YouTubeは時折、奇跡のような瞬間をもたらしてくれる。
曇り空の東京の町は不穏な空気に包まれており、私にとっては折角の「木曜日」と言う安息日も落ち着いて過ごすことが出来なかった。特に用事があるわけでもないのに、ワンコインランチをそそくさとお腹に放り込んで急いで夕食の食材を購入し、速度をMaxにした自転車をまるで競輪の選手のように背中を丸めて漕いで漕いで帰宅した。

先日購入した書籍「ラムサ」と眼鏡を折角ポシェットに入れて家を出て来たのに、結局1頁も本を開かなかった👓

帰宅すると先ず、PCの電源を入れる。そこは年中無休のめくるめく世界、困った時、辛い時、楽しい瞬間でも私はそこを目指す。
すると何とも美しい曲『回來 (Regression) 』が右ツリーのぶら下がりから紹介され、何も考えずにそこをクリックすると、もうそこは台湾ポップス & アンビエント・ミュージック & オーガニック・ポップスの世界だ。

詞曲 Song & Lyrics：薛詒丹 Dan Hsueh
編曲 Arrangement：鍾濰宇 Yu

美しい音楽にはいつも理由がある。そしてその理由の殆どを、リスナーは知ることが出来ないでいる。だから何度も何度もそ目当ての一曲を聴き込んで、その理由や手掛かりとなるものを片っ端から探し求める。
まるで今の私は、「音楽」と言う事件を捜査する刑事のようだ。

「細かいことが気になる、僕の悪い癖です‥」とはドラマ「相棒」の杉下右京の名台詞だが、まさに今の私はそんな気分なのだ。

楽曲『回來 (Regression) 』を歌う "薛詒丹" は、台湾出身のシンガー・ソングライターである。ジャズやR & Bのテイストを好み、その方向性で表現を突き詰めているようだ。

メロディーはさることながら、その背後を優しく包み込む "鍾濰宇" 氏の編曲はまるでパステルカラーの万華鏡のように、怪しい華がある。
"鍾濰宇" を少し調べてみたが、おそらく彼は裏方の仕事が多いのだろう。楽曲も彼自身のプロフィール詳細も見つからなかったが、以下のようなタイプの作品に裏方として参加しているようだ。

‥映像音楽からポップス、ジャズ‥ と、とても幅広い音楽ジャンルに精通しており、裏方 "鍾濰宇" の仕事からも目が離せない。
そして "鍾濰宇" を検索する過程で出会ったこのユニット"甜約翰 (Sweet John) " のサウンドが又、私のドツボなのだ。彼等については又別記事で、近日中に紹介することにしよう。

さらに "薛詒丹 Dan Hsueh" の作品『回來 (Regression) 』には別記で「ピアノ編曲」が記載されており、"許郁瑛" (YuYing Hsu) がそれを担当している。女性のピアニストで、アルバムを聴く限りではどこか古き良き時代のECMジャズを彷彿とさせる楽曲をはじめとして、アップテンポのオールドスタイルのジャズ等を得意としている。

話しを元に戻して。
‥一人のミューズの背後にこれだけのミュージシャンが控えており、各々がソロとしての活動も兼ねている。
ソロの仕事がしっかりしているからこそ、裏方としての仕事も光る。これが日本のポップス業界の中には無いから、J-Popは猫も杓子も仕事のクオリティーが「流れ作業」の域を出られない。
多くのミュージシャンやスタッフ等が「お当番」感覚で作業をしているから、出る曲出る曲全てが雑で大雑把でカネの臭いだけがプンプンしてただただ不快である。

そんなここ最近の日本の音楽業界全般の底上げに一役買うことが出来れば‥ と言う一念で、私は50代半ばにして音楽評論を開始した。とは言え20代前半からずっと同じようなことを陰では続けていたから、昨日今日始まった話しではないが。

私の記事を通じて、一人でも多くの音楽愛好家たちの底上げを目指せれば本望だ。その為にも私は今日も辛辣に、厳しく評論をぶちかまして行く。

それにしても台湾のミューズ "薛詒丹 Dan Hsueh" の声質や表現が深いこと深いこと、容赦なくみぞおちに激しく襲い掛かるこの声質は、同性の私でも思わず『惚れてまうやろ‥！』 と思わずにはいられない。

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