最近さんまをさんま師匠と呼びはじめるほどお慕い申しはじめておるので、昨日「誰も知らない明石家さんま」を見ててキャッキャしてた。

ところで、この雑記は「これこれこういうことがあって～、これってこうじゃね？」って感じで書いてるパターンが多いんだけど、今日は「こうじゃね？」を先に書いておこう。

それが、オレの現世での最師匠である、ドリアン助川さんの造語である「積極的感受」である。

ドリアンさんも、いまでこそ『あん』が23カ国後に翻訳されるなどして作家としては大成功してるけど、ラジオでの人生相談や、自身のバンドである「叫ぶ詩人の会」はいまいちパッとせず（ワシの感想ちゃうで。本人のモヤモヤ感）、逃げるように渡米したり、毎日数十キロを散歩しないと発狂するんじゃないか、というような日々を送っていた。

バンド時代のイカつい金髪兄ちゃんだった出で立ちからもわかるけど、彼は誰より偏屈で尖りたかった。バンドでは歌も歌わない。詩を叫ぶだけだ。
その時代を彼は「突出」と呼んでいる。関西弁で言やぁ「わががわがが」の精神だ。
ある程度の人生時間を積んだ人ならおわかりだろうが、この「わがが」状態ってのは当人の思惑に反して悲しいほどに「フツーの人」状態だ。

ハンセン病患者のことを書いた小説『あん』を書くために実にいろんな紆余曲折があった。
彼自身が自分で「これは書いてはダメなものなのでは？」と落胆したこともあれば、他者の思惑に踊らされて商品化にこぎつけられない時期もあった。
そしてそれと同じぐらいの実に数奇な偶然を経て、10年以上の時間を費やして『あん』は生まれた。

それから彼の背中を押す偶然の数々が閃かせたのだろうか。「積極的感受」の境地に至る。
つまり、ただじっと果報を待っているわけではないんだけど、受け取りにいく。そこに「俺が作ったんだ」「俺がやってるんだ」の発想はない。
自分が世界に受け入れられたいじゃなく、自分のほうが世界を受け入れに行く。世界を讃える。すると世界が応える。
これはミケランジェロの「私は石の中の（すでに形の決まった）天使を彫り出しているだけだ」や、賢治の「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです」の言葉と同じライン上の思考だろう。

ということをね、昨日のさんま師匠のおはしゃぎようを見させていただいて思ったわけですね。
彼の珍エピソードをクイズ形式で答えさせたりするんだけど、まぁそんなにみんな面白いことは言わないのよ。芸人とかは置いといて。
だけどさんま師匠はどの答えにも全部大ウケしてんだよね。膝から崩れ落ちたりして。それは溺愛してた弟が亡くなったことすら笑いに換えると決めた彼（これはホントにオール巨人の劇薬が助太刀してると思う）にしたら茶飯事なのは当然なんだな。どの答えも、ちょっとは面白いわけだから。

つまりさんま師匠は、誰もスベらさないのよね。
世間では、自分浮いてないかなとか、おかしなこと言ってないかなとか、もっと右向いて左向いてしたほうがいいのかなとか、仲間はずれにされないかなとか、いろいろいろいろあると思うんですけれども、絶対に相手をスベらさないってのは、言わばそういう不安の完全除去だと思うんだ。
「あなたが何を言っても僕は笑いますよ」っていう姿勢はまさにそういうことであり、愛そのものであり、個性の塊であるような彼が、実のところ他者を受け入れてる時間のほうが長い。
「御殿」のあの指し棒はいったい何代目なんだろうかねぇ。

これは他の著名人でもそうだね。
徹子さんは小学校退学になるほどの異端児なのに、聞く側の仕事がメイン。長寿番組「徹子の部屋」だって一度も飽きたことがないという。
永ちゃんにしても、突出の塊のように見えて「アー・ユー・ハッピー？」だし、清志郎も「愛しあってるかーい？」だし、猪木だって「元気ですかー？」だ。
ヒロトの「自分がやってる時の喜びは2番目。1番はストーンズとか、聴いてる側の時なんだ」を聞いた時には特にショックだった。個性個性個性個性思ってた自分が、なんと浅いのかと思い知らされた。
もちろんみなさん「伝えたい」ってのは人並み以上にあるんだろうけど、それはそれ以上にたぎってる、人並外れた「受け取りたい」「知りたい」があって初めてなせる業なんだろうね。

「愛せば愛される」ってよく聞くけど、これはその対象に先におこなうから、その本人からの返礼として、ってことではきっとないんだろうな。
なんかもっと別のところから返ってくるんだろう。

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【今日の過去詩リーズ】