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2週間毎日瞑想して脳波を測った結果

先日脳波計OpenBCIを購入しこんな記事を書いた。

それから約二週間、毎日瞑想をしながら脳波を計測したので記録を残しておくことにした。

瞑想と脳波といえばMuseが有名で、自分も使ったことがある↓

が、この手の製品って脳波の波形など細かい情報が分からないので、普段脳のことをやってる院生的にはあまり面白くない。

そこで先日OpenBCIという15万ぐらいする脳波計を買って毎日脳波を測っては解析するようになった。

(厳密にはMuseを使って脳波の波形を取り出して解析したりすることもできるが、色々と障壁があって難しい)

瞑想と脳波

ちょろっと前置きしておくと、瞑想をすると結構集中力が上がるとか、ネガティブ思考が改善するとかいろんな効果が指摘されている。

で、それに伴って瞑想をしているとどんな脳波が出るのか?瞑想の熟達者はどんな脳波なのか?っていう研究も結構行われていたりする。

そこで、自分が瞑想してるときに本当にそれらの脳波が出ているのか?というのを検証することにした。

瞑想のやり方はいろいろあるが、ここでは5分間目を閉じてひたすら呼吸に意識を向け、雑念が浮かんだらまた呼吸に意識を戻すというサマタ瞑想を採用した。

1日目

脳波について細かい説明をしておこうかと思ったけど、まあ面倒なので結果から。

記念すべき最初の瞑想。

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不慣れなPythonで図がダサいですが、、とりあえず解析できればいいの精神で。

まあよく分からないと思うんですが、脳波を周波数分解した図です。

線が7本あるのは電極の数。右上に説明があるが、1チャンネルが青、7チャンネルがピンク。が、まあいろんな脳領域から計測しているということで細かいことは置いておく。

横軸は周波数(Frequency)、縦軸はその波の強さを示すPower Spectral Density。

とりあえず8Hz, 17Hzぐらいのところに山があるのが分かる。

8Hzの脳波はいわゆるアルファ波で、1秒間に8-13回周期の波を指す。目を瞑っていると強く見られる脳波。

17Hzぐらいの脳波はベータ波。14-30Hzぐらいの脳波をベータ波と呼び、俗なサイトでは集中していると強く出ると言われることが多いが、そういう論文もあまり見ないしあまり信じていない。むしろ一番よく分かっていない脳波だと思う。

要するに僕が5分間瞑想をしているときには、脳全体でアルファ波とベータ波が強く出ていたということになる(オレンジ色の線だけ浮いているのは接触不良)。

その時間変化はこんな感じ。

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横軸が時間、縦軸が周波数、その脳波が強ければ黄色になる図。

縦に黄色い線が入っているのは通信不良っぽく、たまに脳波計とPCのBluetooth接続が悪くなっているっぽい。

概ね後半に行くにつれて10Hz近辺のアルファが強くなっているように見えるが、まあ基本的にはずっとアルファとベータが目立つ感じ。

実はこの結果をみて落胆した。

というのも、瞑想の熟達者は瞑想中に前頭葉近傍でシータ波(4-7Hzの脳波)やガンマ波(30Hz以上の脳波)が観測されることがしばしば報告されているのだが、自分の脳波からはそれがほとんど観測されなかった。

今回の脳波はただの安静閉眼時とさして変わらない脳波だった。

ちなみに普通に安静閉眼しているときの脳波は(日によってまちまちだけど)こんな感じ。

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安静閉眼時と瞑想時で脳波がほとんど変わらないので、全然瞑想できてないのかもしれないと気づく。

2日目

ということでまずはシータ波とガンマ波を出すべく毎日瞑想に取り組むことにした。

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同じく瞑想を5分やった結果。

32Hz付近にうっすらと山が立っているように見える。

先行研究で指摘されるガンマ波の帯域なので「お!」と思ったが、日によって強く出ることもあれば、単に安静にしているだけで出ることもあり、解釈できていない。これから要観察という感じ。

他は1日目とあまり変わりがない。

3日目

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あまり変化はないが、前頭葉(青線)でうっすら6Hz付近の山があるようにも見える。

6Hzはシータ波。

瞑想熟達者では前頭葉のシータ波が瞑想中に強く出るという報告が多いため期待感を持つ。

4日目

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いつもの瞑想よりも意図的にかなり集中しようとした日。

いつもどおりのアルファ・ベータの山に加え、これまでよりも明確にシータ・ガンマのピークを観測することができた。

かなり集中しようとした結果、脳波にもそれが反映された感覚で結構喜んだ。

余談だけど読書とかしているときの脳波はこんな感じ↓

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基本的に目を開けて何かに集中するとアルファ波やベータ波は弱くなる。

また30Hz以上ぐらいの高周波帯域については筋電によるノイズ等が乗りやすく、安静時でないと一概に解釈するのは結構難しい。

6日目

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5日目は計測できていなかった。

この日は32Hzのガンマは見られるが、シータ波は観測できない。

うっすら25Hzぐらいのピークがあるが何かは不明。

7日目

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なんとなくシータ波のピークがあるようなないような。

32Hzのガンマは明確だが、安静時でも出たりするので単純ではない模様↓

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これは安静閉眼時の脳波だけどガンマ波が見える。

8日目

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シータ波はまあまあ出ている。

あとベータ波がいつもより弱いが何を意味しているのかは分からない。

9日目

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シータが明確になってきた?

ガンマ波もまあまあ出ているように見える。

10日目

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気分的にはすっきりしていたしうまく集中できた気がする日だが、シータもガンマも出ていないため首を捻る。

11日目

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前日に続きガンマもシータもそれほど強くなく、不安になる。

12日目

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ただの安静脳波にしか見えない。早くもスランプかと思う。

13日目

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この日もシータ・ガンマともに見えない。

やり方がまずいのかと思い、心を入れ替えて死ぬほど集中して全ての呼吸に意図を介入させる感覚でやってみることにした↓

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結果ガンマは見られないが、明確な前頭葉のシータ(青線の6Hzぐらいの山)を久しぶりに観測することができた。

それに加えて、腹式呼吸をすると強くなるという高周波帯域のアルファ波(11-13Hzぐらい)のピークもうっすらとみえる。

これをみて結構自信を取り戻す。

と同時に、瞑想をするときには死ぬほど全精力を集中させるぐらいの意識でやるべきなのかもしれないという気づきを得た。

まとめ

毎日瞑想をしているときの脳波を測ると結構色々な気づきがある。

毎日概ね同じような脳波だけど、日によって強い脳波が違ったり微妙に周波数帯域が違ったりするし、少し瞑想の意識を変えるだけでも現れる脳波が変わってくる。

こういう、自分の脳波を可視化するというのはいわゆるニューロフィードバックなんだけど、Museのように加工された状態(機械学習によって判定された瞑想状態を鳥の鳴き声でフィードバックする)なのと違い、生に近いデータを毎日みられると細かい気づきが得られる。

引き続き脳波計測を続けつつ、脳波解析には他にもいろいろな物があるので徐々に取り入れていく予定。

本当はそもそも脳波ってなんなのかとか、神経細胞が1秒間に10回ぐらい振動してるってどういうことなのか的な話も書きたいので、いずれ気が向いたら書きます。


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