miles davis「on the corner 」

1971年に「bitches blew」を発表、この作品はグラミー賞を受賞、セールス的にも成功したが従来のジャズファンからは「ジャズに対する裏切り」とか「マイルスはロックに日和った」などと言われた。

しかし「ジャズに対する裏切り」はまだまだ続くことになる1972年に「on the corner 」発表。

この作品についてマイルスは

「「on the corner」のレコーディングでスタジオに入った時意識したのは、スライザファミリーストーンとジェイムズブラウンだった」

と言っていた。

「on the corner 」にはもはや「kind of blue」の面影は全くない、当時このアルバムがリリースされた時、なんと形容してよいか分からないこの奇妙なサウンドを理解できた人はいただろうか。

確かに一聴した限り「ファンク」ではあるがしかし…

「俺が「on the corner」でやったことはどこにも分類できないものだ、スライザファミリーストーン、ジェームズブラウン、そしてシュトックハウゼンのコンセプトと、オーネットコールマンの音楽から吸収した、ある種のコンセプト、それをまとめ上げたものだ」

例えばこういった作品が無名のジャズミュージシャンがやった場合「ふざけるんじゃねぇ」となりかねない。 

更に

「この頃ドイツの前衛作曲家カールハインツシュトックハウゼンと、イギリスの作曲家ポールバックマスターの音楽理論に興味を持ち始めていた、更にバッハが行った特殊な作曲法についても知ろうとしていた」

…上記の発言はマイルスの自伝に書いてあったものだが、やはり計算された上で行われた制作であった。

とはいえ自分も本を読んでわかったことなので音だけ聴いてそんなこと理解できるわけがないが、永遠と続く「チキチキ」という音とシンバルの音、そしてマイルスのワウワウを聴かせたトランペットだが、「若い黒人が踊れるようなサウンドにしたかった」とも言っていた通り、確かにそのような感覚は受けるが。

リリース当時はジャズ界での評価はボロボロだったらしい、そして当時の若い黒人に思うように聴かれた訳ではなかったが。

しかし後にクラブシーンでこのアルバムが頻繁にかかるようになるらしい…

それにしても「round about midnight 」のようなアコースティックなジャズをやっていた人がここまで変わってしまうのかという驚きである。

過去の作品と聴き比べると同じミュージシャンが作ったものとは思えないが、「俺の音楽をジャズと呼ぶな」と言っていた通り、「bitches blew」以降「普通のジャズ」はやっていない。

現在ジャズシーンでこんな人いるだろうか?いないと思う、「dark magus」「live evil」「get up with it」は同じ括りにできるかもしれないが、しかし「on the corner 」だけは異様な作風である。

確かにあまりにも音楽性がぶっ飛びすぎてリアルタイムでマイルスやジャズを聴いていた人はついていけなかったに違いない。

しかしマイルスデイヴィスというのは面白いミュージシャンである、この作品もこの先も聴いていくと思うし、他の作品も聴き、深堀する価値大の人である。

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