見出し画像

マーケティング分析の理解度を上げる!リサーチのレベルアップ本20選

リサーチの手法を使ったマーケティング分析で高いパフォーマンスを得るには、「マーケティング・小売・ウェブ・マネジメント」など、リサーチに関連する領域の知識のレベルアップが必要です。

そこでこの投稿では、「マーケティング分析の理解度を上げる!リサーチのレベルアップ本20選」と題して、先日リサーチ本を出版した著者リサーチャーの私が読み込んできたブックリストを公開します。

紹介する本は、<リサーチ技法、マネジメント理論、小売・マーチャンダイジング、統合的分析領域、リーダーシップ・組織マネジメント>の5分野から選んでいます。

また、本の雰囲気をつかんでいただくために、リサーチャー視点でおすすめの箇所を囲み形式で本文引用してあるので、購入を迷った時の参考材料にしてみてください。

画像2

--------------------------

▼ 1.リサーチ技法:部分スキルの習得から始める


リサーチ技法の本を選ぶ時は以下のことをポイントにします。
・「実務」もしくは「分析」に詳しいか?という視点で選ぶ
・定量調査・定性調査、それぞれ詳しいものを一冊づつ読む

逆に、「リサーチの概念説明」が主になっているものは、知識を整理するには良いのですが、実務で使う可能性は低いため、既に仕事で必要とする場面にあるなら、1冊目に読むのは避けましょう。

通常のテーマ選書とは逆のアプローチかもしれません。でもリサーチを現場で使いこなしていくなら、取り急ぎ必要な個々のスキルの特徴・魅力に触れたうえで、総合的な本に入る方が深まります。

* * * * *

①『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』(中野崇・すばる舎)

・調査会社マクロミルの執行役員がマーケティングリサーチの実務を解説した本。
・特に実務の中で使用機会が多いネットリサーチの手順・段取りについて詳しい。
・ネットリサーチについて、計画~実査~分析までひと通りの工程を理解できる。
・リサーチユーザー目線での解説が豊富→「調査予算はいくらくらいなのか」等。

P82 調査費用
スナック菓子Aの調査内容を実際に実施する場合、質問数はだいたい20~25問程度で、必要なサンプルサイズは800サンプルの調査となります。
実査のみの金額ならば、50万円程度が相場だと思います。

* * * * *

②『図解 マーケティングリサーチの進め方がわかる本』(石井栄造・日本能率協会マネジメントセンター)

・職業リサーチャー向けの入門書で、本格的に学びたい人の初めの1冊に◎。
・前半は調査会社の入社研修で習う「調査の工程」についてひと通り解説。
・後半は事業課題に合わせた「調査テーマ」「調査手法」を解説している。
・これから調査を計画する時にどこにポイントを置けばよいかよくわかる。

P172 広告効果測定の測定方法
①ブランドの浸透度:ブランドの純粋想起・ブランドの助成想起
②製品内容の理解度:ブランドの特徴の理解
③購入喚起力:購入意向率の事前、事後の差

* * * * *

③『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』(西口一希・翔泳社)

・著者はP&G・ロクシタンで商品のブランドマネージャーを務めたのち、(執筆時)スマートニュースの執行役員として活躍したマーケター。
・精度の高い一人の顧客に絞り込んだインタビューを行う「N1分析」の手法を軸した本。
・メソッドがとても現場寄りかつシンプルなので、定性調査を始める時の一冊としておすすめ。顧客に何を尋ね、どう分析すればよいかが明快。
・終盤では、「スマートニュース」のプロダクトグロース時のプロジェクト過程を公開しており、調査プロジェクトにおける一連の「調査内容・結果データ・改善アクション」をイメージすることができる。

P170 N1分析の手法
N1分析は、簡単です。量的調査同様に、スマートニュースや競合Aの認知、使用経験、使用頻度を聞いて、その方が顧客セグメントのどこに属しているかを確認します。そのうえで、そこまでの認知や使用経験に至ったきっかけや理由や生活の中での体験を聞きながら、カスタマージャーニーを理解するのです。

