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追悼・篠山紀信さん

自分の身に何かが起きたわけでもないのに頭だけがめまぐるしく動いて、あっという間に正月の三が日が過ぎてしまった。今年一体どうなることやら、と思っていると今度は篠山紀信急死のニュース。去年の年明けには高橋幸宏氏死去の報。新しい年がはじまるごとに「あの頃」が遠くなっていく。

篠山紀信といえば「Water  Fruit」でも「Santa Fe」でもなく、激写なのだ。雑誌「GORO」をバイブルにしていたグローイング・アップな70年代高校男子は多いはず。木村伊兵衛や土門拳は知らなくても篠山紀信ならみんな知っていた。シンシアこと南沙織がこのもじゃもじゃ頭のおっさんと結婚したのにはびっくりした。南沙織は当時3人娘的に並び称されていた天地真理、小柳ルミ子の中で最もCOOLな存在だったのだ。どうせそのうち離婚するだろうと思っていたら3人の子どもまで授かり今に至っている。

篠山紀信はフットワークが軽い。「天才バカボン」に登場するカメラ小僧・紀信君も風にように現れ去って行く。お高くとまったゲージツなんてものは紀信君の手にかかれば木っ端みじんに吹っ飛ぶのだ。大江健三郎が見るまえに跳べなら、見るまえに撮れ(出来んがな)位の勢いがある。

激写文庫も何冊か持っていた(初期シリーズには川島なお美や杉田かおるなどが名を連ねている)が、いずれも今はもう処分してしまった。今本棚には集英社文庫の「シルクロード」だけが残っている。奈良からヴァチカンまで6年の歳月をかけて撮り、語られた全3巻。激写の頃の仕事と時期が重なっている。表紙はすべてその旅の行程で出会った少女たち。まっすぐこちらを見る目がまぶしい。

「シルクロード」の旅の最後はヴァチカン、法王の決定を見守るサン・ピエトロ広場の群衆を捉える。

ー煙が出た。黒だ。まだ法王は決まっていない。ー


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