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T-Painなのにオートチューンなし!生の歌声で魅了するカバーアルバムをリリース! T-Pain - On Top of the Covers (2023)

T-Pain (T-ペイン)のデビューシングルである「I'm Sprung」は全米チャートトップ10に入る大ヒットを記録し、2007年には「Buy U a Drank (Shawty Snappin')」が彼自身初となる全米チャート1位を獲得しました。

彼は音楽業界において、オートチューンのパイオニアの1人として知られ、彼の成功によりSnoop DoggLil Wayneといったラップスターも彼の手法を取り入れるようになり、更にはKanye Westにオートチューンの使い方を教えたとも言われています。

そんな現代の音楽シーンにおいて頻繁に使われるオートチューンの普及に大きく貢献したT-ペインですが、今回自身初となるカバーアルバム「On Top of the Covers」をドロップしました。このアルバムでT-ペインは、オートチューンを使用せず、本来の自然な声で歌う姿を見せました。

ここでは、このアルバムについて解説します。

レーベル  : Nappy Boy Entertainment, EMPIRE
リリース日 : 2023年3月17日
名前    : T-Pain
本名    :    Faheem Rashad Najm
年齢    : 38歳


出身地   :    フロリダ州タラハシー

アッシャーとの会話で、うつ病に苦しんだことを明かす

冒頭でも述べたように、T-ペインはラップシーンに革命をもたらし、現在のラップスターであるFutureTravis ScottLil Uzi Vertなども彼のスタイルに習ってオートチューンを採用しています。

しかし、2009年にJAY-Zがリリースした「D.O.A. (Death of Auto-Tune)」というシングルは、オートチューンに対する辛辣な批判が込められており、この曲が波紋を呼んで批評家やオーディエンスの間で意見が分かれることとなりました。

そんな中、T-ペインはR&Bシンガーのアッシャーから「本物のシンガーのための音楽を壊した」と批判されたことがあるようです。
この一件は、T-ペインがNetflixのシリーズ「This Is Pop」に出演した際に明らかにされました。
彼は2013年のBETアワードに向かう飛行機の中で、このアッシャーとの対話によってうつ病を発症したと明かしました。

彼は『君は音楽を壊した』と言ったんだ。
俺は理解できなかった。Usherは俺の友人だからね。
『本物のシンガーのための音楽を壊した』と彼は確かに言ったよ。
その時点では、俺はよくわかっていなかった。
彼は正しいのだろうか?
俺はめちゃくちゃにしたんだろうか?
俺が音楽をダメにしたのだろうか?
長い間気づかなかったと思うけど、その瞬間から4年間の鬱病が始まったんだ。

それから数年後、2人はアトランタでのパーティーで再会し、ステージ上でハグをし、関係を修復したようです。

愛してるよ、ブラザー。
言っとくが、俺たちは何も変わっていない、ブラザー。
全ては愛なんだ。

『ザ・マスクド・シンガー』で優勝を果たす

2019年、T-ペインはアメリカのリアリティ音楽コンテストテレビ番組「ザ・マスクド・シンガー」に出演し、青いモンスターとしてパフォーマンスを披露しました。
この番組は、有名人が頭からつま先までの衣装と素性を隠すフェイスマスクをつけて歌を歌い、パネラーが各シーズン中に出されるヒントを解釈して有名人の正体を当てるというものです。

T-ペインは、Montell Jordan「This Is How We Do It」Queen「Don’t Stop Me Now」などの曲を加工無しの声で歌い、彼の武器でもあるオートチューンを使わずにパフォーマンスを披露しました。

その自然な声と、彼らしくない歌を歌うT-ペインに審査員は誰も気づかず、結果的に彼が優勝することになりました。
このパフォーマンスは、アッシャーとの一件を払拭するかのようなものでした。

アルバムについて

2019年に「ザ・マスクド・シンガー」で優勝したT-ペインは、その直後からアルバム制作に取り掛かったことが報じられており、彼は、この番組でのパフォーマンスが自身のキャリアにおいて大きな転機となったことを認めています。

このカバーアルバムは何年も前から作っていたんだ。
独立した今、Nappy Boy Entertainmentを通してやりたいことは何でもできる。
そして、これは俺が長い間強く感じていたことだ。
この曲は、T-Painがカバーアルバムを出すと聞いて期待するようなものではないし、逆にそこがクールだと思うんだ。

そう明かす今作は、オートチューンに頼らず、改めて生の歌声を込めた8曲30分のコンパクトなアルバムとして完成しました。

オープニング曲の「A Change Is Gonna Come」は、2021年にローリングストーン誌が発表した「史上最高の500曲」で3位に選ばれた、イリノイ州シカゴ出身のシンガーSam Cookeのカバー曲です。

T-Pain - A Change Is Gonna Come

Sam Cooke - A Change Is Gonna Come (1964)

2曲目の「Don't Stop Believin'」は、カリフォルニア州サンフランシスコで結成されたロックバンドJourneyをカバーした曲です。
この曲は世界各国のチャートでトップ10入りを果たし、80組以上のアーティストにカバーされるなど、彼らの代表曲のひとつとして知られています。

T-Pain - Don't Stop Believin'

Journey - Don't Stop Believin' (1981)

5曲目の「Stay with Me」は、前述の「ザ・マスクド・シンガー」でも披露したイギリス出身のシンガーSam Smithをカバーした曲です。
この曲はUKチャート1位を獲得し、世界12ヵ国のチャートでトップ10入りを果たし、現在までにYouTubeで11億回以上再生されています。

Sam Smith - Stay with Me (2014)

ムーディーなイントロで幕を開ける7曲目の「That's Life」は、ニュージャージー州ホーボーケン出身のシンガーFrank Sinatraをカバーした曲です。
この曲はもともと、1963年にMarion Montgomeryがリリースしたもので、数年後、Frank Sinatraのカバーver.が全米チャートで4位を記録しました。
その後、Aretha FranklinJames Brownなどの大物歌手もこの曲のカバーを発表し、後世に受け継がれている名曲となっています。

T-Pain - That's Life

Frank Sinatra - That's Life (1966)

おわりに

彼はリリースに先立ち、Instagram上で「カバーしたこれらの楽曲は人生の様々な場面で音楽を好きになるきっかけとなった」と話しています。

これらの曲はそれぞれ俺にとって意味があり、人生の様々な場面で音楽を好きになるきっかけとなった。
今回のカバーアルバムは、1曲1曲を聴いたときに何が聴こえるかという視点でリリースしているんだ。
この数年間、俺が取り組んできたことを世界に発信するのが待ちきれないよ。

T-ペインは、2000年代にオートチューンを使用した数々のヒット曲で一躍時の人となりましたが、同時に心ないバッシングに傷ついたこともありました。しかし、思いがけないタイミングで出演したテレビ番組で、オートチューンを使わない生の声を存分に披露し、その結果、自身の愛唱曲のカバーアルバムをリリースすることができました。

彼がこれでオートチューンを完全に卒業するかどうかはまだ不明ですが、自分の音楽に真剣に向き合い、この新しい挑戦を通じてアーティストとして成長したことは確かでしょう。今後、私たちに彼が見せるであろうものにはますます期待が高まります。

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