見出し画像

偉人の別の顔#4 地質学者・ゲーテ

 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)は、ドイツを代表する文豪であり、小説『若きウェルテルの悩み』、叙事詩『ヘルマンとドロテーア』、詩劇『ファウスト』など広い分野で重要な作品を残しました。日本では、文豪としてのイメージが強いのですが、ゲーテは多才で政治家・法律家・哲学者としての顔を持ち、さらには色彩論・形態学・生物学などの自然科学にも研究成果を残しています。

 Goetheの日本語表記は、今では”ゲーテ”に統一されていますが、古くはギョエテ、ゲョエテ、ギョーツ、グーテ、ゲエテなど数十種類にものぼる表記が存在しました。そのため、この事を揶揄した次のような川柳がありました。『ギョエテとは 俺のことかと ゲーテ言い』。

 このマルチな才能を持つゲーテには、地質学者としての才能もありました。ゲーテがワイマール公国イルメナウ鉱山再開の職務についていた頃、彼は岩山をよじ登り、洞窟奥へもぐり込んで、地質学へとのめり込んで行きました。地質学者・ゲーテの散在する論考や断章をていねいにまとめたものが、文庫化されて読むことができます。

 実は鉱物名にゲーテの名前を冠したものがあります。その鉱物がゲーサイト(Goethite) です。この名前はゲーテ自身が付けたものではなく、ゲーテと親交のあった鉱物学者によって名付けられました。ゲーサイトは、自然にできる鉄サビのようなもので、地球上のどこでも見られる割とポピュラーな鉱物だそうです。

 元々ゲーサイトのような水酸化鉄の塊には統一された名前がなく、様々な名称で呼ばれていましたが、19世紀になってリモナイト(褐鉄鉱)と統一されました。しかし20世紀後半になって、リモナイトに結晶構造の違う2種類のタイプがあることが判ってきて、ゲーサイト(針鉄鉱)とレピドクロサイト(鱗鉄鉱)の2つに分類されました。ゲーサイトは、下の写真のようにクォーツなど他の鉱物のインクルージョン(包含物)として見つかることがあります。

画像1

 日本では、宮沢賢治も地質学に興味があって、『石っこ賢さん』と呼ばれていました。文豪は、石にロマンを感じるのでしょうか?。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?