* * * * *

④『プラットフォーム ブランディング』(川上慎市郎・山口義宏)

・「マーケリアル」著者の山口義宏氏が共著者のブランドマネジメント本。
・第四章(進化するブランド戦略)・第五章(顧客体験価値デザインとブランド戦略の実践)が特に見どころ。
・実際の調査を推進していくうえでは、「企業のブランド戦略」への理解、「企業内の合意プロセス」への理解が、両方ともに高度なレベルで必要になる。その時のポイントがリアリティを持って書かれている。
・調査の仕事を調査で完結させず、事業サイドにどう結びつけるかまで考えた時、プロジェクト全体の解像度を上げるのに有効な一冊。

P298 ブランド戦略
「ブランド評価向上が、現場の売上と評価につながるか?」という現場の猜疑心によって活動の熱が冷めやすいことを理解し、そのうえで動機づけを維持するコミュニケーションも重要だ。
(中略)
ブランド戦略の推進が一過性で終わり、活動が縮小してしまう企業は、このようなビジネスとブランドの関係性の可視化を怠っていることが多いので留意したい。ブランド戦略には理念への共感も大事だが、継続するためには「ビジネスとして儲かる」「チームや個人としても評価される」という道筋が見えていなければいけない。

--------------------------

▼ 2.マーケティング理論:事業運営そのものに精通する


リサーチの分析を行う際には、「マーケティング理論」が備わっているほど、有効な示唆を得やすくなります。なぜならマーケティング理論は、経営判断・事業運営に必要な「論点」をまとめることに優れたモデルだからです。

マーケティング理論を扱う本は、(性質上)中身は一緒なのですが、①古典的に読まれているもの、②経営戦略も併せて理解できるもの、③ビジネスモデルへの知見が深まるもの、この3つの観点で選んでいくと知見が広がります。

* * * * *

⑤『グロービスMBAマネジメント・ブック【改訂3版】』(グロービス経営大学院・ダイヤモンド社)

・グロービスが編集しているMBA学習シリーズの1冊。
・タイトルに「MBA」「マネジメント」とあるが、MBAの取得を目指す人や組織マネジメントを行う人に限定した内容ではなく、マーケティングに必要な概念を網羅した構成になっている。
・特に、1章「経営戦略」2章「マーケティング」が重要。多種多様なフレームワークを1冊の中で学ぶことができる。
・装丁・レイアウトはいかつめだが、各項目の文章自体は平易でとても読みやすい。

P56 ポジショニング
ポジショニングとは、顧客の頭の中に自社製品をユニークなものとして位置づけてもらい、製品イメージをつくり出すための活動である。企業が意図するとおりのポジショニングを根づかせるためには、マーケティング・ミックスを適合させる必要がある。

* * * * *

⑥『全史×成功事例で読む 「マーケティング」大全』(酒井光雄・武田雅之・かんき出版)

・マーケティング史を構成の軸に、キーワード×提唱者をセットで解説している本。
・各マーケティング理論がどういう背景で登場したのか、また、どのように発展して今に至るのかよくわかる。
・有名理論提唱者のプロフィールに詳しいので、単にフレームワーク解説だけをした本を読むより覚えやすい。
・1つ1つの項目は入門的に知るのにちょうどいい深さにまとまっており、ひと通り読んだ後も事典的に使える。

P65 顧客の心の中に企業の居場所を明確にするポジショニング戦略
「ポジショニング」の起源は、ジャック・トラウトが著した1969年の論文にある。その後、1981年にトラウトがアル・ライズと共著で『ポジショニング戦略』を出したことで、1980年代にポジショニング理論が注目されるようになった。
トラウトとライズは、企業戦略とは自社内の視点だけでは判断できず、生活者が競合する企業に比べて、自社のことをどう認識するかによって決まるとした。企業戦略を策定して遂行する際には、生活者の心の中に、「企業の居場所(ポジション)」をつくる必要があると主張したのだ。

