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 いまだに、あれは何だったんだろうと思う不思議な体験があります。でも霊的なオカルト話ではありません。

 今からはるか昔の、私が大学院生の頃の話です。冬の寒い夜でした。その日は、何人かの友達と近所の居酒屋で飲んでいました。ひとしきり盛り上がって、深夜1時ごろにお開きになりました。私は、酔い覚ましも兼ねて、当時住んでいたアパートまで歩いて帰ることにしました。居酒屋からの帰路は比較的大きな通りの歩道を歩いていましたが、深夜なので歩いている人は殆どいませんでした。

 アパートまでの中間地点あたりの夜間灯の下で、”真知子巻き”をした年配のオバ(ア)さんが佇んでいました。そのオバさんがちらっと視界に入りましたが、無視してそのまま通り過ぎようとした時に、オバさんから声をかけられました。「ちょっと頼みがあるんだけど・・・」。「スミマセン。急いでますから・・・」と言ったのですが、中々引き下がりません。オバさんの頼みはこういう内容でした。

 オバさんが立っているところは、図のような駐車場の前でした。オバさんはおもむろに小さなマッチ箱を取り出して、「これをあの黒い車のフロントガラスのワイパーに挟んできて欲しい」と言うのです。しかし、駐車場の入り口は深夜のため、シャッターが閉じられ施錠されていました。オバさんは入り口のシャッターを乗り超えることができないので、私に乗り越えてマッチ箱を置いてきて欲しいと懇願したのでした。

 深夜の無人の駐車場にマッチ箱?。なんか怪しすぎる・・・。意味が分からない・・・。そのとき酔っぱらっていましたが、一瞬でシラフに戻っていろんな考えが頭をヨギりました。このマッチ箱の中には、車の持ち主へのメッセージが入っていて、”密会の合図”じゃないのか、とか。いや、”危ない薬”の密売に絡んだメッセージ?、など良からぬ妄想が次から次に浮かびました。結局、オバさんの要求通りにマッチ箱を置いて、ダッシュでアパートに戻りました。

 それから、1週間程度は新聞やニュースに敏感で、何か変わったことは起きていないかと、ビクビクしていました。しかし、時が経つと徐々に忘れていきました。でも、”真知子巻き”を見ると、この”不思議な体験”を思い出します。今の人は”真知子巻き”なんて知らないだろうなぁ。

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