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【海外登山6】天山山脈4500Mの高みへ ウチチェリピークの登り方 @キルギス

イントロ

今回は、2023年7月に登ってきた高山、
キルギスのウチチェリ・ピークについて紹介します!!

登山やトレッキング、ハイキングのコースの多さで知られる
キルギス(正式名称はキルギスタン)。
国土の40%が海抜3000Mを超える
まさに登山大国です。
2023年7月に、2泊3日で
キルギスの数ある4000級の山の中で、
4520Mの標高を誇る、
ウチチェリ ピーク (Uchityel Peak, Pik Teacher)
に登ってきました。
高陵の山嶺には高山植物が咲き乱れ、
マルコポーロアイゼックスが
角を交差する音が、谷中に響き渡っていました。
氷河と峰々の最高の景色と
4000M級の山を登るという経験を得ることができました。

一方で、非常に難易度の高い山です。
急勾配な下り坂、
マップがあっても分かりづらい道、
高山でウォッカを勧めてくる誕生日に浮かれる30代たち、
など難所が多い道でした。

本記事では、
ウチチェリピークの概要や難易度、
装備や注意点、
実際の行程やアクセスについてシェアしていきます。

本記事では
①登山者がウチチェリピークを登って無事に帰って来れるような
 役立つ情報を提供する
②読書さんにキルギスの山の魅了が伝わる
ことが目標です。
また、登山者でも旅人じゃない人も
是非読んでいってください。



ウチチェリピークと周辺の見どころ

[ウチチェリピーク(Uchityel Peak, Pik Teacher)]

アラ・アルチャ国立公園(Ala-Archa National Park)の中でも、
最も高い頂の一つ。
4520Mの高さを誇りながらも、
登山の専門的な装備を必要としない山であるため、
初心者でも登りやすい高山とされています。
最低でも二泊三日で登頂可能。
もしも雪上登山専用具をお持ちの方は、
この頂上以外の3つの頂に挑戦することができます。

頂上から眺め

[アラ・アルチャ国立公園(Ala-Archa National Park) ]

西側の天山山脈にある国立公園。
垂直な滝や広大な氷河、
真夏に咲き乱れる高山植物、
保護された自然環境に住む
オオカミ、マルコポーロアイゼックス、
マーモット、幻のスノーレパードなどの
多様な生態系と
壮大な天山山脈の自然を心ゆくまで楽しめる国立公園です。
アラアルチャは「様々な色をしたジュニパーの木」を意味し、
その名にちなんだ、ジュニパーの木々が広がっています。
4000M級の峰々を構えながら、
首都ビシュケクから35KM程の距離しか離れていないため、
アクセスがしやすく、
地元のご家族から様々の国登山ファンが訪れます。

気持ちい稜線を歩いてきます!!

[ラセックハットとベースキャンプ(Ratsek Station) ]

ラセックハットは4000Mの峰々の登頂の際に、
登山家たちが泊まる標高3380Mに位置する山小屋です。
昼夜問わず、氷河や谷の落石や雪崩の音が響き渡ります。
ウチチェリピークに登る際にも、
このハット、または最寄りのキャンプ場が起点となります。

ソ連時代に様々な天山山脈のの峰々を踏破した
ヴラディミール・ラセックという登山家の名前から
山小屋の名前が来ています。
一泊500-700ソム(840-1150円前後)かかります。
事前予約はAk-Sai Travelからできるそうですが、
実際に行ってその場で宿泊することができます。
また、朝食や夕食も有料ですが作れってくれるそうです。
ハットの近くには、広大なキャンプ場があります。
キャンプ場自体は無料ですが、100ソム(170円前後)を
ハットに寄付するのが通例です。

見どころはここから数百メートル離れた
ところにある氷河です。
またキャンプ場自体も開けた場所にあり、
それだけでもとてもきれいです。
また、アラ・アルチャ国立公園が誇る
生物の多様性の一面が見られるかもしれません。
例えば、運が良ければ、
アイゼックに会えます。

加えて、絶景を臨むトイレも一見の価値あり。

絶景+トイレ

ここまで来て、元来た道を戻る1泊2日も可能です。
また、早朝からのピストンも可能です。

[アクサイ氷河(Ak-Sai Glacier)]

ラセックハットから700Mほど歩くと
見ることができる広大な氷河。
3500Mの標高に位置するため、
真夏でも白い氷河を見ることができます。
ラセックハットに到着して、
この氷河を見て下山することができます。


登山の行程と注意点

概要

合計所要時間:54時間
歩行距離: 17km
歩行時間:21.5時間
最高標高:4520M
開始標高:2200M
獲得標高: 2350M
宿泊地:アップルホステル(Apple Hostel)
歩行開始地点: アラ・アルチャ国立公園入口
歩行終点:アラ・アルチャ国立公園入口

