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『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の「演技」について。【ネタバレ有】

なんだかんだ言いながら観に行って来ました『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』。

前作『最後のジェダイ』のお陰でハードルがガン下がりしていたこともあるんでしょうが大丈夫、楽しめましたよ。
いや~JJ監督がんばったね~!(笑)。

前作でライアン監督が「古い古い!コレもアレも古臭い!」とばかりに断捨離しまくったSW世界を、まーひとつひとつ敬意を払いながらきれいに元通りに整理整頓しなおして、この新三部作をなんとかギリギリセーフ!って感じでまとめ上げました。えらい! 泣いたしね〜!一箇所!

というわけで2020年最初の「でびノート☆彡」は『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』の演技についての話をネタバレありありお届けでしたいと思いまっす!

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いや~そんな感じでJJ監督がこの「スター・ウォーズを救え!」という過酷なミッションを全うできるのか!?にドキドキしながら観ていたのもあってw、たしかに「泣けるシーン」はこの映画の中に無数にあったのですよ。でもそれらをボクは「お~JJうまいことまとめた。よかったよかった」みたいな感心半分で観てしまい・・・泣けはしなかったんですよねーw。

それでも一箇所だけ。ものすごい勢いで涙腺が決壊して嗚咽するくらい泣いてしまった瞬間があって・・・それは アダム・ドライバーのとある演技でした。

やっぱり泣かされたのはストーリーや設定ではなく「演技」に。そのシーンとは・・・(次の行から物凄い勢いでネタバレしまくりますので注意!)

それはハンソロがベン(カイロ・レン)の目の前に現れたシーン!・・・ではなく、もちろん感動的なシーンだったんですが、つい別のことを考えてしまって(何を考えてたかはブログ後半で)、いやもちろんこのシーンヤバかったですよ。ここで「I Know.」来るか~っ!って。

でもね、それはやっぱりファンサービスであってあっちの世界の事ではないような気がして・・・なのでそこではキューンとはきたんですが涙は出なくて、涙が出たのはそのあとのシーンです。

復活を企むパルパティーンがレイをダークサイドへ誘惑しているところに、ベン(元カイロ・レン)が彼女を助けにやって来ますが、邪悪なレン騎士団に待ち伏せされて囲まれてしまいます。なぜか丸腰だったベンは苦戦を強いられるんですが、それを察知したレイが遠くから自分のライトセーバーをベンにフォースの瞬間移動で渡すんですね。で、不意を突かれたレン騎士団に対してベンは、両手を広げたポーズで首をすくめて口元でニヤッと笑ってみせる・・・ここです!ここ!ここで泣きました!(笑)

だってだって・・・これってハンソロじゃん!

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これ、ピンチの時にユーモアを見せるっていう、ハンソロがEP4~6でストームトルーパーとか相手に何度もやってたやつじゃん! うわーそうかっ!ベンはハンソロの息子なんだ。ハンソロの息子にようやくなれたんだーっ!と思ったら涙があふれて、なんか変な声出ちゃったんですよねー「うわーん」って(笑)。すいてる映画館でよかったw。

この動作、脚本に書いてあったのかなあー。書いてなかったんじゃないかと思うんですよねー。だってこの一連のシーンはベンとハンソロではなく、ベンとレイの繋がりを描くシーンだから。なのでこの一瞬の演技はベン役の俳優アダム・ドライバーの現場での思いつき(アドリブ)なんじゃないかと思うんですが、どうなんでしょう。
しかしこういう演技をサラッとやったりするからアダム・ドライバーは油断できないんですw。

どんなに美しいセリフで父子の愛情を歌いあげるよりも、どんなに感動的なストーリー展開で描くよりも、この「両手を広げて肩をすくめてニヤッと笑う」だけで強く表現できてしまうことっていうのがあるんですよね。
親子の絆が、こんな小さな小さな動作で感動的に表現されてしまっているんです。

しかもその相手がベンのかつての仲間であるレン騎士団ですからね。だからこそ「すまんな、形勢逆転だ」という距離感の近いコミュニケーションなわけですよね。ここにはまた濃厚な気持ちのやり取りが存在しているのです。

