この国の美しいもの

朝9時前から映画館に行って「哀れなるものたち」を見、喫茶店で読みかけの文庫本を読了。本、とってもいい作品だったので、涙ぐみながら涙ぐんだページを少し折って読み進めた。いつかの未来にまた読み返すであろう、忘れっぽいわたしへのしるしである。
もしかしたら人生で初めて飲んだかもしれないカプチーノも気に入った。いつも喫茶店に入ると、温かいものならストレートティーかブラックコーヒーだったが、これからカプチーノもラインナップに入れたい。豆乳っぽいまろやかなミルクと、表面に積もったシナモンの香りがいい塩梅。

その時点でまだ午後2時頃。全然帰りがたくて、偶然通りかかった松屋銀座の八階で行われていた「銀座名匠市」にいってみた。
エレベーターを上がると、フロアいっぱいに全国の伝統工芸品のブースが出ていて、ちょっとしたお祭り状態。約100産地もの伝統工芸品が集まっているらしい。
人形や木を組み合わせた家具、焼き物に染め物、石灯籠や兜まで、ゆるりと歩いてるだけで日本の古き良き活気に包まれたような気になる。職人さんが実演しているブースもあって、眺めているとフレンドリーにお話ししてくれる職人さんが多かった。
鬼瓦を作っているという愛知県の女性の職人さんは、嫁いだ先の旦那さんが鬼瓦製作のいわゆる「鬼師」で、面白そうだと思って自身も始めたとか。女性の鬼師さんは彼女を含め全国に3人くらいしかいないらしい。楽しそうに、作り中でまだ粘土状の鬼瓦を見せてくれ、人生でいいターニングポイントがあったのだなぁととても素敵に思った。
それから島根県の勾玉製作のお店の人とも話が弾み、「島根にくるときは連絡してくれたら案内しますよ」と名刺をいただいた。私よりひと回りくらい年上だろうか。黒髪パーマにメガネで、おしゃれなセットアップに身を包んでいたが「石に沼っている」らしく、アンクレットにして足首につけた勾玉を見せてくれたり、説明の言葉が水の流れのように淀みなく出てくるのが心地よかった。東京の銀座にきてたいそう人酔いしているらしいので、今夜よく眠れたらいいなと思う。

わたしは小さい頃からきれいな石が好きで、小学校低学年くらいの頃は旅行先で買った勾玉をタッパーに入れて

育てていたことがある

くらいなので、本当は今日も買いたかった。もちろんもう育てるためでなく、手にとって眺めたいからだが。でも、職人さんがひとつひとつきちんと磨き上げたものだということでやはり高価だった。いつか、きれーなの欲しい。

あとは、生螺鈿も見られた!螺鈿とは、アワビなど貝殻の内側のオーロラに輝く表面をフィルムのように薄く加工して、デザインとして工芸品にあしらうものである。これも昔から惹かれているもの。今日のは富山県のものだったが、黒いつるりとした漆器に鮮やかな螺鈿が施されているのはとっても綺麗だった。

他にも色々、気になるものがあり、ああ旅に出たいと思った。最近は工芸品や陶器にも興味が出てきたので、イベントごとはどんどん行くつもり。知れば知るほど、いつまでも世界は広がるねえ。

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