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「オープンダイアローグ」的なコンサルティングの実践

フィンランド発の「オープンダイアローグ」という精神療法をご存知でしょうか。ダイアローグとは「対話」という意味であり、 #オープンダイアローグ とは文字通り開かれた対話のこと。従来は薬が必要だった統合失調症の治療に高い効果があることで、注目を集めています。

非指示的で非介入

 オープンダイアローグは、文字通り「開かれた対話」です。当事者だけでなく家族と専門家や医療スタッフなどいわゆる関係者が集まって、当事者と共に、当事者の居るところで、当事者の意見を聞いて、治療方針を決めていきます。

 当方は、精神科医でも治療家でもありませんが、社名(ダイアログジャパン)にあるように「対話」(ダイアローグ)を重視したマーケティング・広報PRコンサルティングを実施しクライアント企業の課題解決・経営改善に貢献してきました。

当社の課題

しかし、ここ数年、「上から指示命令」「現場に直接介入」スタイルのコンサルティングが現場にはフィットせず、パフォーマンスが期待通りにいかないことで悩んでいました。

これはコンサルのやり方に問題があるぞ、と気づいた我々は、コンサルのスタイルを思い切って変えることにしました。

きっかけは吉井理人 千葉ロッテマリーンズ 投手コーチの一冊です。

ニューヨーク・メッツに入団し、はじめての春のキャンプに参加した時のことだ。何度かピッチングをしたが、コーチは何も言ってくれなかった。「何も言ってくれへんのやなあ」そう思っているところに、ボブ・アポダカコーチがひょこひょこと近づいてきた。ようやくアドバイスをもらえる。そう期待したが、意外な言葉が出てきた。「お前以上にお前のことを知っているのは、このチームにはいない。だから、お前のピッチングについて、俺に教えてくれ。その上で、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」驚いた。コーチからそんなことを言われたことがなかったからだ。日本では、コーチが自分の尺度で選手を見て、自分の尺度に合わなければ自分がやってきたように修正するのが一般的だ。アポダカコーチは、僕がどんなピッチングをする投手で、どんなピッチングをやりたいかをはじめに聞いてくれ、その方向性に沿ったアドバイスをしようと考えてくれた。(「最高のコーチは、教えない」吉井理人 6〜7頁より)

自分はといえば、吉井コーチの言う、「自分の尺度で選手を見て、自分の尺度に合わなければ自分がやってきたように修正する」そんな一方的なコンサルを強いてきた、ということに気づいたのです。

ビジネスも地域も抱える状況もそれぞれクライアント企業さんは異なります。

そうした中で、自分は相手の言うことや状況を聞くよりも、自分のやり方を一方的に押し付けて、「俺はこうして成功した、自分のアイデアはこうで、これを君のビジネスに応用すれば、君の会社もV字回復、あるいは、もっと右肩上がりの売り上げ・利益となるはずだ。だから、すぐやれ」そんな一方通行のコンサルを指導と称して押し付けていたのだった。

これでは、うまくいくものもうまくいかないことに気づきました。

本当にクライアントが成長し、その成長に合わせて己自身も成長し、それぞれが進化成長発展していける世界にしなくてはならないのに、おかしな話になっているのはなぜだろう?

学び直し、習い直しへ

近世から現代まで続いている論語、老荘思想、陽明学などからつながる日本の商道徳、二宮尊徳の報徳思想、山田方谷の殖産興業、富山の薬売りの「先用後利」といった商哲学、ドラッカー、組織マネジメント、「学習する組織」「U理論」などの組織論、ミンツバーグの「エマージェント戦略」などをあらためて学び深めてきました。

さらに、多くの成功企業事例に触れ、直接企業訪問し、ネッツトヨタ南国創業者の横田英毅さんら優れた経営者から学ぶだけでなく、実際に幾つかのクライアント企業さんの改善に活用するうちに、長期的に組織改善を実現するためにはコミュニケーションによる社風の改善を土台として、社員の自発的な行為が活発になっていくことが重要であることがわかってきました。

