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「してあげる」というよりは、「一緒にやる」方が、いい効果がある。

学校法人 電波学園
東海工業専門学校熱田校 高等課程 科長
杉本 康善 先生

「面倒を見る」ということと、「自立を促す」ということのバランス。これが難しい。

高等課程の担任になりたての頃は、とにかく熱く関わるという信条で生徒に接していたが、経験を積んでいく中で、一方向ではない、高い次元での人間関係を育んでいくことの大切さを感じたと言う。
「担任として、たとえば昼食時、家庭の事情で弁当を持っていない生徒を見かけると、作ってきてあげたくなるし実際に作ってあげたこともあった(作ったのは妻ですが…)。でも、ずっとしてあげ続けることはやはりムリ。いつかは、その生徒自身で乗り越えて行かざるを得ない時がくる。その乗り越える力が身につく前に倒れてしまわないように支えるのが役割かと思うのですが、その支えが無いと倒れてしまうのでは元も子もない…。生徒それぞれで、支え方が違うのでゴールをイメージしながら支えるのが大切ですね。できればそのゴールを生徒と共有できれば理想的なんですけど、そこまで気持ちをあげて、高い次元での人間関係を育んでいくには経験も必要かと思います。そこを、僕らのような年長者が、若い教職員を支えられるような環境を整えていければと考えています」。

生徒とガチで一緒にやれることがないかと、日常的に意識して探す。

意識面では、『面倒見のいい学園』、『ありがとう、と言われること。』を捉えていて、全学的にも浸透はしてきているが、いざ日常の現場でどう行動するかが課題でもある。この点について、杉本先生はこう語る。
「ガチで生徒と一緒にやれることを日常的に探してますね。例えば、一緒に掃除するとか。初めは知らん顔してサボっていた生徒も、僕が一生懸命やってるのを見てなんとなく『仕方ないか…』としぶしぶ掃除を始めるんです。こっちも嬉しいし、生徒にしても照れくさいながら、サボってるより掃除くらいちゃんとやった方が気持ちいいと気づく。昼の休み時間にやったドッジボールなんかもけっこう燃えますね。本気でやるんですよ。生徒と“楽しい時間を共同でつくる”みたいなことをやれるチャンスがあれば、一歩踏み込んでやってみると絶対に良いと思う。他教科の様子を教室へ見に行き、授業が分からずつまらなさそうにしてる生徒に、授業が終わってから『どこか分からん?』と突っ込んでみるんですよ。こっちも専門外ですから、ぱっと見ではよく分からないのですが一緒に教科書を見て、一緒に考える。そうすると『なんだ、そういうことか!』と理解できて、達成感を共に味わえたら、お互い単純に嬉しい。そんな時間を過ごせること自体、自分にとっても楽しいことだと感じます。“遅れてきた中学生”そんな感じがするんです。何らかの事情で、幼少期から小・中学校時代に経験しておくべきことができていない。何か足らないと感じる、勉強・情操教育両面で。追っかけてもう一度やり直す場としても機能する。それも重要なことかと思います」。

体育祭で生徒たちが演じた「エッサッサ」

行事なんかは、大きなチャンスかも。

「文化祭・体育祭なんかは、最高のチャンスですね。学年対抗の応援合戦で、私の母校日体大伝統の“エッサッサ”をやったんですよ。本来上半身裸でやるんですが、生徒たちは嫌だと引いたので強要はしませんでした。Tシャツで練習してたんですが、けっこう真剣に一生懸命やるんですよ。どんどん良い感じになってきて、褒めると益々良くなる。本番当日、リーダーの生徒が『Tシャツ脱いでやろう!』って言いだして、みんな盛り上がって上半身裸でやったんですよ。感動するものができましたね。観衆も盛り上がって、終わってからも『最高だった!』とたくさんの生徒や教職員に言ってもらえて、すごく嬉しかった。この喜びを、演じたメンバーと共有できたことがまた最高でしたね。してあげる、教えてあげるというより、一緒に何かを達成する。これは、いい効果を生み出す一つの教育メソッドであることは確かですね」。
杉本先生自身が実践されてきた行動は確かに参考になる。でもこれは、「杉本先生だからやれるんだ。現実は、中々難しい」という意見もあるだろう。しかし、教職員の日常の過ごし方へのスタンスを少し変えることで、誰でも実践できるチャンスはあるはずだとも杉本先生は語る。

愛は届くと信じ切る。怖がらずに注ぎ続ける。

「とにかく、愛は届くと信じ切る。裏切られるのが怖いから、つい二の足を踏んでしまうことがあるけど、恐れずに注ぎ続ける。やっぱり、裏切られたかなと思っても、後になって実際には届いていたんだと感じることがけっこう多いんです。生徒にとっての、ちょっとした成功体験や達成感が、その生徒の人生を大きく好転させることも多分にあるんですね。これって、すごく素敵な仕事じゃないですか。色々困難な日常ではありますが、『情熱を持って愛を注ぎ続けられる』。そんな環境を生徒、教職員みんなで創り上げられるような学園として進化し続けたいですね」。

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