誕生日を盗め!(#シロクマ文芸部)
「誕生日を盗んでいただけないかしら」
マイアミのビーチに面したカフェで、リックはジョッキを手に、行き交う極彩色のビキニの肢体に目を細めていた。麦の液体で喉をうるおしながら小麦色の肌を眺める至福。惜しみなく降りそそぐまばゆい太陽。天国はここにある。ニューヨークでひと仕事をこなしたリックは、バカンスを楽しんでいた。恋人のミアも連れてきたかったが、「ごめんなさい。締め切り前でお休みがとれないの」と、ひどく残念がっていた。中堅どころの出版社で駆け出し編集者のミアは、ろくに休みもと