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秋風の通り道



10月の朝の光は柔らかい。
秋の薫りを含んだ風が木立をサラサラと通り抜けてゆく。
温かい光と冷たい空気が重ね合わせになって枯草の匂いを閉じ込めている。
風が吹くとふわっと舞い上がる。
草むらに潜んでいる虫たちが足音に驚き次から次へと飛び跳ねた。

四季の移ろいをいち早く敏感に嗅ぎ分けるのは桜の樹。
春にはまだ冬の寒さが残る時期に蕾を膨らませ、秋は夏の余韻が終わらないうちに葉を紅く染め上げる。

秋風の通り道に色づいた葉が舞い落ちた。
それを見た花や実をつけ忘れた草木たちは大慌て。

「のんびりしていたら冬はあっという間にやってくるよ。」
「秋は早足に通り過ぎちゃうよ。」

そう矢継ぎ早に囁くのは木の枝にとまっていた落ち着きのない小鳥たち。

季節は、たった一日として立ち止まろうとはしない。
風に舞い踊る野の草たちのように。
ゆらゆらと煌めく川面に浮かび漂う木の葉のように。

永遠に流転し続けることが形あるもの、命あるものの定め。
人の想いもまた夢を見、揺れ、輝き、枯れ落ちることを繰り返し、忘却と挫折と憧憬を絡み取りながら、心の渦巻き模様へと吸い込まれてゆく。

写真には彼方の光を写し込むことはできない。
しかしその光によって浮かび上がる残像を顕すことはできる。
それらは点と点で結ばれ、光の在りかを指し示す。

光の残像は四季の写し絵。
生まれ揺れて消えてゆくことは幻の証し。
シャッターを押すこと、それは彼方なるものに思いを馳せるささやかな心の仕草。
写真、それは永遠に流転し続けるものの比喩。

10月の朝の光は万物を柔らかに照らし出す。





























































































北九州市 中央公園/洞北緑地にて



Japanese Blue
Ronny Johansson




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