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日本だってこんな学校がある(探究演習)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」。まだ春休みなので本の紹介です。

今回は3冊の本をまとめて取り上げますが、いずれも著者はライター/編集者の崎谷実穂さんによるもので、新しい学校がテーマです。

3冊はN高、立命館アジア太平洋大学、三菱みらい育成財団について取材した内容になってます。それでは1つずつ見ていきましょう。

N高:ネットの高校はじめました

N高はいわずと知れた、カドカワ出資によるネットを活用してリモートで授業が受けられる通信制の高校です。

N高の生徒数は2023年12月時点で27,712人もちろん日本一です。

場所を問わないので日本どこにいても僻地でも学校に通えます。時間も自由度があるので、日中は家庭の事情や別の予定がある人でも通えます。入試に学力試験がないコースもあるので、進学が難しかった人や不登校だった人でも通えます。というようにインクルーシブとダイバーシティを尊重した学校だといえます。

N高出身の有名人には、フィギアスケート選手、棋士、モデル、ミュージシャンなどがいます。昔だったら学業との両立が難しかった人が、N高で実現できています。

デジタルを活用しているN高ですが、決してネット上だけで完結すればよいと考えてはいません。通学コースもあるし、現地で学ぶ職業体験などは他の高校よりも積極的に行なっています。遠方に住む生徒同士が仲良くなったら会いにいけばよいという方針も持っています。

昨年テレビで取り上げられていました。校長の人となりを知ると、デジタルはあくまで手段で、学びの本質を追求した結果であるということがよくわかります。

学校へのデジタル導入のほとんどはツールの域にとどまっています。対してN高は、生徒が得られる学ぶ体験がデジタルでどのように変わるか?を考えています。企業のDXでも同じことがいえますが、教育のデジタル導入はまずこの違いを理解することが必要です。

立命館アジア太平洋大学:混ぜる教育

大分県の温泉街近くにある立命館アジア太平洋大学(APU)は、2000年に開講した大学です。

この学校のキーワードは「グローバル」です。これ自体はどこの大学でも見られますが、実行レベルが違います。3つの数値目標を掲げてます。

  • 海外学生が50%

  • 50カ国からの海外学生

  • 教員の50%も海外出身

この環境だと日本の暗黙知は通用しません。だからといって、欧米の価値観がスタンダードになるわけでもありません。色んな国が混ざり合うことで、大分にいながら世界を学べる環境を学生に提供しています。

授業ではもちろん英語も用いますが、英語=グローバルではなく、世界を知ることがAPUのグローバルです。

APUのホームページ( https://www.apu.ac.jp/home/experience/ )より

また、多くの1年目の学生は寮で暮らします。そこでお互いの文化や習慣を理解し合うのですが、管理者がルールを決めるのではなく、寮生自身が自治をつくることになっているようです。この取り組み自体も大きな学びにつながると言えます。

グローバル=海外に行く、ではない学びを実体験をもって取り組める流れには期待しています。自分がいま18歳に戻れるなら入学したい!(デザイン学科つくる計画があるなら協力します)

三菱みらい育成財団:教育が変われば、社会が変わる

3つめは教育を支援する財団です。15-20歳の教育機関を対象に、未来の人材育成に必要な教育を支援しています。

三菱グループが社会のために何をすべきかという動機からはじまり、調査をしていく中で教育改革の必要性に気づき、今までにない教育分野での財団を立ち上げるに至ったそうです。

日本中の学校や生徒を調べていく中で、学習には心のエンジンが駆動するサイクルが重要であることに気づきます。

興味・関心 ⇔ 納得・承認 ⇔ 行動・実践

一方的に知識を身につけるのではなく、インタラクティブな作用によって学びが楽しくなったり、実際にやってみてわかることが学びには欠かせません。これは、アクティブ・ラーニングや探究学習といった授業スタイルに通じるものがあります。

この財団の支援による各校の活動はアワードで発表されています。一例としてカードゲームを用いた授業の説明動画を紹介します。

この財団は対象を15-20歳に設定しています。理由は、高校の進学率は98%だけど進学校から教育困難校までそれぞれの課題は異なり、文科省の管轄でも高校は空白地帯になりがちだから、いうことです。(自分もこの年頃の時期への働きかけが最も効果的ではないかと考えます)

ただ学力テストの順位を上げるだけでなく、こういった活動が高校〜大学で増えていくことを期待します。

学んだこと

おそらく今の日本は、学校のダメな面がかなり明るみになっている状況で、いま変わるか変わらないかを求められている時期なんだと思います。

紹介した財団や文部科学省でも、学習方法を変えていかないといけないということを表明していますし、一部の学校はすでにどんどん進めています。この流れを底上げにつなげるには、学校関係者はもちろん大人たちみんなの認識をアップデートする必要があります。

自分がかつて教わってきたことは今の学校とは違う、というアンラーニングを促すためにも、はやくテスト重視の価値観から変えていくながれをつくるべきだと思います。

今日はここまでです。

デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。