* * * * *

⑦『顧客満足経営事典』(常盤猛男・ファーストプレス)

・「顧客満足」の要件定義と実践方法を解説した本。
・特に、「サービスの価値の定義」「顧客満足を測定する調査手法」の説明に詳しい。
・CSテーマ(サービスによる差別化・顧客ロイヤルティ・VOCなどのテーマ)絶頂期に書かれた本なので、「サービスマネジメント」の概念を学ぶのに最適。
・ヒューマンスキル・ホスピタリティのような非科学的要素が強いサービス業の中で、強い競争力を発揮するために必要な科学的な思考を学ぶことができる。

P60 サービスの特徴と品質向上策
無形性:①効果を見えやすくする②クチコミの重視
生産と消費の非分離性:③サービス時間帯の拡大④良い場所の選択⑤サービスの標準化
品質の異質性:⑥サービス評価指標と目標水準の設定⑦採用、教育、訓練⑧コミュニケーション
非貯蔵性:⑨需要タイミングの平準化⑩提供スピードの短縮化

* * * * *

⑧『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』(シバタ ナオキ・日経BP)

・決算書の読み方をビジネスの業態別に解説している本。
・研究対象になっている業態は、EC・フィンテック・広告・個人課金・携帯キャリアなど。
・各業態を代表する企業の実例を多数引用しているので、講義を受けている感覚で読める。
・ビジネスモデル及び各業態の重要指標がわかる=マーケティングの勘所がわかる。

P218 携帯キャリアの決算を読むコツ
携帯キャリアにおけるARPUは以下の3つに分類されます。
・音声ARPU
・データARPU
・サービスARPU
「音声ARPU」というのは、いわゆる「通話料」に相当する部分であり、「データARPU」はデータ通信量に相当する部分です。

--------------------------

▼ 3.小売・マーチャンダイジング:商品理解を深める


リサーチの対象となる業種・業態は、圧倒的に製造・小売・サービス分野が多いため、調査対象カテゴリ・アイテムへの理解があると、分厚い分析ができるようになります。

私は現場サイドのライン長も兼ねていたので、良い商品を仕入れて売上を立てるのと同時に、デベロッパーはじめ同業者からも信頼を得るのに必要な知識水準を知りました。

その水準は以下になります。

・商品をカテゴリとして理解している
・商品のバリューチェーンを理解している
・小売の歴史的な変遷を理解している

これに合わせて本で知識を吸収していけばよいのですが…
残念ながら、書店では「接客」「陳列」の技法を書いたものは数多くあっても、「商品の目利き」について書いている本は非常に少ない状況です。

以下では、私が仕事でセレクトショップを立ち上げるにあたり、最初に読んだ30冊の中から、今に至るまで血肉になっている本を紹介します。

* * * * *

⑨『ヒットする!PB商品企画・開発・販売のしくみ―PB商品の企画、生産から売り場展開、リニューアルまで』(藤野香織・同文館出版)

・タイトルには「PB」と入っているが、モノづくりの基本がほとんどわかる本。
・単に商品企画と売場展開の説明に留まるものでなく、生産ロット・工場選定・出荷管理もきちんと触れている。
・「PB」は商品MDの究極形態なので、「製造・小売」への理解が一気に深まる。
・著者は経験豊富なバイヤー。PBの基本はバイイングであることがよくわかる。

P94 商品スペック、商品デザイン、パッケージデザインの決定
PBには、足し算の発想ではな不要な機能を思い切ってそぎ落とす「引き算の発想」が重要である。それは、消費者に最も近いポジションにいる小売業だからこそできることでもある。本当に必要な機能だけをつけて、余分なものは削除し、その分安く製造し販売することが、最終的に消費者の求めることであるケースが多い。

* * * * *

⑩『図解 商品構成がわかる本』(小松崎雅晴・商業界)

