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ホン雑記811「神のストッパー」

オレは原発については中立派だった。


いまのままのエネルギー量では、とても民の暮らしのレベルを維持できない、コストもかかる、効率も悪い、だからしょうがない、ってのが中立のひとつの理由。
もうひとつは、ロッカーっぽい人たちが金太郎アメみたいに「原発はイヤだ」って叫んでるのに対して、「なんかトガってるっておっしゃるわりにみなさん同じテーマなの?」ってのと「そんなおまえが原発がなぜ、どれほど、どのようにヤバいのか分かってって言ってんのか」って思いがあって、中立にまでなってる感じ。
後半のほうは爆笑太田が平将門の首塚にドロップキックした感覚に似てるかもしれない。

で、坂本龍一氏は反原発派の強力なひとりだったわけだけど、それに対しても「ふーん」な感じだった。別にイヤミな「ふーん」じゃなくて、そういう活動をしてるんだねーって感じで、どっちかといえば微妙にそっち派の人を好きだったかもしれない。

んで、あぁ、そうそう、やっぱりあまり原発はよろしくないかもしれないってこと。
これは直接的な意味ではない。


多細胞生物はその細胞を分裂させていくが、ほとんどの細胞はそのコピー回数が決められている。
染色体の端っこにテロメアという部分があり、「元の細胞と同じようにコピーできますが回数は制限させてもらいますよー」ってことをやっている。つまり細胞は無限に増えることはできないのだ。

が、なかには、減っていくテロメアをリセットさせるテロメラーゼという酵素を持つ細胞がある。「あと3回しかコピーできませんよー」というところを「あと10回に戻しておきましたよー」というチート機能を持つものだ。

生殖細胞がそれにあたる。
子供を作るのに使われる細胞の総称だけど、たしかにこいつはコピー回数を戻してもらわないと困る。
人間が80歳ぐらいまで生きるとして、コピー回数まで遺伝されたら、親が30歳の時に生まれた子は50歳ぐらいまでしか生きられず、70の時の子であれば10歳までしか生きられないことになる(んだと思う)。
だから生殖細胞は新世代ごとにリセットされ、どの世代もだいたい同じような寿命まで生きる。

もうひとつ、テロメアを復活させ無限に生きる細胞がある。
それがガン細胞だ。極めて私見だが、このことを「何たる天のジレンマ」と取るか、「まっすぐな道のり」だと取るかで、その人の人生観がわずかに垣間見えるような気がするな。

ガンは正常な体細胞のコピーミスの連続によって起こる。健康な人でも日に5000個のガン細胞が生まれている。我々が健康でいられるのは、毎日それ以上の数のガン細胞がTリンパ球やNK細胞によって攻撃されているからだ。
ところがコピーミスを繰り返し、れっきとしたガン細胞になってしまうと、元の正常な体細胞よりも遥かに強くなってしまう。不老不死性を高め、移動することもできる。

ガンは悪ではない。悪玉菌や、戦争や、失敗や、やけどや、後悔や、痛覚など、そんな類のものと同じだと思っている。つまり「それがイヤなら方法を変えなさい」ということだ。痛覚なんかは最たるものだ。痛いのはイヤだけど、それがなければいまより遥かに健康を脅かすことになる。

で、原発に戻ってくるわけだけど、致命的な放射線被曝は一瞬で、多量の細胞のコピーミスを引き起こす。遺伝子を書き換える。
高濃度の被爆者に皮膚を何度移植してもあっという間にただれ、しばらくして亡くなったという経過の写真を見たけどそれはもう悲惨だった。
遺伝子を書き換えられた、「破壊される細胞」がコピー元になるため、それを回復させることはもうできない。


これはオレの個人的な考えだけど、自然だか神だか天だか知らんけど、そんなものに意思があるとするなら「使わないなら滅ぼすよ~」ってお仕事がひとつあると思う。
人間のすでになくなったシッポがいい例だけど、思い浮かべるだけでも他にごまんとあるだろう。
脳とか筋肉もそうでしょ。蛆が湧くのだってそうで、「そんなとこで寝っ転がっててもしょうがないんで腐らせて他にエネルギー回すよ~」ってとこだろう。そうして次なる生命の土壌(文字通り「土」がそう。土のある星は地球しかない。他の大地のある星は岩や砂や粘土)になる。

で、これの逆で「やり過ぎたら滅ぼすよ~」ってのもあるのかなと思った。ガン細胞のテロメラーゼのジレンマや、放射線がガン細胞を急ごしらえするってのがもう、痛みと同じような「教え」としか思えないんよね。
魂の立ち入り禁止っていうかね。で、こういうことって別に罰じゃないと思うんだよ。

涙や悲しみや非効率や貧困や病や老いや失敗を「良くないこと」だと思い込まされた我々のほうが本当はだいぶ狂いはじめていて、死はその最たるもので、そしてそれでもまだ気づかないから、最近は「生」すらも喜ばしくないような感じになってきた。それを教えてくれてんじゃないのかなと。
病症は「個=全をあまりにも忘れてしまった」ことか。

ホリエモンが「子供は負債」って常々言ってるけど、それの何が狂ってるのか、どれほど狂ってるのか、当人にはもうわからないんだろうな。名を挙げるとキリがないんで「わかってるつもりの人」たち、には。

彼のような人と、もっとも「土」に近い人の間にいる我々も同じ方向をきっと向いていて、だからホリエモンやらガーシーやらの人種を誰も笑えないんだと思う。
彼らが気づかないように、「人はこんなにも気づかないんですよ」と身をもって教えてくれてるように、彼らに学ばないといけない。

間にいる我々のうちのひとつに、マスメディアがあるか。彼らも昔はもっと私利私欲ではなく情動によってスタンスを決めていた。いまは、カネ、自己拡大以外に行動原理が見当たらない。何かを失ったんだろう。

さらにいまの一般的な人の平均は、そのメディアと「土に近い人」の間あたりにある気がする。だからメディアも叩いたり笑ったりする相手ではない。
反面教師とはただの皮肉語ではなく、真の教師だとそろそろ知らないといけない。反射的に誰かを叩いてしまったら「おまえはどうなんだよ」と指を自分に向けたい。

思えばオレも子供の頃よりは「わかってるつもり」が増えてきた。いまの地球は増えやすい環境だろう。
ちょっと調べて、プロではない者がプロをつかまえてプロのような口を利ける…利けると錯覚する世界にどんどんなってきた以上、「自分はどうだ?」と問うのはあまりに難儀な所業になってきたと思う。

「やりすぎたら滅ぼす」その方法は、核などの外的脅威ではなく、
「もう分裂したくない」
「もう次代に伝えたくない」
「もう生まれたくない」
といった「情動の消滅」という自滅であるような気がする。


オレ的には、ここで大きく狂いはじめたのかなと思う時点がふたつある。
ひとつはお金が生まれたこと。
ひとつはインターネットの普及。
共通点は、肉体をもって行われていた「循環」を大がかりに手放した時期であると思う。




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【今日の新作詩リーズ】

最近嫁関係ばっかり。ま、しゃーないわな。




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