大学入試 当日(後半)

大学入試当日、僕は自己PRと小論文を終え、残すは面接のみだった。

『大学入試 3日前』
https://note.com/dengoro/n/na4d2e33c26b7

『大学入試 当日(前編)』https://note.com/dengoro/n/n97fcd37ea7cc ※これまでの入試に関する記事

小論文を9割以上書くことは出来なかった。
しかし、僕は初めて小論文を書き進められた事にやり切れたとも感じた。
そんな事を感じながら15分の休憩を終えた。

11時10分。面接の時間になった。
手元のスケジュールのプリントには受験生の面接開始時刻が記されていた。
僕の面接開始時刻は15時15分。
終了時間が15時45分。長すぎる。
面接開始までの待機時間。
そして面接開始からの終了時間まで。

面接の待機中は、飲食がOKだった。
僕は空腹だった為、コンビニで買ったおにぎりを食べようとしたが、結局出来なかった。
部屋が静かで物音が聞こえなかったからだ。
僕は無音の空間で咀嚼音を聞かれる事が嫌だった。
その為、僕は面接開始まで空腹を紛らわそうと、緑茶を飲んで過ごした。

そんな中、緑茶を飲んでいるだけでは、ただ利尿作用を増やしている事に気づいた。
とりあえず僕は、面接で聞かれそうな質問の回答をコピー用紙にひたすら書き続けた。
1時間ほど続けた結果、僕は脳と右腕に疲れを感じ、額を机に着けてボーッと過ごした。

14時15分。僕の受験番号が呼ばれた。
予定よりも1時間ほど早かった。
何故こんな早く面接が始まったのだろうか?
開始5分で失格になった受験生が居たのだろうか?
話が盛り上がらず変な空気になった所で失格になった受験生が居たのだろうか?
または、その場で自ら辞退した受験生が居たのだろうか?
そもそも面接で失格になり強制退場される事があるのだろうか?

そんな事を考えていると、面接教室の前に着いた。
僕はドアを3回ノックした。
面接官から入室の許可をもらい
教室に足を踏み入れた。
「し、し、失礼します!」
震え声を発して、一礼した。
部屋を見渡すと、そこには面接官が3人。
その内、真ん中は学長だった。
学長は、声が細く、優しそうな雰囲気のあるおじいさんだ。

学長から「こちらに座って下さい」と椅子に誘導された。
僕は「失礼します」と言い、椅子に座った。
その瞬間、視界がぼやけ始めた。
極度なあがり症が出てしまったようだ。
僕の緊張感は、面接官にも伝わっており、学長からは「リラックスして下さいね」と声を掛けてもらった。
深呼吸をした僕は肩の荷が少し降りた。
そして、面接官の自己紹介が始まった。
面接官3人の声はとても優しく、安心感があった。聞いているとリラックスしてしまう。

質疑応答が始まった。
志望動機から始まり、高校生活で頑張った事やこれまで読んだ本なども聞かれた。

高校生活で頑張った事を聞かれた際、
自身があがり症である自虐に触れた時、面接官が笑ってくれた。
ウケた事がとても嬉しかった。
その後は気を張らずラフな状態で質問に答える事が出来た。

これまで読んだ中で一番印象的な本についても聞かれた。
僕はオードリー・若林さんの著書『ナナメの夕暮れ』を答えた。
この本を読んだ当初、僕は自意識を抱えていた。僕は、この本を通して考え方も生き方も変わった。
それらの内容をだいぶボリューミーにして伝えた。たぶん今回の面接で一番熱量を持って伝えたんじゃないかと思う(次点は志望動機)。

「それでは面接は以上になります」
学長から面接終了を告げられ、僕は退室した。途中から緊張がほぐれたからなのかあっという間に面接が終わった。
時間を確認すると、14時25分だった。
待機教室で名前を呼ばれてから、たった10分しか経っていなかったのだ。
僕は30分予定されていた面接が10分で終えた事に危機感を感じていた。
人間として面白味がなく興味が湧かない奴だと思われたのではないかもしれない。
と、ナナメの夕暮れに出会った頃の様な自意識を発動させた。

大学の外に出て、面接が予定よりも早く終わる事について調べてみると、
面接時間のスケジュールは長めに設定されているらしい。
その事実を知れて僕は安心する事が出来た。
それと同時に面接開始の時間が巻いてあった事は、多くの受験生が失格したからでない事も知れた(事実は知らないが)。

約5時間に及ぶ入試が終了した。
僕はとにかく「やり切れた」としか思わなかった。反省をする体力は残っていない。全て使い切った。もう悔いは残っていない。
これで落ちたら学力試験で挽回してやろう。
僕は、大学の外にあるベンチで大きく息を吸った。上手く脳に酸素が行き届く感覚がしない。だいぶ疲れているのだと感じた。
雨の中、僕は待機教室で食べれなかったおにぎりとコーヒーを飲食し、親の迎えを待っていた。

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