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「キャッチ1本、家事のもと!」をキャッチコピーに、主婦兼コピーライターを続けています。…

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「キャッチ1本、家事のもと!」をキャッチコピーに、主婦兼コピーライターを続けています。趣味で、オリジナル技法の3D刺繍のバッグも製作。とにかく、ゼロから何かを創りあげることが好き。エッセーや小説など、仕事を離れた作品作りを楽しみます。

マガジン

  • シロクマ文芸部 課題作品

    シロクマ文芸部の課題で作った小説などを編集したマガジンです。

  • 大河ファンタジー小説「月獅」

    天卵を宿した少女と、天卵の子の物語です。

  • 『月獅』章ごとのまとめマガジン

    大河ファンタジー小説『月獅』の各話を章ごとにまとめた<全文>を収納したマガジンです。まとめ読みをされるには、最適です。

  • 連載小説「オールド・クロック・カフェ」

    京町屋を改装したカフェは、一歩入ると時計の森。そこでは、時のはざまに置いてきた忘れ物を教えてくれる「時のコーヒー」があるという。

  • アンノウン・デスティニィ

    創作大賞2023に応募の「アンノウン・デスティニィ」をまとめています。

最近の記事

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アンノウン・デスティニィ 第1話「怪盗」

※今作品は宇佐崎しろ先生によるイラストをモチーフにした創作大賞2023「#イラストストーリー部門」への応募作品である。 第1話:怪盗 【2035年5月10日】  女がふたり、長く美しいプラチナブロンドをなびかせて向き合っていた。正面を向いた女は明るい鳶色の瞳のまなじりをきっと吊り上げ、背を向けた女の喉もとに果物ナイフを突きつける。  窓辺には夕闇が迫り、ログキャビンの高い天井から吊るされた照明が彼女たちの金髪を妖しく輝かせていた。緊張と静寂が室内を支配する。 「あたしが鳴

    • 花吹雪のアサシン。(#シロクマ文芸部)

       花吹雪と呼ばれる男がいる――。  薄れゆく意識の海で李浩然は、裏社会の伝説を十数年ぶりに思い出した。  千の顔をもち年齢不詳、姿すら誰一人まともに見たことがない。風に乗って現れ、花吹雪のごとく風に消える――伝説のアサシン。男かどうかも定かではない。何しろ誰も正面から見たことがないのだから。わかっていることは、美しく殺してくれる、ただそれだけ。死の瀬戸際に、舞い散る花吹雪のなか遠ざかる背を目にするといわれているが、野辺に打ち捨てられ死にゆく者が最後に見た光景を誰が知るというの

      • 大河ファンタジー小説『月獅』74         第4幕:第16章「ソラ」(9)

        前話<第16章「ソラ」(8)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(9) (ソラは白虎のライと共に、ノリエンダ山脈の北壁で暮らしていた)  流れるように二年が過ぎた。  ノリエンダ山脈の北壁では、一日一日が生きていくための挑戦である。天卵の子は、人の子の三倍の早さで成長する。四歳になったソラは、十二歳の体格を持つ少年に成長していた。  ぴしっ。  極限まで凍りついた空気を切り裂き矢が走る。 「ライ、しとめたぞ」  白銀の虎の背に仁王立ちになっていた

        • 大河ファンタジー小説『月獅』73         第4幕:第16章「ソラ」(8)

          前話<第16章「ソラ」(7)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(8) (羚羊に群がる小獣たちを跳び越え、白虎はソラを連れ去る)  急峻な崖の隘路を白虎はソラを咥えて跳ぶように駆けた。  針葉樹の林を抜け、いくつかの岩間を駆けあがる。コンドルの巣のあった天崖より遥か下ではあったが、風は容赦なく丈の高い樹はない。雪に浸食された崖道は脆く、白虎が蹴るたびに岩が崩れ谷へと落ちる音が響く。そんな断崖の途上に大きな一枚板の岩と岩が斜めに支え合う三角の間隙があっ

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        アンノウン・デスティニィ 第1話「怪盗」

        • 花吹雪のアサシン。(#シロクマ文芸部)

        • 大河ファンタジー小説『月獅』74         第4幕:第16章「ソラ」(9)

        • 大河ファンタジー小説『月獅』73         第4幕:第16章「ソラ」(8)

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          73本
        • 『月獅』章ごとのまとめマガジン
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        • 連載小説「オールド・クロック・カフェ」
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        • アンノウン・デスティニィ
          34本
        • #エッセイ「Say When! 」
          10本

