から復帰すると状況が急変。
絶対的レギュラー坂本勇人が左内腹斜筋筋損傷で故障離脱し、オープン戦最終戦ではショートでのスタメン起用となりました。

原監督のコメントにもあるように、坂本勇人は開幕には間に合わないとのこと。巨人としては大ピンチですが、相手の開幕投手が廣岡と相性の良い大野雄大ということもあり、オープン戦のスタメン起用といい、廣岡大志が開幕スタメンを掴む可能性は高いのではないでしょうか。

…とここまで書いて思いましたが、2008年からずっと開幕戦スタメンを務めてきた坂本勇人に替わり、廣岡大志が2022年の開幕スタメンショートを掴み取る(かもしれない)というのは、なんとも凄い事ですよね…。


坂本勇人は既にNPB史に残る名ショートであり、その実力が衰えたとは今でも感じておりませんが、一方で徐々に年を重ね、ショートというポジションにおける耐久面に不安が出つつあるのも事実でしょう。

中山礼都湯浅大増田陸などプロスペクトも多い巨人のショートですが、
”ポスト坂本勇人”として誰が抜け出すのかは一野球ファンとしても気になるところですし、そのチャンスはこういったところから巡ってくるのではないかと感じております。


2022年、そして今後に向けて

話を田口麗斗に戻します。

2022年はキャンプから投げ込みを積極的に行うなどアピールをしていましたが、キャンプ中盤で離脱。実戦復帰以降はリリーフとして調整を続けており、おそらくこのままリリーフとして開幕1軍登録となるでしょう。


今年のキャンプの際には「色んな選択肢を持てるのが彼の強み」と高津監督も語っていましたが、これはまさに先の項でも触れた田口麗斗という投手の器用さを表す言葉でしょう。

そして、これは完全に個人的に…ですが、昨年の田口麗斗の姿は個人的にはドジャース時代の前田健太に重なるものがあるな、と思っておりました。
チームとして貢献を最大化するためには、LAD前田健太や昨年の田口麗斗のように、序盤は先発でイニングを消化しつつ、終盤にはリリーフで…といった起用が望ましいのでは、と内心感じておりました。


しかし、一方で気になるのは田口麗斗FA問題

若いころから1軍で結果を出し続けてきたこともあり、FAカウンターによると国内FA取得まで残り1年122日、順調に行くと2023年オフにはFA権を取得することとなります。
現在は年俸7,000万円(推定)で日本人9位となり、いわゆるBランク相当です。

チームとしては、器用にあらゆるポジションをこなすことから、いるととても有り難い投手であるのは間違いないのです。しかし、契約更改でのコメントにもある通り、本人の目標は先発で、そして200勝とのこと。

 来季へ向けては「毎年ずっと言っていますけど、このプロの世界に入ってきて一番の目標は200勝すること。そこの夢の軸がぶれることはないので、先発で勝ちたいというところはやっぱりあります」とこだわりを吐露。


昨年のシーズン前にはヤクルト先発陣の層は薄く、先発ローテーション投手として三顧の礼で迎え入れられましたが、1年で想像以上の整備が行われ、
現時点でも万全とはいえないものの、田口麗斗が先発1本で調整できるかと言われれば良い意味で少し疑問符が付くようなチームになりつつあります。

その中で田口麗斗自身も「(先発と中継ぎの)両方出来るのは12球団探してもなかなかいないタイプだと思っている。」と語ってはいますが、
先程例に出した前田健太のように、200勝や先発投手に強いこだわりを見せるのであれば、(NPBでトレード要求は少し考えにくいため)本人がFA権を行使して他球団でのプレーを模索する可能性も否定できません。

※ちなみに下の記事は前田健太がドジャース→ツインズへとトレードされた際のもの。チームと個人の想いが複雑に絡み合う様子が伺えます…。
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ジョエル・ウルフ代理人は、ド軍のフリードマン編成本部長に前田の意向を伝えた。
 「一番はドジャースでフルタイムの先発投手であること。そうでないならトレードしてほしい」
しかし、この時点でド軍に前田を放出する気はなかった。理由はシンプル。「健太がいた方が良いチームだから」。

https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2020/03/16/kiji/20200315s00001007493000c.html


ヤクルトというチームは世間が思っているほど貧乏球団ではないものの、
一方で資金力が莫大なチームでもないため、今年オフにFA権取得予定の西浦直亨と共に、選手自身は勿論、球団としても様々な判断が求められることになりそうです。

2021年日本シリーズ第3戦にて


持ち前のユーティリティ性であらゆる面でチームに貢献できること、投手陣のムードメーカーであること、日本一を共に達成したメンバーであること、更には他球団を経験した視点からチームへの改善要求を出来ることなど、
個人的にはスワローズに残って欲しい気持ちしかありません。

現時点で在籍はたったの1年ではありますが、スワローズに与えた影響はとても大きいと感じていますし、トレードで来てくれたのが『田口麗斗で本当に良かった』という気持ちでいっぱいです。


しかし、田口麗斗自身もトレードを経験して感じることが沢山あったはず。
FA権を取得した際には、一選手としてこれからどのようになっていきたいのか考え、その末に自分や家族が納得のいく答えを出してくれることを願っております。それがスワローズに在籍することであれば尚嬉しいですね。



最後に

どちらの選手もチームに愛されていたため、トレードの際には多数の惜しむ声が聞こえました。その証拠に、5月にこのnoteを書いた際には、巨人ファンの方からも多くの反応をいただいたことで改めて思い知らされました。


どちらかと言えば短期的な視点で田口麗斗を獲得し、結果としてその年に日本一にまで上り詰めた東京ヤクルトスワローズ。
一方で、どちらかと言えば長期的な視点で廣岡大志を獲得した読売巨人軍。

先ほど載せたnoteでも書きましたが、
どちらが得した/損したの視点で語られがちなトレードですが、理想はどちらも得したWin-Winトレードであることは言うまでもありません。

ーーー

1年が経って改めてトレードを振り返ってみましたが、
全てが終わって振り返った際にこのトレードがあって良かったと感じられることを心から祈り、本noteの締めとしたいと思います。


<Special Thanks>

・図表,データ提供悟@野球とデータ@bb_satoru)さん
 →今回のテーマに合わせてデータ提供いただきありがとうございました!


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