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第1章 VII 少しバレエ感覚で呼吸運動を-上肢、肩甲骨を使った捻り呼吸法Bodywork VII-1)旋遙:身体を吸気で閉じる、身体を呼気で開く-“Open & Close”理論の理解

息を吸いながら上半身を90度ひねって左側を向き、両手を手首を立てて息を吐きながら前後方向に開く。
ここから上半身を180度反対側へ回すと同時に、息を吸いながら両手は胸の前で交差させる。そしてその姿勢のまま、両手をゆっくりと前後方向に開きながら息を吐いてゆく。手首は立てている(リンクhttps://www.youtube.com/watch?v=vvfL8QpMJyk)。
こうした身体の“Open & Close”の感覚は西野先生が初期の1985年以前より述べている重要な意味をもつBodywork稽古である。

西野先生は「クローズとは、身体を閉じるということ。息は細く長く吸っている。この時エネルギーが身体にたくわえられる」と述べている(西野流呼吸法、p26、講談社、1987)。

息を吐き終わったら、今度は逆方向へ上半身を回転させ、両手は胸の前で閉じながら細く長く息を吸う。続いて再度息を吐きながら両手を前後方向に開いてゆく。

両手を胸の前で交差させ、息を吸う動きは、実際にやってみると、上半身を閉じてゆく感覚を持つ。そしてゆっくり両手を左右に開ながら息を吐くと、今度は上半身が開くような感覚を持つ。

息を吸いながら両手を胸の前で交差する。この時は肩甲骨を背中で左右に広げている。
逆に両手を開きながら息を吐くと、肩甲骨を背中でくっつくぐらい閉じていることになる。

普通の呼吸を考えると、息を吐いているときは肩甲骨を開き、息を吸うときは肩甲骨を閉じる動きを無意識にやっている。ラジオ体操の深呼吸として、腕を開いたり、閉じたりする時の呼吸もこれと同じである。
しかし西野流呼吸法での呼気、吸気と腕の動きは、こうした我々の通常の動きとは逆である。これが効果的な体幹筋群(ことに先に述べた一番背骨に近いMMCm支配系筋群)のストレッチになっているのでないか?バレエを知る西野先生のオリジナルである(タイトル図参照、西野先生の身体論形成にバレエの動きは大きく取り込まれている)。

さらにこの“Open & Close”呼吸そのものは、胸式呼吸というより腹式呼吸の要素がある。手首を立て、両手掌を押しひらを開きながらながら息を吐くと、腹圧がかかってゆく(身体の捻りにより腹圧がかかりやすい)。
呼気の時に腹圧をかけるのは座禅の呼吸と同じである。すなわち丹田が鍛えられる。

この呼吸は不思議だ、生理的意味は何だろうと思いながら、稽古してきた。
納得したのは2018年、Active expiration(能動的呼気)を知った時である。Breathing mattersというタイトルのNature系総説誌に記載がある(リンクhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29740175/、なおこの論文はPMCで全文読むことができる。もちろん英文だが、現在はGoogle Chromeを使えば日本語に自動翻訳できる時代である)。また別途エピソードで述べたい。

さらに最近、ヒトにおける進化の旧い重要な体幹筋群であるMMCm系筋群(背側椎体付着筋群)とMMCl系筋群(腹側呼気系体幹筋群)を理解した。旋遙とはこのMMCm系筋群を吸気時に、MMCl系筋群を呼気時に、一呼吸で同時に活性化するBodyworkである。
言いかえると旋遙の稽古は、息を吸いながら回旋(捻り)で自分の軸を育て、息を吐きながら丹田を育てる(筋肉に圧をかける)という動きでもある。

次に左右の回旋を、姿見があれば鏡を見て、身体の軸を観察する。
回旋する上半身から下肢へ、自分の軸はキッスリと通っているか?
身体軸は、華輪等による身体の「ほどけ」が徐々に進めば、不思議に身体の中に現れてくる。
「ほどけ」とは、体幹筋群が動的にバランスがとれた状況とでも表現できるか?身体軸感覚と身体の「ほどけ」感覚は裏・表の関係にあるようだ。

そうした時、自分でも体軸を感じることができる。
体軸とは、決して固定したものでもないし、静的なものでもない。
この体軸感覚が次の「対気」で相互の体軸に働きかけあう稽古となる。

体軸感、体軸に沿って昇降感等もエピソードで議論したい。

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