我等の生涯の最良の年

 1947年の米アカデミー賞で9部門を受賞した名作中の名作。今、観ても色褪せていない素晴らしい作品だ。

 第二次世界大戦にアメリカが参戦したことを批判しつつも多くを語らず、しっかりとエンターテインメントとして楽しめる作品に仕上げられている。ストーリーのメインとなるのはフレッドとペギーの恋だが、三人の復員兵(フレッド、アル、ホーマー)がなかなか社会に馴染めない様子が丁寧に描かれ、戦争は戦勝国の兵士にすら、何も良いものをもたらさないことが示される。

 とくに主人公のフレッドは、いくつもの勲章を手に入れ、陸軍航空軍大尉を務めたが、復員後は悪夢にうなされ、就職もままならない。一体、戦争で功を上げることに何の意味があるのか。彼はこの映画の終盤、父親に、戦時中に得た賞状を「捨ててくれ」と言う。

 こういう作品が、1946年という第二次世界大戦の終戦の翌年に製作され、たくさんの賞を獲得するというところに、当時のアメリカの映画界の懐の深さを感じる。今だったらたぶん、こんなにたくさんの賞は獲れないだろうな。とくに日本だと、両腕に義手をつけている人間が主要人物として登場する時点で、批判の対象になるんじゃないかな。

原題 The Best Years of Our Lives
製作年 1946年
製作国 アメリカ

監督 ウィリアム・ワイラー
脚本 ロバート・E・シャーウッド
原作 マッキンレー・カンター

キャスト
ミリー・スティーブンソン マーナ・ロイ
アル・スティーブンソン フレドリック・マーチ
フレッド・デリー ダナ・アンドリュース
ペギー・スティーブンソン テレサ・ライト
マリー・デリー ヴァージニア・メイヨ
ウィルマ・キャメロン キャシー・オドネル
ブッチ・エングル ホーギー・カーマイケル
ホーマー・パリッシュ ハロルド・ラッセル


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