        記事

          大河ファンタジー小説『月獅』72         第4幕:第16章「ソラ」(7)

          前話<第16章「ソラ」(6)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(7) (ナキオオカミ、ハイエナ、ジャッカルの襲撃から逃れたソラの前に、ふつうの虎よりも二周りも大きな白虎が立ちはだかった。) 「北壁の雷虎!」   先頭で追い駆けてきたナキオオカミは驚愕し、残雪でぬかるんだ地面に前脚の爪を立て、つんのめりながらかろうじて止まる。その声は怯え慄いていた。後続のハイエナもジャッカルも、猛虎の存在に気づくやいなやその場に凍りつく。ソラは白虎の眼前で尻もちをつ

          大河ファンタジー小説『月獅』72         第4幕:第16章「ソラ」(7)

          大河ファンタジー小説『月獅』71         第4幕:第16章「ソラ」(6)

          前話<第16章「ソラ」(5)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(6) (コンドルの雛に丸呑みされたまま断崖から落下したソラの躰から強烈な閃光が。ソラはなんとか雛の胃から脱出した。)  涙が涸れるまで泣いたら、喉がひりひりした。  闇でよく見えないが、あたりに川や泉はなさそうだ。ソラは岩間に残っていた雪をひとつかみすると口に含んだ。がりっと土の味がした。舌にざらつく土や砂のかけらをぺっぺっと吐く。がぶがぶと水を飲みたかったけれど、しかたない。土の混じ

          大河ファンタジー小説『月獅』71         第4幕:第16章「ソラ」(6)

          大河ファンタジー小説『月獅』70         第4幕:第16章「ソラ」(5)

          前話<第16章「ソラ」(4)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(5) (ソラを呑み込んだ雛は、三千メートル級のノリエンダ山脈の断崖の巣から落下した。)  ノリエンダ山脈の山頂にある断崖から落下したコンドルの雛は、まだ飛ぶことができなかった。羽ばたきの練習はしていたし、親鳥と同じ立派な翼も生えそろいつつあったから、あるいは飛べたかもしれない。だが、喉に突き刺さった激痛に正気を失っていた。気流をとらえることはおろか、痛みに身悶えし翼を開くことすら思いつ

          大河ファンタジー小説『月獅』70         第4幕:第16章「ソラ」(5)

          玉むすび(#シロクマ文芸部)

           朧月が蒼天に白くにじんでいた。  戎橋の欄干に背を預け、数馬は道頓堀に目をやる。北岸に軒を連ねる水茶屋からもれる灯りがちらちらと川面をさんざめかせていた。川風が着流しの裾をめくって戯れる。浅春の夜風はまだひんやりする。数馬はぶるっと身震いし、はだけていた襟もとを合わせた。  ――春の月は、なんとのう、うすぼんやりしとるなあ。  輪郭も朧な月明かりは、川面を照らす前にどこぞで霧散してしまう。  芝居小屋が並ぶ南岸は、昼の賑わいの名残もなくひそりと静まっている。橋のすぐそばにあ

          玉むすび(#シロクマ文芸部)

          大河ファンタジー小説『月獅』69         第4幕:第16章「ソラ」(4)

          前話<第16章「ソラ」(3)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(4) (コンドルはノリエンダ山脈の山頂を超えると急峻な北壁に沿って急降下。ソラは再び失神していた。)    どさっ。  顔面を強打し、ソラは目を覚ました。  細かな羽毛が埃となって舞っている。ごつごつした岩の上に抜け落ちた薄茶色の胸毛が散乱していた。鼻、頬、腕、腹。ソラの全身に鈍痛が走る。起き上がろうとして吐いた。口の中にどろりと血の味がした。 轟々と風が吹きつける。奥は暗くてよく見えな

          大河ファンタジー小説『月獅』69         第4幕:第16章「ソラ」(4)

          大河ファンタジー小説『月獅』68         第4幕:第16章「ソラ」(3)

          前話<第16章「ソラ」(2)>は、こちから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(3)  厚い雷雲を抜けると、天空は静謐だった。  下界の嵐も火山の噴火も、火の咆哮も怒涛の驟雨も、狂気もない。紅蓮の炎も稲光も、命の鼓動のけはいすらない。あまねく太陽に照らされているだけの無音の世界。空気も薄い。ただ風は吹いていた。  コンドルは嵐にもまれた羽根をばさりと一振りし雨滴を払うと、闇を従える翼を広げた。  はるか北にノリエンダ山脈の雪を戴く山頂だけが見える。一文字に連なり、雲

