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弱きをたすけ強きをくじく

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【目次】弱きを助け、強きをくじく

【目次】弱きを助け、強きをくじく

 天地自然をか細く操る美しき女精、”精霊”。それと友誼を結び、大地の厳しさと人同士の諍いを生きていく人間を巡るお話。

◆あらすじ◆

 王都から遠く離れた村に盗賊団が落ちてきた。義賊”土竜衆”を名乗る彼らを追って北辺警ら隊の兵士たちもが村の境界を侵す。村は王権への恭順か、伝統の保持かを迫られ混迷を深めていく。ついに三者はぶつかり合い、村は壊滅的な被害を受けてしまう。
 

■各話リンク1.村は焼

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弱きをたすけ、強きをくじく 6/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 6/6 #絶叫杯

 ◆前回までのあらすじ◆
 殺しあう二人。だが互いの願いは同じ。その思いがギルパンを縛り付け、二人の死闘はもはや止められない。土竜衆再興を掲げるモルクか。王の下で臣民を守るラウか。”不死”か。”秘剣”か。願いの子ギルパンは見届けるしかなかった。



 モルクの踏み込みはそれまでで最も早かった。踏み込みが鎗だった。刺突は目で捉えられなかった。

 ラウはその刺突を避けられなかった。鋭い穂先が、突

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弱きをたすけ、強きをくじく 5/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 5/6 #絶叫杯

 ◆前回までのあらすじ◆
 レルバを案じる二人の願いを受け、ギルパンは”巨岩の宿り木”に彼女を足止めさせる。ラウは秘剣”生霊殺し”でモルクを切り裂くが、モルクの友人たる精霊”死なずの樗木”はそれを寄せ付けない。ラウは窮地に追い込まるのだった。



「なぁ、ラウ・アルシェ」

 二の腕で額を拭い、モルクは目を見開いた。

「選ばせてやろうか。腕ごとか、それとも指ぜんぶか」

 苦し気にラウは呻き

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弱きをたすけ、強きをくじく 4/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 4/6 #絶叫杯

 ◆前回までのあらすじ◆
 在りし日の王都。くぼ地を埋め尽くす赤煉瓦の壮麗な街。そこでモルクは豪族を狙って金品を奪い貧民へ分け与え、ラウは王命により土竜を追いながら為政者に疑問を抱く。レルバもまた土竜に属しながら違和感を抱え、日々を過ごしていた。 



 言えない。彼女に止められないなんて、言えるわけがない。やってみないと分からないと彼女は走るだろう。自分が傷つくことも、もしかしたら死ぬことす

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弱きをたすけ、強きをくじく 3/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 3/6 #絶叫杯

 ◆前回までのあらすじ◆
 寄る辺を失った土竜のため。その道行きを安堵するため。官憲と裏切り者を除かんとするモルク。ラウは昨夜の疲れも癒えぬまま対応を強いられる。二人の戦いを止めようと逸るレルバを抑えるギルパンだったが、またも幻が彼を包んだ。 



「実は、土竜衆をうらやましく感じる時があるのです」

 ラウはそう言って、困ったような顔で笑った。今よりいくぶんか若い彼は、ぴかぴかの鎧姿で戸口に

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弱きをたすけ、強きをくじく 2/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 2/6 #絶叫杯

 ◆前回までのあらすじ◆
 崩壊した村を後に姿を消した盗賊団”土竜衆”の現頭目モルクを追って、ラウ、レルバ、ギルパンの三人は街道を西に向かう。その途上でレルバに引き込まれたギルパンは王都の惨状を覗き見た。瓦礫の中でモルクの鎗がラウへと殺到し―――。



「どうした」

 ラウの顔が木漏れ日に照らされ、まだらになっていた。慌てて辺りを見回すと崩壊した王都が消えている。不安げなレルバの顔と、その後

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弱きをたすけ、強きをくじく 1/6 #絶叫杯

弱きをたすけ、強きをくじく 1/6 #絶叫杯

◆前回までのあらすじ◆
 邪法に手を染めていた村長は警ら隊長ラウに処刑されたが、その死に際に彼が解き放った亡霊が村を襲う。山の子ギルパンをはじめとする精霊の友人達により村は守られたが、村守フィオンは雷火に消え、モルクら土竜衆は姿をくらませた。

 ◆

 北海と内地を隔てる山々が夜明けの光に染まっていく。青々と輝きつつある空に黒い煙が立ち上るのが、はっきりと見え始めた。

 村を焼いた火は落ち着き

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