貫和敏博"Project DeepBody"

我々の身体には深い進化が刻まれている。 通常は随意である運動の背後に旧進化運動系が潜む…

貫和敏博"Project DeepBody"

我々の身体には深い進化が刻まれている。 通常は随意である運動の背後に旧進化運動系が潜む。 エネルギー溢れるbuilt-in circuitの深い身体(DeepBody)。 東洋伝承の呼吸(運動)はこのDeepBodyを開放。 本noteは医学生理・人間活動の広範な可能性を探索。

マガジン

  • DeepBody:新規論文から考える

    このnoteは東洋系Bodyworkとして西野流呼吸法を解説しています。 東洋系操体は呼吸法、ヨガ、太極拳、坐禅など西欧医学生理では理解不能です。 本マガジンは新規論文を紹介して、この深く旧い、しかしエネルギー溢れる未踏の領域への21世紀のアクセスを考えます。 This note introduces Nishino Breathing Method (NBM) as an oriental bodywork. In this magazine, we will consider the reality of the DeepBody inherited from the East, which is an old, yet energetic, fundamental and unexplored place in our body.

  • エピソード集

    呼吸法Bodyworkは身体の中の不随意システムとの付き合い、それを自由に使うという稽古です。 不思議な稽古や、不思議な概念が多数あります。これを折に触れて説明するエピソードをまとめたものです。 リンクもどんどんします。

  • 西野流呼吸法:こころをからだに繋ぐ呼吸法Bodywork

    「西野流呼吸法:こころをからだに繋ぐ呼吸法Bodywork」。 医師としての著者が30年以上続けるBodyworkを、実践者目線で、いままで書き溜めた文書を発信していきます。呼吸法という名前で誤解されますが、Bodyworkとして「身体を習う」のです。どんな身体を習うのか?手足は自由に動くのに何を習うのか?我々の身体は進化の建て増し構造!その最深部の身体は随意ではアクセスできない。そのアクセスを呼吸法Bodyworkで学びます。

  • noteを開始するにあたって

    ”Project DeepBody”という耳慣れないnoteをはじめます このマガジンではいくつかの背景を説明します I'm going to start with an unfamiliar NOTE called "Project DeepBody" and give some background in this magazine.

最近の記事

新規論文紹介③-3:III. Primaxial/ Abaxial筋群は西野流呼吸法「対気」の身体反応をいかに説明するか? 本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合 Homma S et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

さて福島医科大学グループ、本間らの論文の紹介の第3回目である。 前2回は以下を参照 本間らの論文紹介①、本間らの論文紹介② この論文の重要さを再度手短に繰り返しておく。 我々は直立歩行ができ、手・足は随意に動くと思いこんでいる。 しかしどうも随意ばかりでないシステムが我々の内部に存在する。 私自身この事実を自覚したのが、西野流呼吸法「対気」で相手のシグナルへの不思議な身体反応を経験してからである。不思議であった現象が、2020年、ようやく一つの考え方として、その理由が分か

    • 新規論文紹介③-2:II.Primaxial/Abaxialという体幹筋群は、人の全身にいかに分布しているのか?本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合 Homma S et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

      このnote記事は、Primaxial(軸近)、Abaxial(軸遠)という体幹筋群構造、言い換えれば体幹という全身運動体の形成が、そもそも受精3週後の脊椎動物の胚構造の中にその原点があることを、2000年前後からの新たな身体研究展開として記している。今回は3回連続の2回目である。(前回はリンクhttps://note.com/deepbody_nukiwat/n/n07b5f7633437) Primaxial/Abaxial筋群構造の祖型例えばヤツメウナギの構造は、その

      • 新規論文紹介(3):I.Primaxial/ Abaxialという体幹筋群分類の進化・発生学的意味   本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合Homma S, et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

        新規論文紹介(3):I.Primaxial/Abaxialという体幹筋群分類の進化・発生学的意味 Homma S, et al: A three-component model of the spinal nerve ramification: Bringing together the human gross anatomy and modern Embryology, Front Neurosci. 2023: 16: 1009542. doi: 10.3389/fnin