・店舗運営の本は売場づくりがメインとなるものが多い中で、「購買傾向を基点にした商品特性」にフォーカスしている本。
・たとえば、「買い方」による商品の分類:「同じ人が繰り返して買う商品」「一度買うとしばらくは買わない商品」など。
・3~4章の販売分析の項は初心者には難しめだが、一冊を通じてバランスの取れた品揃えを実践するための考え方がわかる。

P32 効果的かつ効率的に売上げをつくる仕掛け
商品には、「単品で大量に売れるタイプの商品」と「商品群として品揃えして売っていくタイプの商品」があります。また、「メーンとして売れる商品」と「周辺で売れる商品」があります。

* * * * *

⑪『コンビニエンスストア マーチャンダイジング HANDBOOK』(並木雄二・商業界)

・コンビニのMDモデルを1月~12月の52週分掲載している本。
・各週の重点テーマ→代表的なアイテムはコレ、という落とし込みが一覧表になっている。
・しかも、フード・チルドデザート・飲料・菓子・酒、というメインのカテゴリ別編成。
・多品種かつ高回転=小売の極地を行くコンビニ業態を押さえておくと、販売の現場に強い商品が見えてくる。
・リサーチ結果から出すアイデアを具体的なMDに落とし込む時に重宝する一冊。

P140 正月からバレンタインデーまでのMD
・テーマごとに売上を稼ぐ「量販商品」「戦略商品」「品揃え商品」の役割を明確にする
・「量販商品」→テーマで取り上げる商品全体の6~7割程度の売上を上げる商品
・「戦略商品」→他業態と差別化する商品+チェーンとして差別化するオリジナル商品
・「品揃え商品」→テーマ商品の選択の幅を広げる商品

* * * * *

⑫『百貨店とは』(飛田健彦・国書刊行会)

・日本の百貨店のルーツと歴史的発展を、戦前~戦後の出来事に合わせてまとめている本。
・松坂屋・三越・大丸・高島屋・天満屋・阪急・伊勢丹など、全国の主要百貨店の成り立ちを網羅。
・タイトルは「百貨店」ながら、小売業自体の変遷・発展がわかる。(売場や決済など)
・たとえば、伊勢丹がなぜファッションに強いのか?→子供服や婦人服などの対象別売場にいち早く着手したこと、というようなルーツがわかる。
・現在では百貨店間の違いが見えづらくなっているからこそ、歴史から百貨店本来の独自価値を再認識できる。

P102 三越の経営理念のルーツ
こうした岩瀬の、「三越に掛値は無い」という馬鹿正直とも思われる努力に、顧客は正直に反応いたしました。暴利をむさぼるヤミ値と、実情に合わない「公定価格」の間で、「三越のつける価格こそ適正である」とする考えが急速に消費者の間に浸透していったのです。
現在、一般的に抱かれている「百貨店の商品と価格」に対する信頼感は、この時期に培われたといっても過言ではないのです。

--------------------------

▼ 4.統合的分析領域:分析の観点を養う


マーケティングリサーチの代表的な手法である「アンケート・インタビュー」は、意識調査には強いものの、得られるデータ・把握できることは部分的でもあります。

一方、「ECサイト・ウェブサイト・SNS」などのデータベースに集まってくるデータは、現状把握・実態把握に強い側面を持ち、どちらも行き来できるのが理想です。

究極的にはデータソースのチャネルが何であれ、大事なのは「分析の観点」。統合的にビジネスの主要データを扱い、分析リテラシーを養うための本を選びました。

* * * * *

⑬『ECサイト[新]売上アップの鉄則119 オムニチャネル時代の集客から接客まで』(株式会社いつも.・KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)

・ECのショップ運営コンサルとして有名な「いつも.」社が、EC店舗の成長に欠かせない運営ノウハウをまとめている本。
・主な内容:カテゴリ戦略・在庫計画・ページ制作・検索対策・メルマガ・サイト分析。
・ウェブ制作テーマの本の割に、特に商品の仕入れ(MD)について詳しい◎。
・2015年発行なのでウェブサービスの本としては古さも出ているが、ショップ運営の参考書としては十分すぎる情報量。

