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根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_03

前回の記事では、システミックデザインフレームワークの5つのパートのうち、①オリエンテーションとビジョン設定 ②リーダーシップとストーリーテリング ③つながりと関係性 ④旅の継続について説明した。
前回の記事はこちら

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この記事では、中央のダブルダイヤモンドが示す、デザイン活動を紹介する。ダブルダイヤモンドは、2004年にデザインカウンシルで発表され、世界的に知られているデザイン活動のフレームワークである。新しいダブルダイヤモンドは、システミックデザインを前提として再定義されている。

特に注目すべきは、DISCOVERがEXPLORE(探究)に、DEFINEがREFRAME(リフレーム)に、DEVELOPがCREATE(創造)に、DELIVERがCATALYSE(触媒作用)に変更されている点である。より包括的に、より深く、そして関係者とともに変化を起こすことが目的となっている。4つの活動は循環しており、一つひとつのプロセスは複雑である。

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では、それぞれのデザイン活動を見ていこう(原文はこちら:Systemic design approach 2021)。

EXPLORE 探究
(旧ver.:DISCOVER 発見)


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デザインプロセスを通じて、何が起こっているのかを深く広く探り、問題の根本的な原因を突き止め、再利用や構築が可能なアイデアやリソースが既に存在するかを検討し、未来がどのようになるか、大胆で希望に満ちたビジョンを描く必要がある。デザイナーとして、私たちは自分の立場を省察し、歴史的に社会の主流から取り残された人を含め、自分たちとは異なる視点を積極的に取り入れなければならない。

具体的には:

• 既存のシステムを掘り下げよう。あなたのプロジェクトのアプローチと関連する要素を見直そう。これまでの構造やフレームワークはどのようにして生まれたのだろうか?どのような仮説に基づいているのだろうか?

• 異なる視点を持つ人々、特に社会の主流から取り残された人々から、さまざまな種類の知識を集めよう(例えば、専門家の意見や証拠、空間データ、さまざまな種類の生活体験、素材の知識や自然からの学び、システム内の権力や関係性の理解など)。

• システムマッピング、サプライチェーン分析、循環型フローなどのプロセスを通じて、ものごとがどのようにつながり、関係しているかを探ろう。力、関係、目的などの「目に見えない」ものを探し出そう。

• 可能性を明確にしよう。新しい技術や既存の素材や資産、これまで忘れられていたり見過ごされていたり、十分に活用されていなかった仕事を、マッピングしたり細かく調べたりしよう。

• つくることから始めよう。プロトタイプをつくり、何が機能するかを試すと同時に、それを取り巻くシステム(例えば、人間関係、力関係、変化に対する抵抗など)を明らかにしよう。

REFRAME リフレーム
(旧Ver.:DEFINE 定義)

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より平等で再生可能な世界への移行は、現在の考え方から脱却することを意味する。それは、新しい価値観を反映し、私たちの行動を変容させる製品、場所、サービスを創造することだ。私たちは、新しいアイデアのきっかけとなるように、問題をさまざまな方法で捉えなおす時間と許可を与えなければならない。

具体的には:

• 人を集めて、インサイトを統合しよう。

• 可能性を別のレンズで捉えなおそう(例えば、異なる目的や目標、あるいは再生や持続可能な価値観で)。

• 新しい目標や目的を中心に、新しい組織や異なるタイプの人間関係でシステムを再構築しよう。「この場合、ほかにどんなアイデアがあるだろうか?」「この場合、どうしてこうなったんだろう?」と問いかけよう。

• いろいろな機会やさまざまな課題を特定しよう。このことが、ある特定の分野に焦点を当てることを意味するかもしれないし、範囲を広げてどのようにものごとがつながり、複数のグループに影響を与えるかを示すことを意味するかもしれない。しばらくの間、この複雑さを保とう。

CREATE 創造
(旧Ver.:DEVELOP 開発)

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関連する活動につなげ、デザイナーがより大きな目標に向かって進めるような行動やアイデアを生み出そう。小さな実践的なステップもあれば、決して実現しないかもしれないが、人々が可能性を再考するのに役立つ大きな大胆なアイデアもある。つまり、大きく考えるということだ。

具体的には:

 • 関連する活動のリストをつくろう。システムのさまざまなレイヤーでアイデアを生み出そう。
  ー製品、サービス、場所
  ー政策、規制、基準
  ーナラティブや文化的マインドセット

• すべてのアイデアを開発して提供できないかもしれないが、それができる人との関係をつくることはできる。

• 循環型の考え方を取り入れよう。既存の素材を再利用し、関連する活動と融合させ、自分が生み出したアイデアから何が生まれるかを考えよう。「この場合、ほかにどんなことが考えられる?」と問いかけよう。

• 大胆、過激、挑発的なアイデアを許容しよう。答えにはならないかもしれないが、より大きな疑問を投げかけ、さらなる革新を促す。

• より再生可能な世界へと移行するために、どのような行動が最も価値があるのか、優先順位をつけるために試作しよう。一見小さなことでも、大きなインパクトを与えることができる。例えば、ルールや目標(例:ネットゼロ)、現状を打破する新しい考え方の潮流(例:ビーガン)などのレバレッジポイント、達成しようとしている大きなビジョンに命を吹き込むもの 、同じようなことをしている人たちを巻き込むプラットフォームである。

CATALYSE 触媒作用
(旧Ver.:DELIVER 伝達)

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デザインとは、ものをつくることと関わることだ。システム的に考えると圧倒されることが多いので、ものをつくるることで前に進める。新しいビジョンがどのように見えるか、どのように感じるかを具体的な方法で人々に示すことで、そのビジョンを支持したり、自分のアイデアを加えたりすることができる。アイデアのプロトタイピング(またはモックアップ)は、それがどのように機能するかを試し、関連する活動とどのようにつなげるかを探り、そこから何が発展または生み出されるかを確認する重要な方法である。

具体的には:

• プロトタイピングは検証を繰り返し、アイデアから何が発展するかを確認するために使おう。オープンマインドでいよう。

• システム/サプライチェーンや、社会の主流から取り残されたグループや自然生息地を含むさまざまなステークホルダーグループの影響を検証しよう。

• あなたがつくっているものが環境や社会にどんな影響を与えるかを判断するための一連の評価基準(質的・量的)をつくろう。

• 持続可能なスケールについて考えよう。あなたの素晴らしいアイデアが悪影響を与えないよう、持続可能なビジネスモデルを使おう。

• ストーリーを語ろう。自分の物語をつくろう。そうすれば、他の人が参加したり、自分のアイデアに火をつけたりできるようになる。自分のアイデアと、ほかの類似あるいは関連したアイデアと結びつけて、変化のためにより大きな動きを生み出せることを理解しよう。

おわりに

ここまで、デザインカウンシルが発表したシステミックデザインアプローチを紹介してきた。従来のダブルダイヤモンドと比較して大きく異なるのは、デザインプロセスの終着点(アウトカム)が設定されておらず、循環するフレームワークとなっている点でもある。これまでのデザイン行為が特定の成果へと収束するように設定されていたことに対し、システミックデザインアプローチでは、オープンエンドな状態として捉え直されている。言いかえれば、複雑で流動的な社会状況を背景にデザインすることは、状況に対して柔軟で持続的な活動であることが求められる。広範なネットワークの一部として、多様な人や組織、生命、地球と共にデザインを進めること。システミックデザインアプローチはそうした持続可能な未来社会のためのデザインを下支えしてくれる。

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