        • Sten Grillnerの総説論文:運動制御の現在の原理:脊椎動物の運動を特に参照して 補遺:Subcortical領域に繋がる呼吸・歩行CPG

          新規論文紹介(2)として、Grillnerの脊椎動物運動系の最新理解を紹介し、我々ヒトは二系統運動系で生きていることを述べた。 このうちの錐体外路系と考えられる、大脳基底核/延髄/脊髄CPG系のシステムは、東洋系bodyworkで見られる不思議な動きや反応を説明する可能性を、筆者の仮説として紹介した。 この錐体外路系運動システムは、脊椎動物中枢神経系の一階部分、すなわち皮質下領域(Subcortex)のシステムであり、いわゆる本能として生存に必須の、built-in cir

        新規論文紹介③-3:III. Primaxial/ Abaxial筋群は西野流呼吸法「対気」の身体反応をいかに説明するか? 本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合 Homma S et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

        • 新規論文紹介③-2:II.Primaxial/Abaxialという体幹筋群は、人の全身にいかに分布しているのか?本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合 Homma S et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

        • 新規論文紹介(3):I.Primaxial/ Abaxialという体幹筋群分類の進化・発生学的意味   本間他:脊髄神経分岐の 3 要素モデル: 人間の肉眼的解剖学と現代発生学の融合Homma S, et al: Front Neurosci. 2023: 16: 1009542.

        • Sten Grillnerの総説論文:運動制御の現在の原理:脊椎動物の運動を特に参照して 補遺:Subcortical領域に繋がる呼吸・歩行CPG

        マガジン

        • DeepBody:新規論文から考える
          8本
        • エピソード集
          36本
        • 西野流呼吸法:こころをからだに繋ぐ呼吸法Bodywork
          27本
        • noteを開始するにあたって
          9本

        記事

          DeepBody:新規論文から考える(2):Sten Grillnerの総説論文  Current Principles of Motor Control, with Special Reference to Vertebrate Locomotion 運動制御の現在の原理-脊椎動物の運動を特に参照して

          Sweden、Karolinska研究所のGrillnerの総説である。 彼は1970年代より、ヤツメウナギをモデルに動物の運動解明に取り組んできた。真の意味の権威である。 この総説の出だしは、筋肉に関しての英国Sherrington卿の言葉から始まる。「動くとは何か?」、すべては筋肉細胞内の分子機構に戻るが、一方それを制御するものは神経系である。その運動への神経系が我々の身体には二系統ある。そのConceptを明示したのが本総説である。この点を重視して彼の総説を解説する。

          DeepBody:新規論文から考える(2):Sten Grillnerの総説論文  Current Principles of Motor Control, with Special Reference to Vertebrate Locomotion 運動制御の現在の原理-脊椎動物の運動を特に参照して

          エピソード( X-1):「対気」という二個体間Signalingに反応する身体

          「対気」という不思議な呼吸法bodyworkは、西野流呼吸法のオリジナルであり、Essenceであると先に述べた(リンク)。 ということは、この不思議な現象の解明は、西欧医学における新規身体理論、新規医療領域として展開する可能性もありうる。 この現象は、身体という「現実の実体」がなければ、感覚し得ないフィールドである。 いわゆる本能というbuilt-in curcuit神経系が作動する。 その発動に呼吸法でアクセスする。 AIによる既存現象解説とは、全く範疇の違う世界である

          エピソード( X-1):「対気」という二個体間Signalingに反応する身体

          こころをからだに繋ぐ呼吸法Bodywork 第2章 X 西野流呼吸法「対気」Bodywork X-1:「対気」現象の記述にあたって

          西野流呼吸法もその基礎Bodyworkの記述から、「対気」へ進む。 「対気」という、世界に同等のもののない、オリジナルな呼吸法bodyworkは、西野流呼吸法の本質である。 それは誰が経験しても、教えられるまでもなく、実感することである。 西野皓三先生ご自身、そう心得ておられたのを、直接耳にした。 それだけに医師として、この現象を記述するのは、本当に難しい。 一つの理由は、この現象を説明する医学生理学が現状では不備であるからである。 言い換えれば、医学が新しく生まれ換わっ

