見出し画像

初めてのブルーノート 父としてのラリー・カールトンと天才ドラマー

今週月曜日、人生初めてのブルーノート東京に行ってきた。出演者はラリー・カールトーン。誰もが知っているレジェンドなフュージョンギタリストだ。年も年だし、これが最後の日本公演の可能性も高いなと思い、参戦してみた。


ブルーノートのすっごい高級感にビビりながらも、ドキドキしながら入場。
ボックス席で、相席とは聞いていたが、まさかの全員ソロ参戦での相席だった。6人全員が1人でラリー・カールトーンを見に来るくらいの音楽好き。あれはあれで、幸せな席だったと思う。

ご飯は先に食べていたので、お酒を1つ頼んで待機。演奏中に食器をカチャカチャと鳴らしたくないし。噂で聞いていた以上の演者との距離の近さを感じながら、開演を待機していた。


あれ、思ったより大人しい…?

一発目の曲目、さっそくラリー・カールトーンのギターの音から入る。まぁ当然ながらうまい。下手くそなわけがないよね。
バックもうまい~と思いながら幸せに聞いていて、違和感が徐々に出てくる。あれ、何かギター控えめじゃないか…?

ラリーのアルバムを全部聞いているほどのファンではないけども、アルバムではもっとバリバリギターを鳴らしていたような…テーマはサックスとかトロンボーンが担当して、ラリーはバックでコードを演奏、というパターンが多かった気がする。

ソロがあるパートも、歪ませてバリバリ弾く、というのがあまりなく、「静か~」に弾くパートが多かった印象。やはり爪弾きがメインになってくると、昔のロックな歪ませた音には興味がなくなってしまうのかなぁ…非常に寂しい。


正直、ラリー・カールトン本人のプレイにそこまでシビレたかというと、そうでもなかった。自分はやっぱり歪ませた音が好きなので。

いや、確かにテクニックはすごいのかもだけど。ボリュームコントロールとかエグかったし。ただ、昔の「歪んだ」フュージョンが好きで、クリーンなフュージョンが聞きたいなら、パット・メセニーとか聞くよなぁと思ってしまった。

これだけ聞くと、残念なライブのような気がするのだが、そんなことはなかった。最後の感想は、最高のライブで終わった。
なぜなら、自分にとってのこのライブの主役はギターじゃなかったから。


ドラムが主役だった

ドラムがエグかった。最初はギターの音に集中していたけど、途中から気づいた。ドラムのエグい音に。

普通のフュージョンバンドでも、ましてやラリー・カールトンが今やろうとしている静かなフュージョンとは全く似つかない、攻撃的なドラムだった。鋭いスネアの音、ファンクかよってくらい跳ねるリズム。気づいたらずっとドラムの音を聞いていた。

ドラマーの名前はBilly Kilson。

音大出身の超テクニカルなドラマーらしい。固定のバンドマンというより色んなバンドで活躍してきたらしいが、一番有名なのはDave Hollandというベーシストのバンドの曲。

いや、かっこよすぎ。でもこれはガチJAZZバンドなので、少し控え目。今回のライブではこんなもんじゃなかった。


完璧なドラム・ソロ

生演奏で聞いたドラム・ソロの中で一番感動したソロかもしれない。
曲の後ろでの演奏でも完璧だったが、ソロはもっと衝撃的だった。ウマイとか下手とかではなく、「面白い」と思えるドラムを叩いていた。

その凄さ、あれは会場で聞かないと分からないと思う。
なぜなら、「ノリ」で叩いていただろうから。その場の雰囲気やボルテージに合わせて、自分の中の多様な引出しの中からベストな選択肢を選んで叩いている感じだ。


もう会場の歓声がエグかった。
正直に言おう、ラリーのソロよりも倍盛り上がった。自分だけでなかったような気がする。明らかに会場の歓声の量も段違いだった。
自分もギター・ソロのときは控えめな「いえ~…」くらいの声出しだったのが、Billy Kilsonのドラム・ソロのときは大声で「イェア!」に変わっていた。

引退間際の、落ち着いた音を出していたラリー・カールトンと違い、彼のドラムは攻撃的で、爪痕を残そうとする熱気があった。その熱気に会場ものせられたと思う。


父と息子と、ドラマーと

恐らく、ラリー・カールトンは正直このライブにそんなに乗り気ではなかったのではないだろうか。Room335もやらなかったし、なんなら1曲少ない状態で帰ろうとしていた(スタッフに言われてもう1曲やったようなやり取りがあった気がする)

最後の曲は、息子であるTravis Carltonのベースソロから始まった。正直、彼のベースは何も印象に残ってなかったし、ソロになってもその印象は変わらなかった。その直前のエグいドラム・ソロと比較して、平凡なベースソロに、会場の歓声もボチボチだった。


そんな息子の演奏を、腕を組みながらジッと見つめていたラリー。何を思っていたのか、分からないけども、真顔で見つめるその表情は、親とミュージシャンの狭間の表情だったのかなと思う。

そして、息子のベースソロのあと、テーマとそれぞれのソロのあとに、ラストのシメ。元々そう決めていたのか、会場の熱気を見て判断したのか分からないが、Billy Kilsonのドラムソロでシメだった。

一番会場を盛り上げた、あのバンドの中で一番気持ちの籠もったドラムを叩いていた、彼の演奏で終了したのは、自分は正解だと思う。最高の気分で会場をあとにした。

Room335を聞けなかったのは、残念っちゃ残念だけども、正直あの状態のギターの音を聞いても、大きな感動はしなかったと思う。その代わりに、最高のドラムと出会いをくれた、ラリー・カールトンに感謝したいなと思う。

本当にありがとう。いいライブでした。
以上!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?