で相手が油断してる所をズバッと攻撃・・・これぞハンソロですから!w

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因みに映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』の若きハンソロの演技は、このテのユーモアのセンスが無かったんですよねーw。

勘違いしちゃいけないのは、ユーモアって形じゃないんですよ。
なかなか自分の思い通りにならない世界を見つめて、面白がって、さらにそんな世界に対してコミュニケーションを仕掛けてゆく余裕あることなんですから。

それをハリソン・フォードはどの出演作においても軽々と演じてるんですよねー。『インディ・ジョーンズ』シリーズ、『ブレードランナー』『ブレードランナー2049』彼はいつでも死にそうになりながら観客のハートをくすぐるユーモアを発揮してました(笑)

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こういう人間らしい表現を含んだ演技が新三部作には、特にEP8とEP9には少なかったと思うんです。ユーモアと・・・生活感?

まだEP7前半部では、レイはガラクタ漁りの孤児の女の子を、フィンは元ストームトルーパーの脱走兵の若者を、それぞれの生活感たっぷりディテールたっぷりに魅力的に演じていたんですが、2人が反乱軍に入ってからはそういう人間味がどんどん減っていって、代わりに「戦士」っぽい直線的な演技をするようになっていきました。

厳しい表情で遠くを見つめたり、「決意」みたいなキリッとしたステレオタイプな表情をしたり・・・いや〜脚本に書いてある事だけを演じているとそういう事になっちゃったりするんですよねー。でもそれではシーンを演じてるだけで、人間を演じてるわけではなくなってしまうんです。

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 ↑ 見てください、このイキイキ感(笑)

たとえばEP4~6でのルークは一貫して「楽観的な田舎ボーイ」だったし、ハンソロは一貫して「金の匂いにうるさくて用心深いアウトロー」だったわけで、それが物語がどんなに佳境に入っても変わることはなかったからキャラクターとしてキャラ立ちして、愛されたんですよね。

ルークはデススターでも第2デススターでもオビワンや父を心配する優しいルークだったし、ハンソロも常にハンソロのままだったので反乱軍の将軍をやることがずっとギコチなくて、第2デススターを爆破した大事な時も「お前たち兄妹だったのか、なんだ、やった~!」みたいな・・・人間くさかったわけで(笑)。
ルークやハンソロは戦士になっても将軍になっても、立ち居振る舞いや反応はルークやハンソロのままだったんですよね。人物像がそのシーンシーンでの役割を呑み込んでいるんです。

EP9で、ジェダイの霊体としてレイの目の前に現れたルークもよかったなあ。「楽観的な田舎ボーイ」でもありジェダイマスターでもある老ルークを見事に魅力的に演じていたと思います。 優しいんですよね、彼は。

自分が最大の敵パルパティーンの孫だった!ということで苦しんでいるレイの気持ちが、まったく同じ問題で悩んだ経験のあるルークには痛いほどわかる。 なので彼はジェダイマスターとしてレイに話しかけてるのではなく、かつて悩める青年ルーク・スカイウォーカーだった男として話しかけているのです。彼が生来持っている優しさ、そしてユーモアたっぷりに。

役割として相手に接するのではなく、ひとりの人間として相手に接する、それがシーンを悲痛なだけでなく暖かいコミュニケーションと感動あふれるものにしています。

あとはねー、このルークの素晴らしい演技に対してレイがね、キリッとした緊張した表情で「決意」とかだけを直線的に演じるのではなく、もっと無防備になれてたら、もっともっとレイの人間性が出てディテール豊かな素敵なシーンになったんだと思うんですよねえ。。。

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天才戦闘機パイロット、ポー・ダメロンはその残念な直線的なベクトルの演技の最たるもので。
たとえばEP9でも彼がミレニアムファルコンを連続ハイパードライブさせるシーンとか、長い長い説明セリフをただ説明セリフとして喋ってしまい、周囲の人間と全くコミュニケーションしないで演じてました・・・勿体なさすぎる。

もしもポーが周囲の人間の心をかき乱すようなコミュニケーションをしながら説明セリフをガンガン言っていけば、超魅力的でハラハラするシーンになったし、ポーがいかに天才パイロットであるか!も観客にもっと伝わったのに。

