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夏の日々は走馬燈

(文700字 写真36枚)


 朝の冷気を感じふと振り向けば
過ぎ去りし夏の日々は走馬燈そうまとうのよう
ついこの前まであったはずの強烈な光と熱は
もはや何処へともなく退散してしまったのか
そう思うと何故か急に名残り惜しくなる

花々から一斉に解き放たれた極彩色
甘い蜜の芳香に群がる虫たちの乱舞
嵐の翌朝の清々しい光と静寂のコントラスト
夕空に悠然と湧き立つ紅色積乱雲

刻々と薄れてゆく記憶の中から
鮮明に焼き付いているのは
降り注ぐ光と雨が
大地に眠る命の炎を呼び覚まし
生きとし生けるものの
心と身体へとドラマティックに変容する姿

若かりし頃
夏は若さの象徴と思い込んでいた
しかし歳を重ねて知った
夏は内に秘めた情熱の象徴だということを













































 打ち寄せる波音に紛れ込んでいたのは
大陸生まれの冷たい風の粒子たち
沈んだ夕陽の残照は白い吐息の前兆
真夏のまとわりつくような熱い風は
もはやここまで届かない

耳をすませば秋の忍び足
輝く月面に印されたのは
ひとり遊びに夢中のうさぎの足跡
天空を埋め尽くす星たちの
賑やかな祝宴は真最中

遥か宇宙そらの彼方から
こちらを覗き見るのはいったい何処の誰?
瞬きながら
微笑むように




























 陽は沈み
大地は休息の眠りに就く
雲間に見え隠れする月明りの下
人もまた重い荷物を脇に降ろし
分厚い鎧と仮面を脱ぎ捨て
名前も過去も未来もない
生まれたままの姿に戻り
安らかな深い眠りへと沈んでゆく

故郷の花園で過ごす癒やしと充電のひととき
それは新しい再生の朝を迎えるための
魂のリトリート

移ろいゆく四季
それは安息と再生を繰り返す
大地のルーティン

季節は巡る
もうすぐそこに静寂の秋
あと数か月もすれば安息の冬
やがてその先に待っているのは再生の春

輝ける夏は
内なる炎の走馬燈










Don't Forget
Pat Metheny with Rita Marcotulli



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