[1日目] (歩行:7時間 休憩:2時間)
9:00:ビシュケク アップルホステル出発
↓タクシー
9:55:アラ・アルチャ国立公園入口
↓2KM
11:00:テプシ高原(Tepshi Plato)
↓850M
12:00:滝のビューポイント
↓1.5KM
13:15:アクサイ滝付近のキャンプ場
↓1.8KM
15:45:ラセックハット周辺のキャンプ場
↓400M
16:10:アクサイ氷河+見学
↓400M
17:00:ラセックハット周辺のキャンプ場

[2日目](歩行:10.5時間 休憩:1時間)
6:00:ラッセクハット キャンプ場スタート
↓550M
6:30:ウチチェリピークトレール起点
↓2.4KM
12:10:ウチチェリ・ピーク
↓2.4KM
17:00: ウチチェリピークトレール起点
↓550M
17:40:ラッセクハット キャンプ場スタート

[3日目](歩行:4時間 休憩:30分)
8:30:ラッセクハット キャンプ場スタート
↓5.4KM
13:00:アラ・アルチャ国立公園入口
↓タクシー(30分ほど待ち時間)
14:30:西バスターミナル(アップルホステル付近)

難易度

体力  :★★★★★
技術  :★★★★☆
アクスセス:★★☆☆☆
(★が多ければ多いほど難易度が高くなると考えてください。)

・体力面
非常に体力を使います。
合計距離自体は短く感じますが、
標高差が体力を奪います。
海抜2000Mを超える場所からスタートし、
ピークの起点となるベースキャンプは3300M、
そしてその頂上までの4520Mを上がりきるコースです。
高山病のリスクも含めて登山行程を検討する必要があります。
加えて、最短でも2泊3日がかかります。
そのたえ、食べ物やキャンプギアなどで、
さらに重量の負荷がかかります。
ある程度の登山経験や
基礎体力にある程度自信がある方にこの山はオススメです。

・技術面
頂上から下山が一番の難所です。
急勾配のガレ場を降って行くことになります。
また、雪を避けて、崖のギリギリを歩くことになるので、
足場の見極めも大切です。

また、冬登山の専用具(クランポンやピッケルなど)は
不必要と様々なサイトで見かけます(実際、私も使いませんでした)が、
入山時期によっては、雪が残っている可能性があります。
マップを見ながら、正しい道を歩けるかも、
この登山の大きな課題です。
ベースキャンプから、ウチチェリピークにかけて、
開けた岩場をひたすら登っていくことになります。
登山の道が非常に分かりづらい箇所があります。
オフラインマップも大枠の道しか示してくれないので、
自身が正しい道にいるかを見極めて、安全に進む必要があります。
とにかく「これ無理だろ」と思ったら、
無理をせず、マップの大枠を参考にしながら、
必ず迂回路を探してください。

・アクセス
アクセルは非常に簡単です。
アラ・アルチャ国立公園までは、
首都ビシュケクから
タクシー、マシューカ(ミニバス)で
1時間程度で到着することができます。
ただし、マシューカに関しては、定期的な時刻表がないため、
帰りはタクシーかヒッチハイクで帰る可能性が高いです。

・シーズン
7月中旬から8月下旬までがおすすめです。
真夏なので、雪が溶けて、
雪登山専用具がなくても、
登ることができます。

装備

1.  携帯浄水器
ベースキャンプ以降は、自然の水から吸水します。
滝が流れているので、じか飲みでも大丈夫ですが、
念の為常に携帯しておきましょう。

2. オフラインマップ
特にMapsMeがオススメです。
登頂するにあたって、開けたガレ場の登りが続くので、
道が非常に分かりづらいです。
道の大枠をとらえるために、マップを持っておくべきです。

3. テントとシュラフ
ハットもありますが、
予約が取れない可能性や
プライベートのスペースが欲しいなど、
様々な観点からテントとシュラフ、
キャンプマットなどが必須です。
真夏でも8度から0度くらいまでキャンプ場が冷え込むので、
シュラフは冬対応でお願いします。

4. ダウン/フリースなどの秋/冬装備
朝晩は冷え込みます。
(7月から8月で)必ず-2度から10度の寒さを耐えられる服装を
持っておきましょう。

5. サングラス/アイマスク
目のケアを怠らないように!!
加えて、日の入りが20時と遅いので、
早めに休みたい方はアイマスクを持ってきましょう。

6. ドライフードなどの食べ物/クッカー
ここからは好みの問題でもありますが、
とにかく2泊3日食べ物が必須です。

7.  トレッキングポール
ガレ場の急勾配を下がっていく際に必須です。

8. Windy
1週間の天気を無料で確認できるアプリです。
かなり正確な情報なだけではなく、
ピンポイントで一箇所の天気情報が見れます。


写真で眺める実際の行程

[1日目]