これまで弱いもの、小さいものを「排除」する、というやり方ではなく、弱いもの、小さなものを受け入れ、ともに育み、無視しない「当事者研究」「オープンダイアローグ」という精神医療分野における改善法に触れて、対話が組織改善に非常に重要な役割を果たしていることを知り実践してみています。

オープンダイアローグで示されている「対話」は、これまで自分が知っている「対話」とは異なっています。

とりわけ、非指示・非介入、コントロールしないこと、声を聞き、心を聴くこと、1人ひとりを尊重すること、オープンであることによって、統合失調症の解決につながる、というこの「オープンダイアローグ」を組織改善や課題解決に活用できないか、とここ数年試してきました。

最初は、どうしても、自分が誘導したい方向へと対話を誘導しコントロールしたいという欲求があり、そのため、対話が失敗ばかりしていました。しかし、コロナ禍となった2020年から企図しない対話をするようになって手応えを感じてきました。

実は、昨年実施したこちらの #コンサルティング では、「オープンダイアローグ」の「 #対話アプローチ 」を実践。

対話と振り返り、をメインにしたところ、その結果は劇的なものでした。

思いがけない出来事が立て続けに起こるとともに、予期せぬ未来が登場、地元テレビ局にも取り上げられ、行列のできるお店へと変わりつつあるのです。当初のロードマップには予想もしていない出来事が起こり、マスコミにも大きく報じられ、事業の方向性も転換することとなりました。

そこで、今月から「オープンダイアローグ的なコンサル対話」をオープン(笑)、心ある皆さんと実施し、分かち合えれば、と実践することといたしました。

「オープンダイアローグ」はどうやるのか。

当社が行うオープンダイアローグ・ミーティングのやり方は、スタートー聴くことーリフレクティングー終わり、の4ステップで、とてもシンプルです。

1、スタート(5〜10分くらい)

専門家のチーム(当社1〜2人)とクライアントのチーム(代表者など)をオンラインに招き入れます。

お互いにまず自己紹介をしていきます。その後、当社がファシリテーターとして、「今日はどんな話について話しましょうか?」とクライアントに発言の水を向けます。全員が参加できるように、YES・NOで答える質問ではなく、開かれた質問(オープン・クエスチョン)から始めていきます。

2、聴くこと(30〜45分)

当社の方から色々な質問をクライアントさんに投げかけていきます。そして、質問に答えるクライアントさんの様子を見ながら、丁寧に聴いていきます。困ったことや悩んでいることをクライアントさんが語っている時に、「この人はどのような世界に生きているんだろう?」と関心を持ちながら、そして、自分自身の中に沸き起こる感情にも注意しながら、聞き、そして、誠実にちゃんと返答することに気を配ります。

相手の世界のことは自分は無知なので、「これはそういうことでしょ」「こうしたら解決できるよ」などと軽返事やアドバイスはしないで、自分は何も知らない、わからないのだ、という姿勢で聞いていきます。

3、リフレクティング(10〜20分)

リフレクティングとは、クライアントの話や訴えを聞いた後、当事者であるクライアントの目の前で専門家同士が意見交換をし、それに対してクライアントが感想を述べる。この繰り返しを行うことです。

これまでの会議ならば、専門家はクライアントに手の内を見せることなく隠すのが当たり前でした。しかし、オープンダイアローグでは、当事者であるクライアントを目の前にして専門家同士の話を聞いてもらいながら、クライアントさんが客観的な視点にも立ちつつ、解決の方向性やヒントを見つけてもらう、そんなイメージです。

「これから当社のメンバーだけで話し合いますから、少し聞いていていただけますか?」とクライアントチームに断ってから、専門家チームで対話を始めます。この間、クライアントと目を合わせないで、専門家側は、「その場で話されたこと」の感想を交わしながら、解決に向かう方向性やアイデアなどを話し合います。ただし、アドバイスの時間、ではなく、具体的な提案やアイデア出しの時間として、このリフレクティングの時間を使います。