それを常にやってたのがEP4〜6でのハンソロです。彼はミレニアムファルコンを操縦しながら説明セリフを喋りながら、ルークやレイアの気持ちをかき乱し、オビワンを不機嫌にさせw、チューバッカをボヤかせてましたから(笑)。

それは脚本やセリフの力じゃないんです。俳優の演技、俳優が演技の中で繰り出すコミュニケーション能力が生み出すものなんです。俳優が自分が演じている人物の気質を使って、周囲にどれだけ生々しく働きかけ、影響させることが出来るかにかかっているんです。

それがシーンを面白くする血肉の通った演技なんだと思うのです。

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そうだ!ブログ冒頭であとで書くって言ってた、記憶の中のハンソロとベンが出会うシーンを観てた時にボクがなにを考えていたか。それは・・・以下のようなシーンでした。

第2デススター跡でのベンとハンソロの会話。 ベンがハンソロに十字ライトセーバーを出して見せるとハンソロが飛び退いて。

ハンソロ「わおわおわお!待った!
     ・・・2度目はゴメンだぞ。もうオレは死んでるんだからな」
ベン  「あ、あの時はゴメン。本当に悪かったと思ってるよ」
ハンソロ「(キザに)I Know.」

見つめ合う父子…が、ベンがバッとライトセーバーに手をかけるとハンソロもビクッとなるw。それが数回あって…緊迫状態。唐突にベンが笑顔で。

ベン  「冗談だよ。ごめんごめん父さんw」
ハンソロ「…I Know.」

どーすか?お互い影響与えまくりでしょw。
もちろん泣かせるシーンだからこんなことはありえないんだけど・・・でもちょっとバカっぽさというかハンソロらしさが欲しかったなあ、と思ったりしてたんですよ。(失礼w)

まあでも、ハンソロが自分の子供に対してぎこちなくしか接することが出来ないっていうのは、リアルな意味で超ハンソロっぽいのかもしれませんが。。。

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総論として『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は、ファンサービスやサプライズにあふれた素晴らしいエンターテイメント映画ではあったのだけど、演技&役作りが説明的で直線的だったので、人物の魅力が出にくかったし、キャラ同士の相互作用が少なかったのが残念。といったところでしょうか。

演技の相互作用とは何か。

たとえばEP4~6とかでは、まずルークの目から見た世界があって、ハンソロの目から見た世界があって、レイアから見た世界があって、ダースベイダーの目から見た世界があって、彼らが相対した時、そこから生まれる彼らのそれぞれの生き様の違いが大小さまざまな摩擦を起こしてゆくんです。

その摩擦に満ちたやりとりをイキイキと演じることで、それぞれのキャラの個性・魅力が可視化されてゆく。

その摩擦から生まれた魅力がこの42年間も観客を『スター・ウォーズ』の世界に魅了して続けてきた、ということなんだと思います。

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あ~新年早々、長文になってしまいました。最後までお付き合い下さってありがとうございます。

さて、今回の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』はJJがディズニーから突き付けられた「スター・ウォーズという版権を救え!」というミッションとしては100点だったと思います。・・・でもね、1978年に公開された『スター・ウォーズ/新たなる希望』は100点どころか、100点満点で100万点の映画だったんですよ。 だから42年間も愛され続けているんです。

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』は過剰なファンサービス満載の甘い甘い豪華なスイーツのような映画でしたが、2019年の映画としての生々しい表現は無かったし、2019年の観客が夢中になれるような新しいドラマも無かった。・・・ボクはそのあたりを俳優たちにもっともっと頑張って欲しかった。もっと魅力的な人物たちが活き活きと生きてる映画が観たかったんです。

だってアダム・ドライバーの「両手を広げて肩をすくめてニヤッと笑う」だけで、そのたった1秒だけの演技で、その人物の数十年分のドラマや様々なことを表現しうるし、2019年の世界に住む人間にとって切実な問題を描き出すことだってできるのですから。。。

そう、演技ってすごいのです。

小林でび <でびノート☆彡>

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