基本的にビシュケクならどこからでも、
タクシーやミニバスでアラ・アルチャ国立公園まで行けます。
私の場合は、スピード重視でタクシーで行きました。
40分ほど乗っていると、
このような赤い看板のあるゲートが見えてくるので、
1車あたり700som(1100円程度)を支払います。

支払い後もまだまだ乗りっぱなしです。
このゲートで降ります。
左の小さな階段を越えて、
まっすぐ歩いて左に曲がります。

登り道が2KMほど続きます。
日射が強いので、水分補給を忘れずに進みましょう。
この道の途中にもBroken Heartといった見どころがあります。
登りきると高原に行き着きます。

ここから先に登っていくコースとそのまま
まっすぐ進むコースがあります。
まっすぐ進んだ方がショートカットです。
登るコースは、滝が近くで見ることできます。

右がそのまま進むコース
左が上がってくコース

この大きな谷間を横切って行きます。
石が積み上がっている場所があるので、
そのまま渡ってしまいましょう。

ここからは、しばらく登りの少ない稜線が続きます。

稜線から森を抜けて、いよいよ森林限界を越えて、
川の轟音と高山植物が咲き誇る登りがきます。
初日で一番きつい箇所です。休みながら進みましょう。

いよいよラセックハットと周辺のキャンプ場に行き着きます。
休憩の時間ですね。
ラセックハットに近づけば近づくほど、
人が増えてくるので、静かな時間が欲しい場合は、
少し離れたところにテントを張るといいでしょう。
下の写真は、ラセックハット付近のキャンプ場に入った時の
写真です。
ここからテントを張り放題です。

テントを張ると、こんな感じです。

もしもテントがない場合は、
ラセットハット(Ratsek Station)に行きましょう。
最初のキャンプ場から200Mにあります。
予約なしでも、基本的に空いているそうです。

外観はこんな感じ
中はかんな感じ

この先にもテントを張る場所があります。
テントを張り終えたら、アクサイ氷河を見に行きましょう。
ここから4/500M先です。
加えて、このキャンプ場をまっすぐ進むと、
左手に滝があります。
ここは無人の上流から流れているので、
とてもきれいです。
心配の方は浄水器を使って飲むといいです。
ヒエッヒエですよ!!

水分を必ずここで確保しましょう!!

もしも運が良ければ、アイゼックに対面することもあります。
そっとしておけば無害です。
時々、オス同士がツノをぶつけて、
その音が谷中に響き渡ります。

私がゆっくり休んでいるおとき、
4人のキルギス人がお酒を持って近づいてきました。
なんと誕生日パーティーのために3000Mのここまで
お酒や食べ物を持って登ってきたそうです。
強いな〜。
テキーラでベロベロに酔っていました。
酌を交わすように何度も誘われました。
お酒を勧められて断るのは無礼とのなので、
3杯のショットに付き合いました。
お酒が苦手な方は絶対に断ってください。
私もその夜におっしこがとまらなくなり、
公開しました泣。翌日は1170Mの登りが待っているので早めに就寝。

テキーラ恐怖症

[2日目]

朝6時の出発です。
早朝にもかかわらずライトなしでも
ほのかに明るいです。
滝とラセックハットを越えて歩いていくと、
右側にブリキ板の建物が右手に見えてくるので、
そこを左に曲がります。

左です!!

序盤は、足元に道があるかどうかを確認しながら、
登って行きましょう。
ポイントとしては、
崖のある右側ではなく、
左に逸れていくように登っていくことです。
かなり開けているので、登山道から外れやすいです。

右側の切り立った崖方面には行かなように!!

必ず正しい道の周りには、
積み石があります。
これもマップと同じように参考になります。

積み石も参考になります!!

この高陵を登り終えた後の
中盤の登りには、
下の写真のように背の高いのキリった岩壁が出てきます。
「この道は危ない」と思ったら、
冷静に右側を見てみると、
必ず迂回路があります。
私も何度も無理そうな道に遭遇しました。
マップ(MapsMe)の大枠を参考に
必ず周りを見回して登山道を見つけください。

高い壁が左側。
無理な道だと思ったら、必ず立ち止まり、
右側に安全な迂回路を探しましょう。

後半戦になると、雪道が現れます。
ゆっくり上がっていけば大丈夫です。
トレッキングポールで、体を支えてあげると安心です。

雪道が見えてきたらラストスパートですよ!!

