大河ファンタジー小説『月獅』5 第1幕:第2章「天卵」(2)
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第1幕「ルチル」第2章:天卵(2)
「早く、ここから」
マントルピースの冊をはずし、灰を隅に掻き寄せると、イヴァンは炉床の煉瓦を火掻き棒でコツンコツンコツーンと最後だけ大きく三度叩いた。それから煉瓦を八枚取り除く。その下には煤けた板があった。中央に金属の取っ手があり、短い辺の片側に蝶番がついている。イヴァンは取っ手をもって板をあげる。すると、昏い穴があり、冷気が