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『お前の親になったるで』映画編

この頃行くことの多い映画館。舞台挨拶をよくやっています。気になる映画があって、舞台挨拶があったら、「行く!」となる。この映画、空き状況をみたら、満席寸前。あわててWEBチケットを申し込む。

一番前の座席で

端っこの席は、そこしか空いていなかった。96席の小さな映画館だが、満席だ。
『お前の親になったるで』
岸和田で建設業を営む草刈健太郎さんは、妹を殺された被害者家族。それなのに、元受刑者を雇い入れ、就労支援を行なう「職親プロジェクト」に携わる。その10年間のドキュメント。

元受刑者を引き受けるといっても、たやすくない。親が拒否したりすると、身受け引き取り人になる。

住まいを用意し、雇い入れる。落ち着けば良いが、何かと問題が起こる。いなくなる、パチンコ依存症、窃盗をする。そのたびに草刈さんは走り回る。

信じては裏切られる。いや、この言葉は違う。
「信じる」の方はその通りだと思うけど、元受刑者の少年・青年は、裏切るつもりはない。どうしようもなくて、逃げ出したり我慢できなかったり。結果的には裏切ることになる。それでも信じる。

草刈さんのやっていることは、「ほぼ家族」だなと思った。本当の家族にはなれないけど、完璧な教育者でもないけど、何かあれば駆けつけ、怒り、諭し、次に行こうと背中を押す。肩肘張らない自然な接し方が印象に残った。

家族に支援を求められない彼らにとっては、頼れる存在に違いない。

被害者家族の加害者支援

アメリカで暮らしていた妹さんは、一緒に住んでいたアメリカ人男性に、むごい殺され方をする。その男性の仮釈放を断固拒む。草刈さんは画面で犯人に向かって厳しい顔で叫ぶ。

映画館の外

舞台挨拶

終映後、壇上に上がったのは、当の草刈健太郎さん。監督の北岸佳枝さん。司会はプロデューサー花本憲一さん。

観客からの質問に答える。草刈さんは「(雰囲気が)暗くないですか」と言ったり、ざっくばらんな方だった。質問にも丁寧に答えていた。語る力が強い方だなと思った。

質問に、「職親プロジェクトは、被害者であるご自身のリカバリーになっていますか」というのがあった。草刈さんは「どうなんだろう」と言い、明確な答はないようだった。

私は、まだご本人の中で、妹さんの事件と職親プロジェクトは別々のことのように思えた。
「加害者支援は、再犯を防ぐため、被害者を作らないために」と考えて活動されている。

では、犯人を赦しているかと言ったら、まだ赦していないと思う。まったく当たり前だと思う。それだけ魂を削られるような事件だったのだ。ようやく謝罪の言葉は聞けたとのことだ。


サイン会

パンフレットはなく、草刈さんの本を売っていた。サインもしてくれるとのことだった。私は上映前に購入していたが、今回はすぐに帰ろうとエレベーターに乗った。一緒だった人が本にサインをしてもらっており、私は気が変わり、引き返した。しばらく並んで、サインしてもらった。「絆」と書いてくれた。

犯罪を犯す少年らは、考える力が弱いという話が映画の中でも出ていた。そのために犯罪に巻き込まれる。そうしたことから、公文式を受刑中に学ぶ取り組みが行なわれているとのことだった。

前に並んでいた方がそういう話をしていた。私の番が来てサインをしてもらいながら、言うかどうしようか迷ったが、
「さっきの話ですが、『ケーキの切れない(非行少年)』という本がありますよね」と言った。

宮口幸治著、頑張ろうとしても頑張れない非行少年の事を書いた本だ。草刈さんに反応はなかったが、周りにいた方たちが、(そうそう)というように頷いてくれたので、ホッとした。

いつもサイン会で余計なことを言って、落ち込む事が多い。

草刈健太郎さんの本は。なかなか面白かった。映画だけではわからないこともあった。改めて、読書日記を書きたい。


浅間大社・沸玉池

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