P161 商材別の効果的なリマーケティングバナーの運用方法
スイーツ:「初めてセット」や売れ筋商品を購入済み→別バージョンの商品(季節限定商品など)を訴求。例えば、初回購入時にスタンダードな「チーズケーキ」を買う人が多ければ、2回目は季節限定の「いちご味」やバレンタイン限定の「チョコ味」などを訴求
家具などの高額品:訪問歴ありで未購入→購入までの検討期間が長いので、同じ商品を繰り返し訴求し、再検討を促す

* * * * *

⑭『いちばんやさしい Googleアナリティクス 入門教室』(小川卓・ソーテック社)

・Googleアナリティクスの入門書。
・「画面の見方・用語の解説・分析の観点」などのトピックが、すべてビギナー向けに構成されており、挫折しないで読み切れる。
・日々のツール運用の直接の担当者ではないけど、ひと通りGAについて知っておきたい人に最適。
・やりたいことベースで見るべきレポート名が入ってるので、実務にもすぐに取り入れやすい。操作方法だけでなく得たデータをどう分析するかという観点にも強い。

P202 サイト内検索キーワード
開いたレポート:行動>サイト内検索>サイト内検索キーワード
確認できる事実:サイトの中でユーザーが検索したキーワードを確認できます
気づきが得られるテクニック:(省略)
ユーザーの気持ちの推測:(省略)
改善提案例:(省略)

* * * * *

⑮『共感SNS』(ゆうこす・幻冬舎)

・SNSで活躍する「ゆうこす」が、SNS発信のポイントを解説している本。取り扱っているSNSは、Twitter・Instagram・YouTubeがメイン。
・主要SNSをフルで並行活用している人は珍しく(たいていどれかに偏りがある)、実体験に基づくメディアの使い分けが参考になる。
・全体としては投稿テクだけでなく、SNSをどのように自身のブランディングに役立てるかという視点から書かれており、自身の成長ステージや読者ターゲットに合わせて活用法を練ることができる。

P88 いいねとリツイートの差
「このツイートは自分の気持ちを代弁してくれている」「私が言いたくても言えなかったことを言葉にしてもらえた」。見た人にそこまで思ってもらえると、リツイートにつながります。
よくある「RT(リツイート)キャンペーン!」のような集め方ですと、プレゼント目的でのフォロワーが増え、キャンペーン後にフォローを外されたり、フォローされたままだとしても興味を持ってもらえない、なんて話もよく聞きます。そうならないためには、企業アカウントであっても「共感」を意識してみて下さい。

* * * * *

⑯『バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る』(アレックス・オスターワルダー・翔泳社)

・バリュー・プロポジション・デザイン=「自社プロダクトの価値提供」を模式化するデザインフレームワーク。教科書かつワークショップの手引書形式の仕様。
・このモデルの目的は、「プロダクトのバリュー」と「顧客のジョブ(業務・生活)・ゲイン(願望)・ペイン(障壁)」をマッチさせ、顧客の必要性に則った議論を可能にすること。
・ワークの過程で必然的にユーザー調査を行う流れになるので、社内がユーザーファーストでまとまっていくために必要な本。(プロダクトもデザインも広告もすべては顧客から考える)

INTRO 価値創造のパターンを理解する
顧客が何を求めているかについての情報をシンプルな形に整理して、価値創造のパターンを目に見えるようにしましょう。そうすることで、顧客にとってなにより大切な、やるべき仕事、ペイン(悩み)、ゲイン(恩恵)をズバリと解決できるようなバリュー・プロポジション(価値提案)と、利益の出るビジネスモデルを上手にデザインすることができるでしょう。