          こころをからだに繋ぐ呼吸法Bodywork 第2章 X 西野流呼吸法「対気」Bodywork X-1:「対気」現象の記述にあたって

          エピソード(EIX-2):歩きを伴う多様な稽古-旋遊、這、摺り足、経行、巡礼

          実際に「旋遊」を行うと、その動きは「阿波踊り」の男踊りに近い動作である。 興味を持って、男踊りの起源を少し調べたが、はっきりとはわからない。 阿波踊りは両手を肩の高さで前後させる。後頭部から回して前へ出すものではない。 むしろ「旋遊」は「皿回し」の動きと関連すると理解して、肩甲骨を巡る左右交互ストレッチと考える。実際にやってみると全身からのストレッチの喜びを感じることができる。 また中国拳法の大気拳でも身体を低い位置にして体重を移動する「這(はい:辶に言)」や「揺」という

          エピソード(EIX-2):歩きを伴う多様な稽古-旋遊、這、摺り足、経行、巡礼

          IX-2 旋転・旋遊:自分の思いを前方へ、いよいよ歩み出る

          3)自分の思いを前方へ 手のひらで頭の後ろから前へ身体をなぞる-「旋転」 直前動作、身体軸回旋上下移動で膝まで回転が降りたら、ゆっくりと止めながら両上肢の運動に移る。 右手を手首は緩めて手の掌は開いたまま、右耳を手甲でかすめて、後頭部を回し、左耳をなぞるようにしながら前へ。息は吐きながら回して前方へ伸ばし、右横から後ろへ(リンク、https://www.youtube.com/watch?v=Y2LGi5xUlp8)。 動画を見ると、旋転の動作は手首の旋回から起動するのが

          IX-2 旋転・旋遊:自分の思いを前方へ、いよいよ歩み出る

          エピソード(E IX-1):身体の回旋で水を切る/脊椎動物共通行動-体軸回旋、そもそもの意味は?-

          動物が池や川から上がり、水を撥ね飛ばす動作は見ていても気持ちよくなる。 遠心力などを知らなくても、背骨を中心にグルグルと回転運動で水を撥ね飛ばす。 犬では日常的にみるが、いろいろな野生動物が同じことをやっている。 やはりYouTubeには多くの動画がアップされている(リンク、動物身体をブルブル回旋)。 西野流呼吸法で腰の回転の高さを少し移動させてみようと考えたのは、この動物の姿を思い浮かべたからである。 実際に身体を左右に回転させて、高さの移動を試みると確かに上下に移動でき

          エピソード(E IX-1):身体の回旋で水を切る/脊椎動物共通行動-体軸回旋、そもそもの意味は?-

          IX. 西野流呼吸法基礎の稽古が終わる IX-1 捻揺、そして脊柱を左右回転、上下移動

          足芯呼吸から始まった立位の西野流呼吸法基礎の稽古は、華輪、さらに頸椎から体幹、膝、足首までの回旋、次いでバレエの動作を感じる伸展呼吸、そして半身を交互に緊張と弛緩させる応涯、応天、応響、応地と進んできた。 繰り返し、繰り返し、自分の身体を意識し、身体に働きかける。 また当初は考えてもみなかった進化の古いプログラム、あるいは脊椎動物の原点である脊柱と近傍の筋群の感覚まで体験できた。 しかし、なぜこれが呼吸法Bodyworkなのか? なぜ普通の深呼吸動作がないのか? 多くの方

