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根本から変化を起こす「システミックデザインアプローチ」_02

前回は、英国のデザインカウンシルが提案するシステミックデザインアプローチの概要について説明した。 システミックデザインの指針となるの6つの原則や4つの役割、デザインプロセス全体に通底する4つの実践思考について述べた。
前回の記事はこちら

この記事では、システミックデザインのデザインプロセスを紹介しよう(原文はこちら:Systemic design approach 2021)。

プロセスには、次の5つのパートがある。

  • ORIENTATION AND VISION SETTING
    オリエンテーションとビジョン設定

  • LEADERSHIP AND STORYTELLING
    リーダーシップとストーリーテリング

  • CONNECTIONS AND RELATIONSHIPS
    つながりと関係性

  • CONTINUING THE JOURNEY
    旅の継続

  • DESIGN ACTIVITIES
    デザイン活動

「オリエンテーションとビジョン設定」は最初に、「旅の継続」は最後に行う。フレームワークの中央には、ダブルダイヤモンドで表現される「デザイン活動」がある。デザイン活動には、4つのプロセス(探究、リフレーム、創造、触媒作用)があり、直線的に行うこともあれば前後にループすることもある。
では、各パートを順に見ていこう。

ORIENTATION AND VISION SETTING
(オリエンテーションとビジョン設定)

仕事の始め方が結果を左右する。持続可能で公正かつ公平な社会をともに実現するためには、私たちの世界を根本的に見直すことが必要だ。

複雑な環境問題や社会問題は、固定的なものではない。つまり、単純に「解決」できるものではないのだ。自分の仕事を「問題と解決」としてとらえるのではなく、何を達成したいのかという希望に満ちたビジョンからスタートし、そこから明確なミッションを展開していくべきである。

ポジティブな価値観に基づいてプロジェクトを開始すること、その価値観をパートナー間で共有することが重要だ。最初に、チームメンバーやステークホルダーと時間をかけて信頼を構築することで、いつでもその価値観に立ち返ることができる。

具体的には:

  • 仕事に対する人々の個人的なつながりを生み出し、理解しよう。「なぜ私たちはここにいるのか」と問いかけよう。その答えがプロジェクトの推進力となる。

  • あなたの組織の大きなシステムを理解しよう。組織の歴史、社会的な価値観や前提を考慮しよう。

  • 誰もが目指すことのできる希望に満ちたビジョンをつくろう。例えば、国連の「持続可能な開発目標」を参考にするなど、明確に定義され、共有された用語や言葉で表現しよう。

  • 仕事の指針となる価値観やデザインの原則を策定したり、仕事の捉え方を変えよう。まずは、私たちが提案した6つの原則から始めてみてはどうだろう。

  • 自然をプロジェクトのステークホルダーとして扱い、人々が自然と触れ合えるような体験をどのようにつくり出すかを考えてみよう。

  • 環境的、社会的、文化的な変化が起きていることを示すために、何を評価し、測定し、気づくべきかを理解しよう。

LEADERSHIP AND STORYTELLING
(リーダーシップとストーリーテリング)

誰でもリーダーになれる。それは、個人の行動や組織の中での立場から始まる。リーダーは、自分の価値観に根ざしたビジョンを提示する。ストーリーを見つけて共有することで、より広いシステムに影響を与え、鼓舞するために、常にビジョンを持ち続けている。

具体的には:

  • 最高の状態でいられるようにセルフケアをしよう。

  • 仕事を通して自己内省と学習を行おう(うまくいかなかったことも含めて)。

  • 仕事を推進する目的につながり、全体の目標に対して自分がどのような変化をもたらすことができるかを明らかにしよう。

  • 組織デザインを利用して、合意した価値観を組織全体に浸透させよう。

  • オープンに仕事をして、自分のストーリーやアプローチを他の人と共有しよう。

  • スキルやマインドセットを他の人と共有したり、異なる学習や創造の方法が可能であることを理解してもらおう。

  • コミュニティを形成し、困難な状況にあってもお互いに支え合いながら進んでいこう。

CONNECTIONS AND RELATIONSHIPS
(つながりと関係性)

システミックデザインは難しい仕事であり、決して終わることはなく、粘り強さと希望が必要だ。味方がいれば、より簡単にできる。関係性の構築は、デザインプロセス全体を通して行われ、デザインそのものと同じくらい重要である。関係性の構築とは、仕事に関わるすべての人(ステークホルダー、コミュニティ、そして母なる自然)の視点を取り入れ、共感(エンパシー)を築くことだ。

信頼と共通の理解を生み出し、他の人が想像したり創造したりするための自信を構築し、新しい方法でともに仕事ができるだろう、異なる組織を繋ぐ。デザイナーは、翻訳者や仲介者として、プロジェクトを超えて人々を結びつける。それは、すぐには数値化できないかもしれないが、間違いなく重要であり、プロジェクトそのものを超えた価値を提供する。

具体的には:

  • 地域の人々と一緒に時間を過ごし、彼らがプロセスの中で発言し、力を持てるようにしよう。

  • すべての利害関係者(人間と自然)をマッピングし、彼らがその作業からどのような価値を得られるかを理解しよう。システムの内外から人や自然資源を呼び込もう。

  • 人々が等しく力を持ち、共通の言語を持つ、包括的な空間をつくろう。

  • 新しいパートナーシップを想像し、組み立て、人と自然が一緒になってアイデアを共有し、信頼を築くことができるプラットフォームをつくろう。

  • スキルやネットワークを他の人と共有しよう。

  • コ・デザイン、コ・プロダクション、シャレット、オープンダイアログなど、様々なエンゲージメント手法を駆使しよう。

CONTINUING THE JOURNEY
(旅の継続)

ダイナミックなシステムでは、私たちの仕事に終わりはない。ものごとは変化し、別の機会が生まれる。プロジェクトが終わる際には、プロジェクトを振り返り、失敗から学ぶ必要がある。成果はオープンエンドでなければならず、将来の仕事のために知識を創造し、共有することに重点を置く。自分が何を測定したかを考え、プロジェクトがどれだけ成功したかを判断するためにビジョンに戻り、旅の中で次に何をすべきかを検討する必要がある。

具体的には:

  • 成功を祝い、失敗を振り返って学ぼう。

  • あなたの介入がシステムの他の部分に与えた影響に注目しよう。

  • 自分が作った知識をオープンにして共有し、他の人がそれをベースにできるようにしよう(商業目的の特定の知的財産でなくても、すべてのビジネスが採用する必要のある価値観や持続可能なアプローチなど)。

  • これまで築いてきた人脈や同盟関係を強化し、さらなるプロジェクトを共に展開しよう。

ここまで、フレームワークの4つのパートを説明してきた。最後のパート、デザイン活動については、次のページで紹介しよう。

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