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定量調査か?定性調査か?~使い分けのポイント

定量調査と定性調査、皆さんはどうやって使い分けていますか!?

各調査の核となる手法にはアンケートとインタビューありますが、気をつけないとそれぞれ「集計レポート」「参加者発言録」が納品されて終わり、になってしまいます。

特に、調査手法を「決裁者の好み」や「予算のあるなし」で決定していると、「納品データはあるけど得られる示唆が無い」結果につながります。この使い分け方、調査会社内でも「調査手法の違い」以上のことを教わる機会はありません。

私はマーケティングリサーチの「マクロミル」で、「定量調査」を月次約500問運用したのち、事業会社に移ってからは「定性調査」も並行運用して12年が経ちます。この経験に照らすと、定量・定性には明確に適した使い分け方があります。

この記事は、「定量調査か?定性調査か?」と題して、調査結果の精度を上げていく使い分け方のコツをまとめます。実はビギナーの人にこそ有効な知識なので、アンケート・インタビューに仕事で携わる初心者の方は特にぜひご覧ください。

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▼ 定量>定性(定性より定量の方がいいケース)

定量>定性

①データで実態把握を行いたい時

認知度・理解度・満足度のように、報告用・公表用のデータは数値形式になっている必要があります。調査結果が数値形式になっていると、良い場合も悪い場合も結論を言いきれるので、データで相手を動かす仕事では便利です。こうした「実態把握」を目的とする調査では、情報にブレがあってはならないので、定量調査が基本になります。

②消費者属性ごとに比較したい時

20代男性・20代女性…のように、属性グループごとに傾向を比較したい時は、各母集団を代表するデータを見る必要があるので、定量調査の方がマッチしています。定性調査で精度を上げようとすると、けっこうなサンプル数が必要となってしまうからです。(逆に、ターゲット層をフォーカスできているなら定性の方がムダがありません)

③質問結果の結びつきを見たい時

質問Aと質問Bの回答データの関連性を探る時は定量調査が便利です。たとえば、利用頻度が高い/低い人×再利用意向を調べるケースでは、各質問結果をデータで掛け合わせれば良いので、結果を参照しやすくなります。全般的に、調査後に質問間あるいは回答者属性と質問結果の関係性を分析するなら、定量調査にアドバンテージがあります。

④フレーズを量的に集計したい時

定量調査の中でも自由回答形式を使えば、回答者の定性情報を取得することができます。取得した自由回答データはキーワード分析を行い、定量化することもできます(コーディング→テキストマイニングの工程)。アンケートは回答母数の単位がインタビューよりも大きいので、被験者のフレーズ傾向をより見極めやすいメリットがあります。

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▼ 定量<定性(定量より定性の方がいいケース)

定量<定性

①生活軸・時間軸で分析したい時

定性調査をよく行っている業態の代表格は、家電・アプリなどプロダクト色が強い商品・サービスです。こうした業態では、消費者/利用者の使用方法を生活軸・時間軸でウォッチする必要があるので、定性調査が優先的に行われています。モノ自体の必要性が揺るがない場合、細かい改善を続けてロングセラー化を目指すので定性調査が有効です。

②分野の成功事例を見つけたい時

ひとりの消費者/生活者の思考・行動に着目して、アイデア源となる成功事例を探るN=1分析の手法が最近注目を集めている通り、「何がどのように受け容れられているのか」を実査時(調査時)に深堀りする用途では、定性調査がマッチしています。(アンケートでも自由回答は得られますが、予め決めた設計以上に深堀りすることができません)

③判断根拠にする意見を集める時

新商品や機能追加の方向性がある程度固まっていて、実際に消費者が付いてこれるかを見極めたい時、定性調査が便利です。どれくらいニーズが深いか?リアクションはどうか?といった事業判断を後押しする生情報を得られるからです。同じ理屈で、既存商品の改修優先度を決める時も、言葉や態度を敏感に察知できる定性調査は重宝します。

④トレンドを月次で観測したい時

消費者のトレンドを短期ベースで観測するには定性調査が向いています。この用途では一見、定量型の定点調査が良さそうに見えるのですが、実際には出てくる差が微細すぎて、実施/投資意義を感じづらいのが本当のところです。そのため、分野や属性を特化して流行の兆しを見つけるなら、短いスパンのインタビュー調査が向いています。

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▼ まとめ


●定量>定性(定性より定量の方がいいケース)
①データで実態把握を行いたい時(認知度*%・理解度*%・満足度*%…)
②消費者属性ごとに比較したい時(20代男性・20代女性・30代男性・30代女性…)
③質問結果の結びつきを見たい時(例:利用頻度が高い/低い人の再利用意向)
④フレーズを量的に集計したい時(自由回答に出てくるキーワードをデータ化)

●定量<定性(定量より定性の方がいいケース)
①生活軸・時間軸で分析したい時(「いつ・どこで・どのように」詳細)
②分野の成功事例を見つけたい時(「○○をして本当に良かった!」)
③判断根拠にする意見を集める時(「○○だったら絶対買います!」)
④トレンドを月次で観測したい時(「ヒト・モノ・コト」の流行度合い)

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正直に言えば実際の仕事シーンでは、会社がこれまでにやってきた手法や、業態の慣習となっている手法に沿って、調査を運用していくことになります。でも、もし新規の調査案件などで自分が調査手法を選べる場合、上記の判断根拠を参照してみてください!

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アンケートやインタビューについて、もう少し勉強してみようかな、と思っていただいた方は、私が10月に出版した『売れるしくみをつくる マーケットリサーチ大全』(明日香出版社)内に書いたコンテンツもぜひご覧ください。

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書籍では、「新規獲得・リニューアル・新商品開発」などの場面を念頭に、定量調査・定性調査の手法を組み合わせて/行き来してビジネス課題に取り組んでいく手法を紹介しています。本記事の内容を応用して活用するのに役立つ内容なので、お近くの書店で見てみてくださいね。

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