フリーキックは言語の壁を超えた
たまにはお題に挑戦ということで、「#心に残ったゲーム」についてお話します。
ホームステイした時の話です。
ホームステイと不安
僕の高校は、少し変わっていて修学旅行がオーストラリアへのホームステイだった。
僕は高校に入ってから英語の成績が3で全然喋れなかったので、不安しかなくて行きたくなかったけどついにその日が来てしまった。
最悪なスタートと洗礼
成田からシドニーへはもちろん飛行機。
飛び立つやいなや、最悪なことに乗り物酔いをしてしまい地獄の10時間を過ごした。
なんとかシドニーに着くと、早速ホームステイ先の家族が迎えに来てくれた。
僕を引き受けてくれた家族はアジア系の4人家族で夫婦と娘2人という家庭だった。お父さんはスリムだったけど、他の3人は海外サイズだった。
家に着くとお昼ご飯を出してくれた。
THE 海外 というご飯だった。
ピザとハンバーガーにホットドッグ。
乗り物酔いのせいで半日以上何も食べていなかったけど、見た瞬間にゲップが出た。
「少食なんでこんなにたべられません。」
そんな難しい英語はもちろん喋れなかったので必死に食べた。
何とか食べ切った、、、と達成感に浸っていると極め付けに大量のチーズソースがかかったマカロニが運ばれてきた。
そして、謎のカチカチの四角いパンが2つ添えられていた。
「添えるのは左手だけにしてよ」そんな冗談が浮かばないほどお腹はパンパンだったし、そこにはパンとパンがあった。
戻しそうになりながら、まずはチーズマカロニを食べた。その後必死にパンに口をつけるが全く飲み込めない。
時間をかけ何とか白目を剥きながら完食とした。
早速海外の洗礼を受けたのだった。
誕生日パーティーと絶望
昼食後、今日は娘さんの誕生日パーティーが行われることを聞かされた。絶対に馴染めないので絶望した。
数時間後、続々と娘さんの友達が家へとやってきた。みんな気を遣って英語が喋れない僕に頑張って話しかけてくれた。
だけど、ネイティブな英語と高すぎるテンションに全くついていけず馴染むことができなかった。
救世主とゲーム
帰りてぇ。そう日本語で呟いていると、ある少年が話しかけてきた。
「サッカー好き?ゲームやらない?」
救世主だと思った。
ゲームなら喋らなくて済むので嬉しすぎた。それに、当時僕はサッカーのゲームが大好きでめちゃくちゃやりこんでいたのだ。
その少年とやることになったのがこのゲーム
FIFA10だった。
このときばかりは殺気立つルーニーの顔も愛おしく思えた。
キックオフ。
最初は救世主と2人でソファに座り大人しく対戦していたのだが、僕が強すぎて次第に周りに人が集まってきた。
5-0で圧勝した。
すると、僕と対戦したいとみんなが言ってくれた。
フリーキックは言語の壁を超えた
僕は自分が使えるテクニックを惜しみなく使い、周りを沸かせた。そしてその中で1番の実力者の少年と対戦した時、最大の見せ場がやってきた。
試合終了間際、2-2の同点で僕はゴールから25mほどの絶好の位置でフリーキックのチャンスを得た。
ここは絶対に決めたいと思った。
緊張しながらシュートを放つ。シュートは綺麗な放物線を描き、ゴールへと吸い込まれた。
その瞬間、一斉に周りが湧いた。
そしてたくさんハイタッチを求められた。
単なるサッカーゲームでゴールを決めただけなのだが、明らかに僕はその場に馴染むことができた。
英語は喋れないしハイテンションにもなれないけど、ゲームのおかげでみんなの中に溶け込めたのだ。
フリーキックを蹴った時、
ゲームの中ではディフェンスの壁を超えてゴールが決まった。
だけど、現実世界ではフリーキックによって言語の壁を超えたような気がした。
(実際には英語が喋られるようになったわけじゃないので、言語の壁をすり抜けたのほうが正しい表現な気もするけど)
兎にも角にも、僕はこのゲームのおかげで絶望の淵から救われたのだった。
あれから10年が経ったが、いまだに僕はサッカーのゲームが大好きだ。英語は全く喋れないけど。
以上、僕の「心に残ったゲーム」でした。
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