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自閉症児親の会を通して思うこと

先週地域のファミリーセンターで毎月1回行われている自閉症の親のネットワークミーティングに参加してきた。そのグループは、2023年から私たちのケースを担当して下さっているFamilie rådgiver と呼ばれる家族支援専門員の方が、率先して作って下さったネットワークグループ。地域で彼女が担当しているケースの中から、子供が同じ年代で、良く似た自閉症スペクトラムの特性を持ち、さらに不登校という問題を抱えている親を一堂に集めてくれたのだ。

最初の3回めまでのミーティングでは、専門スタッフの運営でお互いの自己紹介をしたり、現在の自治体での不登校支援の実情を聞いたり、自治体のソーシャルワーカーを呼んでの質疑応答の場を設けて下さったり。そのあとは昨年の夏ごろより毎月1回場所を提供して下さり自分達で運営していく形となって現在に至る。

少し話しはそれるが、デンマークでは、子供が産まれると、同時期に出産した親達を集めて、マザー(またはファーザー)グループというのを自治体が設定してくれるが、それに良くにている。ただ、そのマザーグループは赤ちゃんが成長していくに連れて、それぞれ親の子育ての興味や方向性も変化して行き、少しずつ自然に離れていってしまうことが多い。

一方今回のネットワークグループは、まだ開始半年であるがお互いが打ち解け、理解共感し合い、時には一緒に涙して日々の困り事を話しが出来るようになってきている。ここでしか降ろせない荷物がそれぞれの家庭にはあるのだ。現在は我が家を含めて5家族。日本人はもちろん私1人なので、時々わからない表現や、早口で聞き取れないことがあるのは否めないけれど、それでもみんながお互いの置かれている家庭内の状況を察することが出来、相手の辛い気持ちに寄り添い、また自分の苦しい気持ちも話すことが出来るこの場所は私にとってとても大切な場所である。

私たち自閉症児の親の子育ての悩みは少し特殊なもので、回りに話したとしてもわかってもらえにくい。回りは良かれと思って言った言葉だとしても、時には仲の良い友達や家族からの一言に傷ついたという経験を持っている人も少なからずいる。でも、それは非難されることではなく、一般家庭には想像が出来ないから、やはりわからなくて当然の仕方ないことであると私は思っている。

そうは言っても私自身も、やはり息子が家で暴れたり、特別なこだわりや偏食があったりなど、自閉症独特なことは、回りの友人達には自然と話さなくなってきたように思う。また、回りの子供たちの成長の話しを聞いたり見たりした時に、自分の息子と全く違う世界に居るように感じて寂しくなることさえある。そして、そんな自分の心の狭さに気づき自責の念に駆られたりもする。。。

子育てをしてきた親なら誰でも、子供が泣きわめき手がつけられないという経験は多かれ少なかれしたことがあるかもしれない。でもそれが例えば夜寝る前に3時間続き、そしてやっと落ち着いた後にそこからさらに1時間、子供が叫びながら自分の頭を叩いたり壁にぶつけたりし始めるといった経験は少ないのではないかと思う。また、突然家を飛び出して外に走り出てしまったり、ドアをバリケードして立て籠ってしまうなんていう経験もあまり多くないだろう。

そういう意味では、このネットワークグループでは、家庭内で起こったどんな内容でも話せるのだ。何年か前の私の息子のように、普通学校に突然行けなくなり、過剰適応を続けて来たストレスと不安が強く、外に1歩も出れず1日ベッドで過ごす男の子。学校でのストレスとこだわりからの摂食障害が強く出てしまい、何日も何も食べずに入院してしまっている女の子。定型発達の妹が自閉症の兄におどされて精神状態が悪くなっている家族。シングルマザーで不登校の男の子と2人っきりで家にこもってしまっている母親。自閉症と一口に言ってもその個性はもちろん10人10色であり、それぞれの家族の持つ悩みは様々でとても深い。でも、聞いている私たちには、それらは特別なことではなく、どういう経緯で起こるのか、そしてなぜ起こるのかということについても、想像を及ばせることが出来るし、一緒に知恵を出し合うことも出来る。

また、このミーティングは大切な情報交換の場所にもなっている。我が家も含めて全員の子供は精神科のお世話になっており、地域の病院の情報や学校の情報、または本やセミナーなどで自分が学んだ知識についての情報なども共有出来る大切な場所になっている。私にとって、このネットワークはとても貴重で有難いグループであり、これからも末永く子供たちの成長をお互い見守って行ければいいなぁと思う。

そしてさらに言えば、私は日本での同じような境遇の親のネットワークを持ち得ていない。そういう意味では、noteを初めてから、沢山の親御さんの悩みや苦労、経験を読ませて頂く機会を得ることが出来るようになったことも大変嬉しく思っている。

もし、私がこの子を日本で育てていたら…もし、今後彼が大人になって日本で住みたいと言い出すことがあれば…この国ではこうだけど日本ではどうなんだろう…そんなことを考えたりしながら、色んな記事を読ませて頂けることは大変貴重で興味深い。そして、こうして国は違えども、色んな情報をお互いに発信し、交換し、学びあえる場があることにも感謝している。

たとえ当事者でない方がそれらの記事を目にしたとしても、文章にすることでさらに理解の輪は拡がり、自閉症の彼らが住みやすい社会へと繋がって行くかもしれない。

人は誰でも一人では超えられないことがある。そんな時はこうやってお互いが思いを吐き出したり、共有したり、励ましあったりしながら、次の一歩を踏み出して行ける力にして行けたら、もっとそれぞれの未来は明るいものになって行くと確信している。


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