完全に雪に覆われているように見える場所も、
右側に雪道を避けることができる道があります。
クランポンやピッケルがある場合でも、
雪道は可能な限り避けましょう。

左にはいかず、右側を登って行きましょう

6時間の格闘の末、1170Mの急勾配を登りきると、
ようやく頂上です。
ここで昼ごはんと絶景を楽しみました。
ちなみに昼食は、
ポテチ+ナッツ+りんご+ピーナッツバターパンでした。
ピーナッツバターパンが至福の美味しさでした。

標識
頂上から臨む氷河と峰々

下り道がかなりしんどかったです。
急勾配なので、絶対にトレッキングポールで
体を支えながら下山しました。

急なガレ場!!

17時ぐらにラセックハットの
テントに戻り速攻で夕食を食べました。
滝で体を洗いましたが、最高でした!!

[3日目]

昨日まで一緒に登ったチェコ出身の登山家たちと
さような。

一緒に登ったチェコから来た登山家さん

下山は少し心に余裕があるのか、
登りと同じ道を通っているのに、
細かい高山植物に目がいきました。
谷間に花々が咲き乱れていました。

帰り道は来た道を戻るだけなので、
そこまで苦戦はしませんでした。
国立公園の入場ゲートまで来れれば、
あとは、
ミニバス/タクシー/ヒッチハイクで
帰りましょう。
ミニバスが来なかったので、
タクシーになりました。
一緒に登ったチェコの登山家さんと
タクシーをシェアすることができました!!


アクセス(行き方)

[出発前の宿泊と準備]

ビシュケク(首都)に到着後、
少し休んだり、買い物をしたりと
準備があると思います。
その際には、
アップルホステル(Apple Hostel Bishkek)への宿泊がおすすめです。
バス移動の起点となる、
Western Bus Stationから歩いて2分です。
また、携帯ガスも販売されています。
他にも、レンタカーの紹介、
ビシュケク近郊の1日ツアーなどの
運営しています。

Apple Hostel Bishkekの近くに
スーパーマーケットがあります。
そこで、出発前に、
水や非常食用のお菓子を買い込んだり、
ATMでお金をおろすことができます。

[宿泊場所→アラ・アルチャ国立公園(Ala-Archa National Park)]

手段:タクシー
価格:1000Som(1600円前後)
所要時間:1時間〜1時間半
出発時間:いつでも
出発場所:ビシュケク内の宿泊場所
到着場所:アラ・アルチャ国立公園
タクシーを使う際には、
必ずYandexTaxiを使いましょう。
タクシー呼び寄せ、距離に応じた価格で目的地まで
連れて行ってくれるアプリです。
登録時点で電話番号があれば、
アプリに登録できます。
YandexTaxiで目的地を選ぶ際には、
アラ・アルチャホテル(Ala Archa Hotel)を探しましょう。
このホテルに着けば、国立公園の入り口はすぐそこです。
また、国立公園に入る際に、車一台に対して、
700Som(1100円前後)を払うことになります。

手段:マシューカ(ミニバス)
価格:???(とてつもなく安いらしい)
所要時間:1時間半〜2時間
出発時間:???
出発場所:ビシュケク内の宿泊場所
到着場所:アラ・アルチャ国立公園
マシューカ(ミニバス)はこの国において、
一番安い移動手段です。
一方で、アラ・アルチャ行きのミニバスの情報が
かなり少なく時間や価格は分からない状態です。
しかし、マシューカで行ったことがある人がいて、
その人から、マシューカを捕まえたロケーションを
聞いておきました。
このGoogle Mapのリンクから飛んでください。
朝9時くらいに来たそうです。
不確かな情報なので、
私はYandexTaxiを使ったタクシーをオススメします。

アクセス(帰り方)

[アラ・アルチャ国立公園(Ala-Archa National Park)→宿泊場所]

手段:タクシー/ヒッチハイク
価格:1000Som〜2000Som
所要時間:1時間前後
出発場所:アラ・アルチャ国立公園駐車場
到着場所:ビシュケクの宿泊場所
遠地のため、タクシードライバーも
少し高い価格をふっかけてきます。
必ず2000Som以内になるように交渉しましょう。
また、他に登山帰りの人たちとタクシーをシェアしましょう。
乗車人数が多いほど一人当たりの支払額が安くなります。
また、ヒッチハイクもしやすいです。
土日であれば、自然を求めて家族連れの車が賑わうので、
ビシュケクに引き返す車も必ずあります。
土日+14時〜16時(ピクニック終わりの時間)の条件が揃えば、
ヒッチハイクできる可能性が高いです。

この度もありがとうございました。
自然の圧倒的な美しさを楽しめる一方で、
非常に厳しい道のりです。
この記事が参考になれば幸いです。
次は、もう一つ有名どころの
アラ・クルレイク縦走について書いていこう思います。
どうかお楽しみに!!

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