--------------------------

▼ 5.リーダーシップ・組織マネジメント:タフなコミュニケーション力を身につける


マネジメントテーマは、一見、リサーチと無縁のように見えますが、調査・分析の仕事で高いパフォーマンスを得るうえでは、実は切り離せません。

通常、組織の成長とともに、分析スタッフには次のような課題が発生します。
・そもそもデータが存在しない、"使える"データが無い
・せっかく取ったデータが使われない
・部門価値を認められない
・部門管掌の都合上分析ツールアカウントがもらえない

事業会社におけるブランディング・プロモーションの仕事の半分は「社内調整」と言ってもいいくらい、組織の壁を突っ切っていくタフなコミュニケーションが必要になります。

そして多くの場合、プロジェクトを成功させようと思うと、リサーチ担当者の自分自身が火中の栗を拾いに行くスタイルでいかないとうまくいきません。

そこで、リーダーシップ・組織マネジメントスキルが必要になってきます。
(※管理・統制・評価とは別系統のもの)

このパートでは、現場に入り込んで同じ汗をかき信頼を得る行動論を学べる本をリストアップします。

* * * * *

⑰『最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか』(河本薫・日経BP)

・大阪ガスのデータ分析部門18年間の成長過程をまとめた本。著者はデータサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー初代受賞者の所長・河本薫氏。
・「社内の便利屋が最強の分析チームになるまでの挫折と成功の軌跡」「分析結果は成果にあらず。自らの守備範囲を広げ、会社に貢献せよ」というオビの通りの内容。
・事業部門との適切な連携体制・分析組織のプレゼンスアップ・分析担当者個人の成長など、事業会社の中間支援組織に必要なことがすべてまとまっている本。

P70 会社全体に貢献してこそ評価される
すなわち、データ分析専門組織は現場の業務改革に役立つソリューションを提供し、事業部門がそれを使って実際に業務フローや体制の見直しを行うことで初めて、会社に貢献できるのです。
P98 分析組織の独立採算制
できればそうならないように、メンバー全員で新たなデータ分析のテーマを考え、事業部門に頻繁に提案に行きます。独立採算制は分析組織から事業部門に対し、積極的に提案活動を行う大きなインセンティブになっているのです。
P147 全方位外交が基本
全方位外交による利益は三つあります。
一つ目は「全社的に活動している」と社内で認知されることです。
二つ目は分析組織のリスクヘッジになることです。
三つめは仕事のマンネリを防げることです。
(※それぞれの中身は中略)

* * * * *

⑱『日本一働きたい会社のつくりかた 社員が夢中になれる企業、ライフルの人事は何をしているのか?』(羽田幸広・PHP研究所)

・不動産ポータルサイト「HOME'S」を運営するライフルの人事制度についてまとめた本。
・「ベストモチベーションカンパニー」1位に選出されるまでの組織人事の過程を、各種制度が必要になった背景~それぞれの制度の運用上ポイントまで明らかにしている。
・特に、リーダー育成・社内教育制度は、分析部門(リサーチ)が社内に提供していくベネフィットを確立するために欠かせないシステムなので参考になる。

P169 次世代経営人材育成プログラムのねらい
会社の代表としてグループ全体のビジョン・戦略をプレゼンさせると、大抵は自分の担当する事業領域においては自信をもってビジョンや戦略を語るものの、その他の領域では非常に浅薄な話しかできず、自分の視座の低さや視野の狭さに気づかされ、リーダーになるために足りないものが何なのかを痛感することになります。
次世代リーダー候補といっても、普段は自分の担当領域の経験しかできませんので、このように全社的なミッションを課すことで、普段は絶対にできないような経験を積む効果は絶大です。
P174 マトリクス型の人材育成
このとき起こるのが、専門性の異なる部下の目標設定や評価の難しさです。(中略)
そこで当社では、「担当マネージャー制度」という仕組みを運用しています。
各メンバーには、自分と同じ職種の専門性を持った「担当マネージャー」が入社当初から割り当てられ、自分の担当マネージャーに相談すれば、目標設定の内容やスキルアップの方向性について的確なアドバイスが得られます。