          大河ファンタジー小説『月獅』68         第4幕:第16章「ソラ」(3)

          大河ファンタジー小説『月獅』67         第4幕:第16章「ソラ」(2)

          前話<第16章「ソラ」(1)>は、こちらから、どうぞ。 第4幕「流離」第16章「ソラ」(2)  突然、ごごごごごごごっという不穏な重低音が、空気を震撼させた。  はじめは鈍く重く。しだいに重量を増してくる。けっして耳を覆うような大音量ではない。だが、地の底から得体のしれない何かがせりあがって来る不気味な圧迫感が島を覆った。  海面が激しくうねる。森からいっせいに大小の鳥が飛び立つ。地底で龍がのたうち大地が軋むような不穏さが確実に強まっていく。島を取り巻く空気がみしみしと震

          大河ファンタジー小説『月獅』67         第4幕:第16章「ソラ」(2)

          大河ファンタジー小説『月獅』66         第4幕「流離」:第16章「ソラ」(1)

           物語は第2幕、第9章「嵐」までさかのぼります。  「隠された島」でノア・ディア親子とルチルと共に、すくすくと育った天卵の双子シエルとソラ。彼らの二歳の誕生日に、「天は朱の海に漂う」との星夜見を受けた捜索隊が島に上陸し、ソラが巨鳥にさらわれたところから話を再開します。 第2幕:第9章「嵐」は、こちらから、どうぞ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 第4幕「流離」第16章「ソラ」(1)  太い鈎爪で肩を鷲づかみにされ、視界がぐいんと急

          大河ファンタジー小説『月獅』66         第4幕「流離」:第16章「ソラ」(1)

          大河ファンタジー小説『月獅』             第3幕「迷宮」<全文>

          第1幕「ルチル」は、こちらから、どうぞ。 第2幕「隠された島」は、こちらから、どうぞ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 第10章「星夜見の塔」「星夜見の塔」(1)  群青の闇を月がうすく照らしていた。  シキは星夜見の塔へと続く石段を、銀水を満たした手桶を提げてあがる。塔までの石段は「星の径」と称し、石英のかけらが埋め込まれている。それらは星の位置によって光る場所が変わる。塔までの道は幾筋も枝分かれしながら螺旋でのぼる迷路になっている。光が

          大河ファンタジー小説『月獅』             第3幕「迷宮」<全文>

          『月獅』第3幕「迷宮」          第15章「流転」<全文>

          これまでの話はこちらから、どうぞ。 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 「流転」(1)  ――さて、いかがしたものか。  ラザールは跪拝しながら、先刻より事態を思案していた。  真珠宮の正殿では四半刻ほどにらみ合いが続いている。  事の発端は、こうだ。  王妃の望みでラザールはキリト王子の師傅を引き受けることになり、王子とのはじめての謁見に真珠宮まで足を運んだ。後宮に続く回廊を春風が駆け抜け、アーモンドの白い花が散っていた。   キリト王子の

          『月獅』第3幕「迷宮」          第15章「流転」<全文>

          大河ファンタジー小説『月獅』65         第3幕:第15章「流転」(8)

          前話(第64話)は、こちらから、どうぞ。 これまでの話は、こちらのマガジンにまとめています。 第3幕「迷宮」第15章「流転」(8)  町娘の装束に着替えるためシキが席を立つと、ラザールはカイルに向き合った。 「さて、旅の設定でございますが。ナユタ殿とシキとを結婚したての商人夫婦。カイル殿下は、誠にご無礼ではございますが、若夫婦の従者ではいかがでしょうか。買い物などは主人がし、従者は荷物持ちになるので人目につきにくいかと存じます」 「それでかまわぬ。ナユタも異論はないな」

          大河ファンタジー小説『月獅』65         第3幕:第15章「流転」(8)

          万年、どこの夢(#シロクマ文芸部)

           布団から芽が出ておった。  文字にすればそれだけか、つまらぬの。   締め切りの迫った原稿の筆がどうにも走らず、その程度のことは日常茶飯まゝあることよと、鼻糞をぴんと指ではじき、書き損じを仇の如く丸め、文机の真後ろに四六時中鎮座まします万年床に、小生は腰を支点に背から倒れこまん――としたのが一昨日のことであった。  重力の抗い難き力ゆえ致し方なきこと、と高らかに嘯いてみる算段でおったというに、すきま風の絶えぬ下宿ゆえの哀しさよ、羽織っていた掻巻の厚みに邪魔されるとは、なん

          万年、どこの夢(#シロクマ文芸部)