          IX. 西野流呼吸法基礎の稽古が終わる IX-1 捻揺、そして脊柱を左右回転、上下移動

          エピソード(VIII-1):「応地」により生まれる不思議な脊柱・体幹筋群感覚(身体軸)-私たちは脊柱で生きている:身体軸が主、四肢は従-

          華輪の説明でも述べたが、西野流呼吸法を稽古して最大の「不思議」は、稽古を通して我々の中の旧い身体の事を想う点、気付く点である。 華輪の稽古では、身体軸を中心にして腕はブランブランと身体に纏い付き、膝はこれに併せて屈曲する。腕(上肢)は身体の中で主体的存在感ではなくなる。 そして身体感の主体、それは身体を貫くものとしての脊柱・体幹筋群の「身体軸」であると感取できる。 この応地においても同じような脊柱・体軸感覚を持つようになる。 脊柱をまっすぐにして、腕の脱力とともに上から下へ

          エピソード(VIII-1):「応地」により生まれる不思議な脊柱・体幹筋群感覚(身体軸)-私たちは脊柱で生きている:身体軸が主、四肢は従-

          マガジン:DeepBody-新規論文から考える 実際の記事のオリエンテーション

          1) 旧脳とは何のこと?なぜ呼吸運動に関係するの?-重要な「皮質下構造」(爬虫類脳 vs Splatter super cluster)- URL:https://note.com/deepbody_nukiwat/n/n8a13b3df078a?magazine_key=m06235142a61d 2) 3)

          マガジン:DeepBody-新規論文から考える 実際の記事のオリエンテーション

          仙台西野流呼吸法:掲示板

          仙台西野流呼吸法は、1993年秋、東北大学加齢医学研究所で貫和が皆さんの希望で稽古を始め、30年に渡り東北大学学内のみならず多くの仙台市民が参加。 2019年より、下記JR仙台駅、河北TBCカルチャーセンターに移り5年となります。 *呼吸法稽古スケジュール: ・日時(3ヶ月毎に更新)  土曜日:13:00~14:30  月曜日:18:30~20:00 ・場所:河北TBCカルチャーセンター(仙台駅 S-PAL 5階)  見学は受付で随時申し込み可  URL(http://w

          仙台西野流呼吸法:掲示板

          VIII-2 応響・応地 -不思議な脱力への実践稽古(2)-緊張と弛緩を身体の左右で交互に繰り返す/四方向へ強く短い呼気と手首の動き

          3)「応響」-身体を180度回転して真後ろへ 左右から同じ目標まで目を運ぶ- 次は右手を胸の高さで、身体の側面をぐるりと回して、自分の真後ろへ。 真後ろで手首が伸びて後方へ放りだす感覚である。 呼吸は同じように吐きながら回して、最後に放り出す時に吐ききる。 次に向きを反対側に換えながら息を吸い、まず腰部が回りながら腕の回転がそれを追いかけ、最後の目標まで回したら手首を伸ばして、後方に放り出して息を吐ききる。 これを左右各10回ぐらい、合計20回行う。 西野先生は、この応

          VIII-2 応響・応地 -不思議な脱力への実践稽古(2)-緊張と弛緩を身体の左右で交互に繰り返す/四方向へ強く短い呼気と手首の動き

          VIII-1 応崖・応天/不思議な脱力への実践稽古 -緊張と弛緩を身体の左右で交互に繰り返す・四方向へ強く短い呼気と手首の動き-

          西野流呼吸法は、西野皓三先生の本当にオリジナルな不思議なBodywork体系である。 その意味は、習って30年以上をへて、ようやく医学的に理解できるものがある。ここで説明する応崖、応天、応響、応地のBodyworkは、その一つの例である。 この医学的背景を先に説明しよう。 先のエピソード番外編240106で、ヒトの運動システムが2系統(皮質下運動システム、大脳皮質運動野)からなるという教科書内容を紹介した(リンク、https://note.com/deepbody_nuki

          VIII-1 応崖・応天/不思議な脱力への実践稽古 -緊張と弛緩を身体の左右で交互に繰り返す・四方向へ強く短い呼気と手首の動き-