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夜宮の花菖蒲



 梅雨になると必ず見たくなるのが紫陽花と花菖蒲。1年前にも写真を投稿した同じ夜宮公園の菖蒲園へ訪れた。今年は梅雨の晴れ間の朝と、曇り空からやがて本降りとなった朝の2回。
天候によって花の表情が微妙に違ってくるのが分かり興味深い。若い頃初めて見た時の感動は45年以上経った今もそのまま。それから毎年のように見てきたが、むしろより深く味わえるようになった気もする。



ハナショウブの品種は絞りや覆輪などの組み合わせを含めると、何と5,000種もあるそうだ。ルーツは戦国時代もしくは江戸時代頃に東北地方で見つかった「ノハナショウブ」。当時これを元に栽培品種化したのが始まりで現在に至る。
品種を大別すると江戸系・伊勢系・肥後系の3系統に加え、これらの系統の元であるノハナショウブの特徴を色濃く残す「長井古種」の4系統。

ノハナショウブという花は写真でしか見たことがないが、ハナショウブよりもやや地味な印象を受ける。日本原産のヤマアジサイが栽培品種化されて西洋アジサイとなった運命と同じような道を辿ったわけだが、長井古種は原種とさほど変わっていないようにも見え、何故かほっとする。明治維新以来今日に至るまでの西洋化されていく日本人の意識の変遷と、今も失われずに残ると想像できるもの、その両方を重ねて見てしまうからかもしれない。


この夜宮公園には約30種、2万本の花菖蒲が植栽されている。規模としてはさほど広くはないが、一つ一つの花をじっくり見ればやはり見惚れてしまう。
花菖蒲は言うまでもなく凛として咲くその立ち姿が美しい。いつも見るたびに和服美人を思い浮かべてしまうのは自分だけではないだろう。
今回偶然にも写真を撮っている最中に、和服姿のご婦人方が三人連れ立って散策に来られていた。
涼し気な着物を着て花菖蒲を鑑賞するとは、なんて風流な楽しみ方なのだろう。

これも何かの縁。花と一緒に写真を撮らせて頂きたいと頼んでみた。
SNSに後ろ姿だけでも公開させてもらえないかと尋ねると、
「後ろからでも前からでも構いませんよ。」
と快諾頂けた。
せっかくなので後ほど花菖蒲と共に紹介させて頂くことにする。
見ず知らずの人に声をかけ、ノーマスクの写真を撮らせてもらえるというのは実に久しぶりのこと。


花菖蒲の魅力、それはまた花の頂点から四方に広がった大きな花びらが重力に逆らわず自然に垂れている姿にも現れている。
凛として、尚且つ力まず。
天に向かって花開き、同時に大地の深遠に身を委ね安らいでいる。
深い瞑想に入っている人の内的状態を彷彿とさせる姿である。

花は刻々色と形を微妙に変えながら、たった3日だけの儚い生涯を終える。
短い時間に込められた想いはあまりにも深く、繊細、そして崇高。
新緑が一段と深まる梅雨のひととき、清涼な風を呼び、天の光を身に纏いつつ、幽玄の世界に誘ってくれるような不思議な存在感を放つ花である。



北九州市戸畑区夜宮公園  
その1:梅雨の晴れ間
























































夜宮公園  
その2:さみだれのひととき










































































わたし
西村由紀江





ありがとうございます





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