* * * * *

⑲『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』(迫俊亮・ディスカヴァー・トゥエンティワン)

・ファンドサイドからミスターミニットの社長に転身し、経営改革の旗振り役となった迫氏の著書。「何を言っても変わらない本部」「本部押し付けのオペレーション」、閉塞感に満ちた典型的な日本の職場を変革した企業ストーリー。
・実際には本書クラスの努力が求められることはないにせよ、プロジェクトによってはこれに近い努力が必要になる。リーダーとして求心力を得ていない段階から、どんな働きかけをできるか?、実践内容に細かく触れることができる。

P42 リーダーに潜む「階層意識」の罠
メンターである澤田貴司さん(現・ファミリーマート代表取締役社長)と最初にお会いしたとき、
「ところで、お前はなぜ現場で禁止されている格好を堂々としているんだ?」
と指摘され、かなりショックだった。
(中略)
心でいくら現場をリスペクトしていても、一挙手一投足にまで気を遣わねばこういった細かいところに滲み出てしまうということだ。
P79 いいコミュニケーションは会議室の「外」で生まれる
ただし、カウンター越しに「会社についてなにか意見はありませんか?」といきなりインタビューしても、いい意見はもらえないだろう。それに、いつお客様が来るかわからないから、僕も所在ない。カウンターが、「内」と「外」を分ける「一線」になってしまうのだ。
僕は、「一線」を越え相手のフィールドで話すため、社員と同じようにカウンターの中に入ってみた。話している途中でお客様がいらっしゃったら、技術のない自分でもできるごく簡単な作業や接客を手伝った。

* * * * *

⑳『リーダー論(講談社AKB48新書)』(高橋みなみ・講談社)

・AKB48初代総監督を務めた高橋みなみが、300名を超える人気グループのまとめ役として、「コミュニケーション・リーダーシップ・スピーチ」をテーマに活動を振り返る本。
・本で紹介されているマネジメント力はビジネスパーソン顔負けの内容。これができていないからスタッフから不信感を持たれたり断絶してしまう、という内容ばかり。
・情報収集をミッションにするリサーチャーは、役職に関係なく相手の懐に入らないといけない立場。ふだんのコミュニケーションがどうあるべきかを学ばされる内容。

P45 ひとりひとりが集まって「みんな」になる
もしもダメなところを見つけたら、その子といい関係性を築いてから、「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」と伝えるようにしています。その前段階で言ったら、「なんでこの人に言われなきゃいけないんだ」と反発されて終わってしまう。「この人が言うなら、正しいんだろうな」と聞いてもらえる関係性を日頃から作っておかなければ、伝わるものも伝わらないんです。
P53 一度でいいから、本音を聞く
小嶋さんとぱるるが仲が良かったので、私は小嶋さんに近づいていく感じで、ぱるるを巻き込んだ3人でおしゃべりするようにしました。小嶋さんと私との会話を見ることで、ぱるるは「たかみなさんは、イジっても大丈夫な人だ」と警戒心を少し解いてくれたみたいなんです。

--------------------------

本文を最後までご覧いただきありがとうございました。
冒頭に触れた自著についても少し紹介させてください。

10月末に出版した『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)では、「ビジネスで成果を出す」ためのリサーチの技法を約300ページに渡り書きました。

この本では、ビジネスの中でリサーチの技術を使いこなすために、定量調査・定性調査の手法に留まらず、お客様/店舗/サイト/メディアを見る時の手法を80点紹介しています。

画像1

ここで紹介している推薦書籍とも一緒に読み比べて欲しいので、ぜひ【書店で】ご覧になってみてください。あなたにとって最適なリサーチ本が見つかりますように★

* * * * *

Twitterをやっています。今回の記事のように、マーケティングテーマを中心にしたビジネス書の読後感を投稿しています。よかったらフォローしてください★


いただいたサポートは執筆休憩時のお茶請けなどに大切に使わせていただきます★