4、終わり(10〜15分)

終わりの時間です。ミーティングを終える前に、もう1度お話ししておきたいことはありますか?と尋ねたり、感想を聞かせてもらったり、今後の方針を決めたりします。最後に「今日決まったこと」を全員で確認して終了します。

「オープンダイアローグ」コンサルの目的は、問題の直接解決ではなく「対話」を続けることです。対話を続けているうちに、自然と問題が解決していた、そういう状態になるのです。でも、問題解決を目的としての対話は、対話ではなくなってしまうので注意が必要です。

これまでのコンサルは、「こういう方法を採用した方がいい」とクライアントを説得し、説明し、議論して、クライアントを変えること、決定すること、結論を出させる、というやり方をしてきました。「結論ありき」の押し付けでした。

しかし、オープンダイアローグでは違います。対話が目的です。対話を続け、広げ、深める。それが目的です。相手を否定せず、相手のことを分かったつもりにならず、相手を尋問せず、相手の話を聞かせてもらう。相手を誘導しようとしない。聴くことに集中して聴いていきます。

専門家として、という立場の意見と、消費者としての自分の意見など、自分の中にあるさまざまな立場から、いろんな意見をリフレクティングの中では言いますが、聞いている時には聴くに集中する、という方法です。

こういうスタイルで、クライアントさんとの時間を過ごすようにしています。

そうそう。言い忘れましたが、これらは、オンラインで行なっています。

本来は、当地へ赴いて車座的な配置によって、語り合うのですが、このご時世なので、zoomやFacebook Messengerを活用したオンライン・コンサルティングの方法で実践しています。

オープンダイアローグについてさらに詳しく学びたいという方は、


などで紹介されていますので、ご一読されるといいと思います。

最近のコンサル現場でも実践してみましたところ、あまりにミーティングが高評価だったので、ちょっと驚いています。

別に、後藤さんに良く思われようとか考えてないし。ただ、毎回のミーティングでどうだったか、こうだった、と振り返る機会を作ってもらって、話すこと。これは良いんじゃないかな。 (飲食業経営者 40代)
「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感があります。(個人事業主 50代)


ただし、この「オープンダイアローグ」は、1度や2度のミーティングで状況改善に劇的に変わる、ということはないのでは、と思っています。

なぜなら、我々は、これまでのコンサルとは異なり、前述の投手コーチのような立場をとっているからです。

「お前以上にお前の事業を知っているのは、このチームにはいない。だから、お前の事業について教えてくれ。その上で、どうしていくのがベストの選択かは、話し合いながら決めていこう」

このスタンスであるが故、こちらから誘導したり、アドバイスしたり、という従来の方法はあり得ません。

対話を続けながら、話し合いながら、クライアントさん自身が自ら決めて、自ら動き、取り組んで行動してもらうことがどうしても必要だからです。

そうして対話を重ね、正しいプロセスに沿って進んでいった結果、正しい結果が得られることを多くの事例や先人から学んでいます。

『人は、いい結果を得ようとしたらいいプロセスを経るしかない。
逆に言えば、いいプロセスを経れば自ずと結果はついてくる。』(「アホは神の望み」村上和雄 著より)
『仕事というものは、順序立ててやっていかないと、なかなか結果に辿りつきません。大切なのはプロセスです。その大切なプロセスを見ずに結果を求めると、社員はお客様からの満足と感謝を得られないばかりか、そのためにやる気や喜びを感じることもできず、ひいては結果そのものも出せなくなってしまうのです。』(「会社の目的は利益じゃない」横田英毅 著より)

オープンダイアローグの対話を重ねて、正しいプロセスを経れば自ずと結果はついくるのだと思います。

これまで多くの人たちは、結果を求めるあまりに仕事に振り回されたり、人間関係を拗らせてしまったり、そういうことを繰り返してきていたのかもしれません。

オープンダイアローグ的コンサルにご興味をお持ちの方はこちらにお問い合わせいただくか、もしくは以下から1度試してみませんか。


今日もありがとうございます。


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