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音楽から読み解く世界情勢 [2022.04.04]

東京の桜は前半晴天に恵まれ、後半は雨に祟られながらも何とか小枝にしがみつくように花びらをまとわりつかせ、耐えているように見える。
一方世界は少しずつ混迷の雲行きを深め、それはここのところ配信される多くの音楽の傾向にも現れているように見える。

特に2022年3月25日から同年4月1日の両金曜日の、各サブスクリプションの新譜チェックは何とも陰鬱な気持ちで進んで行った。
特徴としては以下の状況が挙げられる。

ダブステップの楽曲、及びLo-Fi系の作品がとても多かった。
②単曲配信が予想以上に増えていた。(アルバムのような曲数の多い音楽の配信が少なかった。)
③一曲のタイムの短い作品が増えていた。
 

上に挙げた①のダブステップの楽曲が増える時は、世界が混迷の谷底に突き進んでいた前回のシリア内線の頃を思い出させる。無謀な理由で多くの人々が命を落とし、シリアが壊滅状態に追い込まれたのが前回の、ダブステップが世界的に流行した時期であり、現在もそれと似た状況がウクライナで見られるのは皮肉としか言いようがない。
人の気持ちがどこか、言いようのない臨戦態勢に陥っている証拠のようで、この状況をこんなに立て続けに見るとは想像していなかっただけに心が不安で大きく乱れて行く。
 

日本経済新聞より、ウクライナの現在の光景

 
穏やかで尚且つ心が晴れやかになるような音楽が聴きたいのに、特にこの二週間の中で更新された音楽の大半が重く、暗く、どんよりとした空気に満ちていた。
それでも何故かそのような重苦しい音楽が聴きたくなるのは、恐らく人間の本能のようなものが作用しているからに違いないとさえ思えて来る。
  

 
コロナ禍、ウィルス・パンデミックが塗り替えて行った世界をその上からさらに異常気象が襲い掛かり、そこに戦争が折り重なって行く、この時代に受け入れられる音楽を真剣に考えている人達はほんの一握りであり、多くの音楽家たちは「目先の金銭を得ながら生き延びる為の音楽」や「自己実現の為の音楽」を生み出すことで手一杯に見える。
 
それを作者自らの、或いは楽曲のPRを任された広告担当者等が美しい言葉で言い替えながら、各サブスクリプションから配信されるどこかうつろなメロディーは、瞬時的に世界の空を流れては行くが、殆どの音楽が人々の心に着地することなく上空でひと夏の花を咲かせ、枯れて行く運命にあるように、私には見えて仕方がない。

上に少しだけ触れた「ダブステップ(Dub Step)」の他にもう一つ、「ダブ(dub)」と言うジャンルがあり、此方は比較的コンスタントに様々なアーティスト(DJ系がメイン)が作品を配信しているようだ。

ダブ(dub)は、レゲエから派生した音楽制作手法、及び音楽ジャンルである。ダブワイズ(dubwise)とも呼ぶ。ダブ制作に携わる音楽エンジニアのことを特にダブ・エンジニアという。語源はダビング(dubbing)であるとされている。

Wikipediaより引用

だが最近流行っているダブ(Dub)は上記のダブとも異なっており、ワンパターンのリズム、ほぼワンコード & ワンベースの上に黒玉で言うところのマイナーの「ドミソ」のような3音で形成されるブロックコードが団子状態で延々と継続しながら、レゲエでも何でもない単調かつエレクトロニックなリズム帯で構成された音楽の事である。
 

  

 
そんな薄暗い地上の真ん中に一組だけ、何とも言えず鮮やかな色彩を放つアルバムを見つけた。
La Isla Centenoと言う、多分コロンビアないしはメキシコ発祥のユニットがリリースしたアルバムCanciones Para El Volcánだ。
 
このご時世の悪い現象が幻覚なのではないかと思わされるような、この甘くて太陽の匂いのする音楽の花束をふと胸の中に抱きしめたらもう、現実には戻れなくなりそうで怖くなるほどの多幸感で満たされて行く。
 

 
根が南国の血を引いているせいなのか、こういう南の島に咲く花のような音楽を聴くと、どうしても血が騒ぐ。もう黙っていられないのだ。
同系統のユニットでもう一組、私が大好きなユニット「Monsieur Periné」からも丁度3週間前に、Nadaがリリースされている。
 

 
このPVの内容がとても怪しげで美しいので、楽曲最優先の私がどうしても画像に目を惹かれながらこのPVを何度も何度も凝視し続けている。

この地域に見られる独特の宗教観と性認識の在り方が私は好きで、この種のPVを見つけるととことん堪能し尽くすまで貪ってしまうのはやはり、芸術家の性(さが)なのかもしれないが。
 

 
世界はこれからどこに向かって突き進んで行くのだろうか‥。
ここでタイミング良く「ウクライナのポップス」をご紹介出来れば良かったのだが、色々聴いてみたものの私があえて紹介する程の作品が一曲も見当たらなかったのはきわめて残念だ。
勿論音楽は好みに左右されるところが大きいとは言え、「これぞ!」と言う作品が結局一曲も無かった。
 
と言うわけで、この記事の最後は若干変わり種ではあるが、アラビックモード満載なこの一曲の動画を貼って記事を〆たい。
Jovanotti と Enzo Avitabile、両者共にイタリア人なのに醸し出て来る音楽はアラビックモード満載‥ と言う不思議な作品『Corpo a corpo』を、最後にお一つどうぞ。
 
※先週更新したばかりのDidier Merah監修のプレイリストMiracle of Spring 2022. ③の103曲目にも収録しています。
 

※歌詞はコチラから読むことが出来ます。

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