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#024:システム思考の法則

兵庫県神戸市を拠点に活動しております「まじわるデザイン」代表の戸田裕之です。
「ムダをなくしたいだけ」です。

前回に引き続き、「学習する組織」から抜き書きをします。
あらためてじっくり読んでみると、改善を考えるヒントが大量にちりばめられています。

今回は、第4章「システム思考の法則」(P108以降)からの抜き書きとコメントです。
「」でかこっている文章が「学習する組織」からの引用部分です。

センゲさんは、学習する組織の5つのディシプリンのうち、システム思考を特に強調して「要」と呼んでいます。
(5つのディシプリン)
➀システム思考
②自己マスタリー
③メンタル・モデル
④共有ビジョン
⑤チーム学習

・「システム思考は、私たちの通常の問題対処法に比べて、より困難であると同時に、より希望がもてるものなのだ。」(P116)
システム思考を推していることが、学習する組織の魅力であり、かつ、難解だと敬遠される原因かもしれません。
本の最初1/5ほどのところに世の中の「問題あるある」とシステム思考的な対応をまとめたところがあります。わかりやすいので今回はここを抜き書きしました。
なんでもかんでもループ図を書いて熟慮しようということを主張しているわけでもなく、この問題は構成要素が多くてむずかしそうだとか、いろいろやってみたけどうまくいかないというときに、問題解決のやり方の選択肢の1つとして役立ちますよというつもりで見てください。

➀今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる
・「問題を、単にシステムのある部分から別の部分へと移動させただけの解決策は、たいてい気づかれずに継続される。なぜなら(中略)、最初の問題を「解決した」人と、新たな問題を引き継いだ人が異なるからだ。」
→場当たりでやっていると、問題解決ができないだけでなく、新たな問題を発生させます。わかってはいるけど、特に根拠もなく何もしないのはまずいと考え、なんかやってしまう。そうすると、他の人が迷惑を受ける。

②強く押せば押すほど、システムが強く押し返してくる
・「私たちの当初の努力が、長く続く改善を生み出すことができなかったとき、私たちは(中略)より強く押し続け、その間ずっと、いかに自分自身がその障害の原因になっているかに気づかずにいるのだ。」
→システムの挙動は単純ではないということを考えずに、何かやればすぐに効果が出るはずだと考え、効果が出ないとさらに同じことを繰り返していると、ますますひどいことになってしまうというこれもよくある話です。

③挙動は悪くなる前に良くなる
・「典型的な解決策は、それが当初症状を改善したときには、すばらしいものに思える。前よりも良くなる、または、問題がなくなることすらあるかもしれない。問題が戻ってきたり、新たな、もっと深刻な問題が現れたりするには、2年か3年、あるいは4年かかることもある。」
→たまにはうまく行くこともあります。とはいえ、熟慮された解決策でない場合は、長い時間がたってから副作用である別の問題が顕在化します。

④安易な出口はたいてい元の場所への入口に通じる
・「私たちは皆、気がつくと、問題に対して見慣れた解決策を当てはめることに安らぎを覚え、自分が最もよく知っていることに固執している。」
→少なくとも表面上の成功体験があった方法は、実証済だということで、繰り返し使いたくなります。悪いことではないですが、「これしかない」という思い込みはよくないですし、継続して改善することも大切。もちろん、システム思考だけが唯一無二の方法だとも言えません。道具のこともよく考えようということです。

⑤治療が病気よりも手に負えないこともある
・「どの分野であれ長期的な解決策は、ドネラ・メドウズが言うように、「システムがそれ自身の問題を引き受ける能力を強める」ものでなければならないということだ。」
→治療=外部からの働きかけが、常に良くないわけではありませんが、問題解決の対象になるシステムには、通常、自分たちでなんとかする力があるはずなので、そちらを強めることを考えた方が、本質的解決につながりやすくなります。

⑥急がば回れ
・「生態系から動物、組織まで、ほぼ全ての自然のシステムには、本質的に最適な成長率というものがある。最適な成長率は、可能な限り最速の成長率よりもはるかに小さい。」
→世の中、大きな成長率のいわゆる成功事例にあふれてますが、あせるとよくないことが起きる可能性もあることを覚えておきましょう。

⑦原因と結果は、時間的にも空間的にも近くにあるわけではない
・「複雑なシステムにおける現実の性質と、その現実についての私たちのごく一般的な考え方の間には、根本的なずれがある。そのずれを修正する第一歩は、原因と結果が時間的にも空間的にも近くにあるという考えを手放すことだ。」
→トレーニング用に単純化されたものごとであれば原因と結果はそばにあることになっていますが、それでは済まないことも実世界には存在します。対象の挙動に違和感があるときは、普通はこうだろうと考えている前提を疑ってみると何か見つかるかも。

⑧小さな変化が大きな結果を生み出す可能性がある-が、最もレバレッジの高いところは往々にして最もわかりにくい
・「難題に取り組むということは、高いレバレッジがある場所、つまり最小限の努力で、持続的に大きな改善を引き起こすであろう変化を見つけることである場合が多い。」
→問題はたいていの場合、放置されていたわけではなく、それまでに解決しようとされてきたはずです。従って、簡単なところに大きな効果がある解決方法が残っているとは考えにくい。なので、ゼロベースで全体を捉え直してみることで、意外なところに押しどころが見つかるかもしれません。

⑨ケーキを持っていることもできるし、食べることもできる-が、今すぐではない
・「一見ジレンマと思われるものの多くは、静態的思考の副産物である。これらが融通の利かない「二者択一」であるようにしか思えないのは、私たちが、ある固定された時点で何が可能かを考えるからだ。」
→表題の例は意味がわかりにくいですが、本の中の例で言えば、コストダウンと品質向上は、ある時点だけを考えると、どちらかしか選択できないように見えますが、ある程度の期間で考えるなら、両方を成立させる方法もありえるという意味です。

⑩一頭のゾウを半分に分けても、二頭の小さなゾウにはならない
・「生きているシステムには全体性がある。その性質は、全体によって決まる。組織にも同じことが言える。最も困難な経営上の問題を理解するためには、その問題を生み出しているシステム全体を見る必要がある。」
→そんなことしないと思うかもしれませんが、組織全体を○○部と△△部に分けて、それぞれ関連をもたせずに別々の改善案を考えるようなことはしょっちゅうあります。それでは、かわいそうなゾウさんは死んでしまいます。

⑪誰も悪くはない
・「あなたも、ほかの誰かも、一つのシステムの一部なのである。解決策は、あなたとあなたの「敵」との関係の中にあるのだ。」
→どこかに「悪い」ものや人がいて、それを見つけて除去するというだけの単純な問題解決の考え方では、複雑な問題は解決できません。全体の構造を理解して、何をどうすれば何がどうなるかを見出し、望む未来を創り出すことがシステム思考です。

写真は、香川県琴平町にある象頭山(ぞうずさん)です。左側が鼻で、写真中央の目のあたりにある建物が金刀比羅宮さま(ことひらぐう、こんぴらさん)です。
===誰一人取り残さない===

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